著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。
療育を行っていく中で、様々な能力が鍛えられていくという実感があります。
例えば、子どもたちの状態像を理解する力、子どもたちが楽しく過ごせる関わり方や環境設定の在り方を考える力などがあります。
それでは、療育の力を育むためにどのような視点が大切となるのでしょうか?
そこで、今回は、療育の力を育むために大切な視点について、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、過去を掘り起こすこと、そして、未来を作ることについて考えを深めていきたいと思います。
過去を掘り起こすことについて
過去を掘り起こすこととは、これまでの経験を基盤に情報を整理することです。
著者のこれまでの経験から得られたものとして大きくは、1.発達を理解する、2.実践から意味を見出す、があります。
それでは、それぞれについて次に見ていきます。
1.発達を理解する
著者の中でこれまでの経験の中で得られた力としては、子どもたちの〝発達を理解する″というものです。
〝発達を理解する″とは、現在の子どもの状態像が過去からの経験の積み重ねの中でどのような育ち方をしているのかという理解です。
〝発達を理解する″ためには、生育歴、療育歴などの過去の情報に加え、発達特性の理解(自閉症、ADHD、学習障害、発達性協調運動障害、知的障害など)、家庭や学校といった環境要因の把握、二次障害の理解、などの情報を整理して見立てていくということです。
ある著書には、発達への見立てをすることは、〝パズルを完成させることに似ている″といった内容の記載があります。
ジグソーパズルは完全に完成されなくても、ある程度、重要なピースが組み合わさることで、全体像を理解できます。
つまり、子どもたちの状態像を理解するためには、状態像の理解で必要となる重要なピースが必要であり、そして、それらのピースを組み合わせる(過去の情報の整理)という発想がとても大切になります。
著者も、〝発達を理解する″力を育てるために、重要な情報をこれまでの経験と知識から見出しそれらを整理することで、より質の高いものへと積み重なっているという実感があります。
この実感は、先のジグソーパズルの例で言えば、これまでの経験と知識といったジグソーパズルのピースを少しずつ集め、ジグソーパズルを組み合わせる力が身に付いてきたと言い換えることもできます。
関連記事:「臨床発達心理学とは?-療育経験からその視点の重要性を考える-」
2.実践から意味を見出す
これまでの療育での実践経験をもとに〝実践から意味を見出す″といったことも得られる力の一つです。
〝実践から意味を見出す″とは、例えば、学童期のライフステージにおいて、これまで取り組んできた子ども同士の関わりがさらに発展し集団遊びへと展開してきたとしましょう。
その場合、集団遊びへの発展の仕方とは?集団遊びを形成するために必要な関わり方とは?など、これまでの療育での実践経験を踏まえた上で、その中に大切な意味があるという気づきから様々な意味を見出すことに繋がっていくという能力の育ちがあると思います。
このように、過去の経験を掘り起こすことで、これまで取り組んできた療育で大切なものを発見し、まとめていく機会を得ることができます。
関連記事:「【実践をまとめることの意味について】発達障害児支援の経験を通して考える」
関連記事:「【実践をまとめていくために必要なこと】発達障害児支援の経験を通して考える」
未来を作ることについて
未来を作ることとは、これまでの経験を踏まえて今後の展望や目標を設定することです。
著者のこれまでの経験から得られたものとして大きくは、1.個別の支援方法、2.子どもたちが楽しめる環境作り、があります。
それでは、次にそれぞれについて見ていきます。
1.個別の支援方法
〝個別の支援方法″とは、先に見た〝発達を理解する″といった状態像の理解を踏まえて、子どもたちそれぞれに応じた支援方法を考えていくことになります。
〝個別の支援方法″を考える際には、支援目標が必要になります。
例えば、人への信頼関係が弱いなど愛着関係の問題があるといったことが〝発達を理解する″といった段階で把握されたとしましょう(仮説として)。
この場合には、支援目標としては、大人との信頼関係の構築が考えられます。
そして、支援方法として、基軸となる大人を決めること、共感的理解を示すこと、などを仮に立てることができます(非常にざっくりとではありますが)。
このように、〝個別の支援方法″を考える際には、何を目標とするのかを暫定的にでも立てる必要があります。
関連記事:「【発達アセスメントとは何か?】療育経験を通してその重要性について考える」
2.子どもたちが楽しめる環境作り
〝子どもたちが楽しめる環境作り″とは、文字通り、事業所に通ってくる子どもたちがまた行きたいと感じてもらう気持ちを作る・あるいは高めるという意味からも未来を作るという視点が入ってきます。
事業所には、関わるスタッフの個性や会社の理念の違い、教材教具の違い、室内環境の違いなど様々な特徴があります。
そのため、事業所ごとに子どもたちが楽しめる環境づくりにも違いがでると思います。
ある著書には、療育の必要性は、〝子どもが楽しく通っていること″といった内容のことが書かれたものがあります。
著者自身も子どもたちが楽しめる環境をどのように創造していけばよいかチームスタッフと試行錯誤を繰り返しています。
子どもたちが楽しんでいる様子を見ると、今の取り組みが子どもたちの将来の豊かな発達に少なからずとも繋がっていくと感じることができます。
そのため、さらに楽しめる環境をどのように作っていけるかどうかは、子どもたちの未来の発達に直結するものだと考えています。
関連記事:「【実践を行うための目標の重要性について】発達障害児支援の経験から考える」
関連記事:「療育は必要か?-療育経験からその必要性について考える-」
以上、【療育の力を育むために大切な視点について】過去を掘り起こすこと、未来を作ることについて見てきました。
色々と書いてはきましたが、私自身、まだまだわからないことだらけであり、発展途上の人間です。
まだまだ未熟な状態でありながらも、過去を掘り起こすこと、そして、未来を作ることに意識を向け、自分の頭で考え実践を続けることは、療育する力を育む上でとても大切であると実感しています。
私自身、今後も子どもたちの過去・未来に目を向けながらも、今を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。