発達障害の中に含まれる自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さとこだわりを主な特徴としています。
それでは、自分がもし自閉症だと思ったらどのような評価方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症だと思ったらしておくべき評価について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。
もちろん、しっかりと評価を受けたい場合には、発達支援センターなどに相談し、評価・診断を受ける必要があります。
今回取り上げる内容は、あくまでも可能性を疑った際に、簡単にできる評価になります。
そのため、参考までにとどめておく必要があると思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.」です。
自閉症だと思ったらしておくべき評価について
著書の中で紹介されている評価は、次の2つの質問に対して、「はい」か「いいえ」で答えるものであり、回答者は自分だけでなく、家族やきょうだい、職場の人など周囲にも答えてもらうものになります(以下、著書引用)。
① ○○さんは「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強い」という特徴があると思う
② いま、仕事かプライベートで、○○さんに関して困っていることがあり、その要因として①が関係している
著書の中では、以上2つの質問を通して、①②の両方の回答が「いいえ」であれば、自閉症の可能性は低く、特別何もする必要がないとしています。
①が「はい」で、②が「いいえ」であれば、非障害自閉症スペクトラムと考えてよいとされています。
非障害自閉症スペクトラムとは、自閉症の特性を持ちながらも、社会にうまく適応できている状態の人たちのことを言います。
①②の両方が「はい」であれば、自閉症の可能性があるとされています。
この回答者はご自身だけではなく周囲の人にもやってもらうことで信憑性が高まります。
なぜなら、ご自身だけでは、客観的に自己を認識できていない可能性があるからです。
著者の経験談
著者はこれまで多くの自閉症児・者と関わってきています。
また、著者は心理士でもあるため、自閉症の診断・評価方法などは書籍や研修などを通して学んできています(もちろん、医師ではないので、診断はできません)。
そして、評価方法を学んでいく中で、自閉症の評価にも様々なスケールがあるなど非常に専門的な知識と豊富な臨床経験が必要になるということも理解しています。
その上でも、今回取り上げた評価方法はとてもシンプルではありますが、自閉症の可能性の有無を問うために非常に効果的なやり方(評価)だと思います。
なぜなら、著者の周囲の自閉症児・者には、①と②の両方を持っているという実感がはっきりとあること、そして、②はないが、①の特徴は見られると言ったAS(非障害自閉スペクトラム)の可能性あるなど、自閉症について大まかな予測・把握ができると感じるからです。
特に、ASだと想定される人たちが思いのほか著者の周囲には多いと感じています。
そして、②の視点は、ご自身が困らなくても、立場や状況によって周囲が困る場合も出てきます。
そのため、ご自身だけでなく、周囲の人たちも評価に加わり、①②の視点から評価をしていくことが必要だと感じます。
以上、【自閉症だと思ったらしておくべき評価について】発達障害児・者支援の現場から考えるについて見てきました。
もちろん、こうした評価が必要となるのは、ご自身が自らのことが気になること、ご自身が生活の中で困り感が生じていること、そして、関わる周囲の人に困り感がある時などです。
そして、①②の両方が該当した場合には、専門機関へと相談していくことが必要になります。
今回見てきた評価は、あくまでも自閉症の可能性の有無を簡単にざっと把握するという程度のものですので、過大評価には気をつける必要があります。
私自身、今後も様々な発達障害への理解を、理論と実践を通して深めていきながら、実際に活用できそうな評価方法などへの学びも深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.