発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

模倣 自閉症

【なぜ自閉症の人はまねることをしないのか?】自閉症児・者の模倣の特徴について考える

投稿日:2023年4月28日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とした発達障害です。

自閉症児・者には他者の行動を〝まねる″ことが少ないと以前から言われています。

つまり、〝模倣″が定型発達児・者よりも少ないということです。

 

それでは、自閉症の人たちはなぜ他者の行動をまねることが少ないのでしょうか?

 

そこで、今回は、なぜ自閉症の人はまねることをしないのかについて、自閉症児・者の模倣の特徴について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

自閉症児・者の模倣の特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

よくよく調べてみると、自閉症児は「人まねができない」わけではないようなのです。

 

著書の内容から、自閉症の人は〝人のまねができないわけではない″と記載されています。

これまでの自閉症研究から、自閉症児・者の模倣の困難さについての先行研究が多くありますが、模倣の困難さ、少なさはあっても全く模倣ができないというわけではないということです。

著者の経験からも、自閉症児・者は模倣ができないという印象はありません。

中には、著者の特定の行動を(興味のある行動を)必死に真似ようとする子どももいます。

一方で、自然と相手のまねをするような行動は少ないといった印象があります。

 

この点について、引き続き著書を引用しながら見ていきます。

自閉症者は、「まねをして」と指示されないとき、自発的に人まねをする傾向が弱いということも知られています。

 

著書の内容から、自閉症者の模倣の特徴として、他者からまねをするように指示を受けないとまねをすることが少ないということ、つまり、〝自発的な模倣が少ない″といったことが知られています。

著者の経験でも、日々の生活の中で著者の行動を〝自発的に″まねようとする様子は少なく、仮にまねようとした場合には、その子にとって興味があるもの、あるいはまねして見るように促された場合に模倣が見られるといった実感があります。

定型発達児・者においては、相手の動きを〝自然と″真似よう(学ぼう)とする特徴が日々の様々な生活場面においてありますが、自閉症児・者の場合には少ないといった印象は確かにあると思います。

 


それでは、自閉症者の模倣の少なさはなぜ生じるのでしょうか?

この点についても、以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。

自閉症を抱えた方が人まねをする傾向が弱い理由の一つとして、「相手の動きに思わず注意が引きつけられる」傾向が弱い

 

さらに、自閉症を抱えた方は、「まねをして」といわれたとき、相手の動きのどれをまねしたらよいかが直感的にはわかりにくい可能性もあります。

 

著書の内容から、自閉症者に模倣があまり見られない理由として、そもそも自閉症児・者は人への注意が向きにくいことが特徴としてあるからだと考えられています。

人が模倣をするためには、まずは人に注意を向ける必要があります。

そのため、注意の段階で人以外の対象に注意を多く向ける傾向が自閉症の人にはあるため、模倣が生じにくいと考えられています。

また、まねをするように促されても、どの部分に注意を向け、まねればよいかが直感的にわからない可能性もあるとされています。

人の動きも視線や口の動き、そして、手の動き、全身の動きなど様々な身体動作が連動しています。

そのため人が模倣をする際には、まずは人に注意を向け、その後、人の全体像に注意を向ける力、そして、その中で、特定の部分に注意を向ける力といった様々な注意の向け方が必要となります。

著者の経験でも、自閉症の人たちは、人のまねをする際に、全体的は動作やまねをして欲しい所以外に注意を向けていると感じる方も多くいます。

また、慣れている人の動きを見て〝自然と″体で学ぶことが難しいことも実感しています。

そのため、何を目的としてどの部分に注意を向けた方が模倣しやすいのかを考えて伝えていくことが大切であると感じています。

 

 


以上、【なぜ自閉症の人はまねることをしないのか?】自閉症児・者の模倣の特徴について考えるについて見てきました。

人が他者の行為をまねることは定型発達児・者にとっては〝自然と″かつ〝自発的に″行っていることが多くあります。

一方で、自閉症児・者にとってこうした〝自然と″〝自発的に″が難しく、そして、〝どこに注意を向けて″まねればいいかが難しいといった違いあります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症児・者の模倣について理解を深めていきながら、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症者の心の理論の特徴について】自閉症者はどのように心を理解しているのか?

 

千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.

スポンサーリンク

-模倣, 自閉症

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

自閉症に関するおすすめ本【中級~上級編】

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。 自閉症スペクトラム障害の〝スペクトラム″とは、連続体のことですので、自閉症の特 …

【自閉症児のこだわり行動への対処法】療育経験を通して考える

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。 上位の特徴にもあるように、自閉症の行動特徴を理解し対応していくためにも …

【自閉症児にこそ〝社会性″への支援が必要な理由】療育経験を通して考える

自閉症(ASD:自閉症スペクトラム障害)の中核症状の中に、〝社会性″の困難さがあります。 〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有 …

自閉症児と合意をとることの意味について考える

自閉症児の中には、相手の意図がうまく理解できないため相手との間で折り合いをつけることが難しい、自分なりのルールややり方にこだわるなどの行動がよく見られます。   それでは、自閉症児が社会の中 …

自閉症児の遊びの発達について【お絵描きを例にとり】

自閉症の人たちは興味・関心が独特であると言われています。 遊びに関しても、例えば、「○○博士」と言われるように、ある領域に非常に詳しい人たちも多くいます。 私がこれまで見てきた子どもたちにも、道路標識 …