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【自閉症の情動調整への支援について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年5月12日 更新日:

自分の気持ちや感情をコントロールする力のことを〝情動調整″と言います。

自閉症児者の中には、情動調整に問題を抱えているケースが多いと言われています。

自閉症の人たちの情動調整を困難にする要因には、外的要因(感覚の問題、社会的刺激への反応の弱さ、これらに伴う養護性の育ちにくさなど)に加え、情動共有経験の乏しさがあると考えられています。

 

それでは、自閉症児者の情動調整にはどのような支援方法が有効であると考えられているのでしょう?

 

そこで、今回は、自閉症の情動調整への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

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自閉症の情動調整への支援について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

自閉症児者の感覚を障害のない人の感覚に「合わさせる」ことのみを求めるのでなく、障害のない人が自閉症児者の独自の感覚に「寄り添う」支援も重要となる。自閉症児者が何を不快あるいは快と感じているかを、相手に働きかけながら丁寧に探る。それによって、自閉症児者が快を感じる世界を見つけ、障害のない人が一緒に楽しむ。

 

著書の内容では、自閉症の人たちへの情動調整の支援として、まずは自閉症児者が持つ独自の感覚世界を理解しようとする姿勢が重要であると記載されています。

そして、独自の感覚世界の中で、快と感じる感覚を通して関わりを深め広げていくということが大切だと考えられています。

情動調整でいう情動は喜怒哀楽など非常に原初的な感情のことを指します。

つまり、自閉症の人たちが持つ、固有の感覚を丁寧に探っていくことで、共に喜び合える入り口(快の情動を共有できる対象)を見つけていくことが重要だということです。

関わり方のスタンスとして、自閉症の人たちに合わせてもらうことを強要せずに、こちら側から合わせていくという姿勢が大切であり、そのためには、共有できる快の感覚を把握していくことが大切になります。

 

 

著者の経験談

著者はこれまで療育現場で多くの自閉症児と関わってきています。

その中には、情動調整が難しいと感じる子も多くおり、その子どもたちは感覚世界の共有の合いにくさが背景としてあったように感じます。

つまり、著者が嬉しい・楽しいと感じるものがその子にとっては見向きの対象にもならないほど感覚がズレていると感じることも多くありました。

そのため、著者は子どもにとってどのような感覚なら居心地がいいのか、興味が引けるのかを活動を共にしながら観察するようにしていました。

例えば、高い所が好き、ジャンプごっこが好きなどの感覚を持っている子(ここでは仮にA君とします)がいました。

一方、A君はスキンシップを避けるなどの感覚過敏もありました。

そのため、無理のない範囲で少しずつ距離を詰めながらスキンシップをとり、同時に様々な感触遊び(A君が好きな感触遊びを中心に)など感覚に慣れる遊びも取り入れていきました。

こうした日々の関わりを通して、A君の行動にも変化が出てきまいた。

まずは、スキンシップが非常によく取れるようになってきたことと、何か困ったことがあると著者を頼りに近づいてくることが増えてきました。

スキンシップが非常によく取れるようになった背景には、もともとA君が好きだったジャンプごっこなどを著者と一緒に行ったり、高い高い遊びをするなどスキンシップを取り入れた遊びの共有経験の蓄積が考えられます。

こうした快の情動共有を積み重ねていくことで、A君にとって著者は注意が向きやすい存在として認識されていったのだと感じます。

こうした関係を築いていくには時間がかかりますが、時間がかかった分、その後のA君の気持ちの変化を感じ取りやすくなったこと、そして、A君の負の情動をなだめやすくなったこと、さらには、A君自身が一人で急にイライラする様子が少なくなったなどポジティブな変化が見られるなど、これまで行動の背景や対応方法に苦慮していた点が少しずつ改善に向けて進み始めたことを今でもよく思い出します。

この時に著者がとっていた関わり方は、A君の独自の感覚世界を把握しよう・理解しようという姿勢だったと思います。

そして、支援がうまくいくためには、相手に寄り添う姿勢がベースにあることが大切だと考えさせられました。

 

 


以上、【自閉症の情動調整への支援について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

自閉症児者の情動調整の問題はケースにもよりますが、中には支援が非常に困難な場合もあります。

そのため、支援においては特定の人物が一人で四苦八苦する状況を作らずに、支援チームで方針を考えて協力体制で支援を実行していくことが大切だと考えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの将来を見据えた支援を現状の発達理解に基づいて行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症の情動調整の困難さについて】療育経験を通して考える

 

子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.

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