自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の特徴の一つに〝こだわり″があります。
また、自閉症の人たちの中には、記憶力が優れている人たちも多くいます。
こうした特徴がある中で、〝こだわり″と記憶力に関連性があると考えている人もおります。
それでは、〝こだわり″と記憶力にはどのような関連性があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の〝こだわり″の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、記憶力との関連から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」です。
自閉症の〝こだわり″と記憶力との関連について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こだわりが強い人のなかには、その特徴が「記憶力の強さ」として現れる人がいます。記憶には、言葉の意味の記憶や、旅の思い出の記憶、練習して身につけた技術的な記憶など、さまざまなものがありますが、ASの人は日付や記号などの機械的な情報に関心をもち、よく覚えることがあるのです。
著書の内容から、自閉症の〝こだわり″が強い人の中には、特徴として、記憶力の強さが見られる場合もあります。
そして、記憶力の強さの内容として、日付や記号など機械的な情報が目立つことがよくあると記載されています。
つまり、〝こだわり″の特徴である興味関心が限定されている所があるため、特定の領域に限定した記憶が優れていると言えます。
著者の経験談
著者もこれまで様々な自閉症の人たちとの関わり中で、〝こだわり″の強さが記憶力の強さと関連づいていると感じるケースが多くあります。
〝こだわり″の強さとは、例えば、興味関心がある特定の対象へと限定する傾向などがあり、その対象が著書にあるように日付や記号など機械的な情報に多いと感じます。
例えば、電話番号、様々な人の誕生日、道路標識など特定の機械的な情報に興味を示し、それについて多くの情報を記憶している場合があります。
著者が見てきた子どもの中には、最初に会う人には必ず誕生日を聞いてきて、誕生日といった記号を通して、○○さんの誕生日はいつだ?などクイズを出してくる子もいました。
また、ガソリンスタンドのマークのテスト問題を自作し、著者に宿題を出してくる子もいました。
著者はこうした記号への記憶が苦手なため、家に持ち帰り調べながら宿題を埋めていったことを今でもよく覚えています。
そして、宿題を提出すると、その子は、すごいスピードで何も見ずに採点を非常に楽しそうに行う光景に著者はとても驚かされました!
こうした興味関心を知ることの利点は、会話の糸口をつかむことができ、関係が深まっていくことができるという意味で大切なものだと実感しています。
それでは、こうした機械的な情報の記憶力が優れている自閉症の人たちが苦手としている記憶はあるのでしょうか?
この点について、次に見ていきます。
自閉症の人が苦手とする記憶力について
以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
記憶力の強さが想像力に生かされにくいことも特徴です。(中略)AS特性のある人たちは、一般の人よりも記憶力がある場合でも、自分が経験していないことをうまく想像できないことが多いのです。
記憶の特徴として、自分が経験していないことについて想像力を働かせる役割もあります。
例えば、これまでの対人関係の経験を通して、これまで関わったことのない人との関わり方について想像を膨らませ応用力を働かせていくなどがあります。
一方、著書にあるように、自閉症の人たちにとって、過去の経験をもとに(記憶をもとに)想像力を膨らませて、自分の経験の外へと応用力を働かせていくことは苦手と考えられています。
そのため、記憶力の内容にも様々なものがあり、自閉症の人にとっては、機械的な情報の記憶を得意としている長所がありながらも、経験してないことから想像力を働かせることは苦手としているなどの特徴があります。
こうした〝こだわり″と記憶力の関連を理解していきながら、〝こだわり″や記憶力について個々の違いを理解していくことは、療育現場の自閉症の子どもたちや身近にいる当事者の方についての理解を深めることにも繋がっていくと思います。
以上、【自閉症の〝こだわり″の特徴について】記憶力との関連から考えるについて見てきました。
人は、〝こだわり″一つとって見ても個々に応じて非常に違いがあり、その中で、自閉症の人たちはさらに特徴的だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の〝こだわり″への理解をさらに深めていきながら、人間の多様性についての理解を現場と知識の双方から学んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【自閉症の〝こだわり″の原因について】中枢性統合の視点から考える」
本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.