〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
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以上の定義にある以外にも、〝社会の中でルールを守る力″も生きていくためにとても重要な〝社会性″です。
それでは、様々な意味を持つ〝社会性″において、発達段階を踏まえた大切なこととしてどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、〝社会性″の発達で大切な2つのことについて、臨床発達心理士である著者の療育経験を交えながら考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「長崎勤・森正樹・高橋千枝(編)(2013)シリーズ:発達支援のユニバーサルデザイン 第1巻 社会性発達支援のユニバーサルデザイン.金子書房.」です。
〝社会性″の発達で大切な2つのこと
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ここで、社会性の発達を大きく二つの質で捉えようと思う。
A. 人と関わる力(初期の社会性)
B. 社会のルールを理解し、それに従う力(後期の社会性)
著書の内容から、〝社会性″の発達には大きく、A.人と関わる力、B.社会のルールを理解し、それに従う力、の2つがあるとされています。
また、発達段階として、A→Bの順で進んでいきます。
そのため、発達初期の〝共同行為″を通して、他者と経験を共有し、共有体験を楽しむことが〝社会性″の基礎として大切となります。
一方で、後期の発達に見られる、社会のルールを守ることも大切な〝社会性″です。
それでは、〝共同行為″に見られる初期の〝社会性″と、ルール理解にある後期の〝社会性″にはどのような関係があるのでしょうか?
それでは、再び著書を引用しながら見ていきます。
重要なのは、決してBの「社会のルールを理解し、従う力」から始まるのではないし、Bだけではないということである。
A. 人と関わることが楽しいし、共に何かをすることが意味があり、大切なのだという理解があって、「だから」、共に生きていくことをしやすくするためにルールがあり、そのルールを守ろうとするのであろう。
著書の内容にあるように、〝社会性″の発達において、Aの発達が基礎となり、Aといった土台がしっかりとできることで、次のBの発達が見られるということになります。
つまり、社会のルールを理解していくことは大切なことですが、社会のルールを理解していくためには、その前段階として、人と関わる楽しさを多く経験していることがあるからこそ、社会の中でのルールの理解も、その人なりに腑に落ちる形として内部に取り込まれてくるのだと思います。
ルールがあるからこそ、人とうまく関わることができるという前提には、人との関わりに楽しさがあるという経験が重要だということです。
著者の経験談
著者の療育現場にも様々なルールが存在しています。
ルールは子どもたちにとってわかりやすいもの、そして、何故ルールが必要なのかを伝えるようにしています。
今回は、〝社会性″の発達と非常に関連する〝集団遊び″を例に考えてみたいと思います。
子どもたちの遊びの中にも様々なルールが存在します。
最初は、大人と子どもの関係から始まり、徐々に子ども同士での関わりも増えてきて、それが、〝集団遊び″へと繋がっていくことがあります。
〝集団遊び″になると、様々なルールが導入されていきます。
著者もできるだけ子どもたちにとってわかりやすいもの、そして、楽しく遊べるルールを考えるように心がけています。
その中で、うまくいかなかったケースとして、そもそも人と関わることの共有経験が乏しい子どもが集団に入った際に、ルールを破ることがあります(もちろん、それ以外にも多様な要因があります)。
また、遊びがうまくいかないと(自分が負けるなど)ルールについて文句を言うこともあります。
こうして〝集団遊び″がうまく進まなかったという経験は著者の中で多くあります。
一方で、うまくいったケースとして、集団に参加している子ども同士がある程度お互いのことを知っている(ある程度仲良く遊べる)ことや、信頼できる大人が中心となって遊びの舵を取っている場合などがあると思います。
つまり、〝集団遊び″といったルールが必要とされる遊びがうまく進むためには、それ以前に、大人との信頼関係の構築や他児との共有経験の積み重ねが必要不可欠だと実感しています。
先ほどの、引用文で取り上げた、〝Aが土台となってBへ″という道筋が〝集団遊び″の中でも見られるように思います。
以上、【〝社会性″の発達で大切な2つのこと】療育経験を通して考えるについて見てきました。
こうして振り返って見ていくと〝社会性″という言葉には多様な意味がありますが、その根底には、〝共同行為″によって、他者とある対象を共有したり、共有経験を楽しむということがあるのだと思います。
人は他者との関わりの中で生きていきます。
そして、〝社会性″とは、他者との関わりの中で感じる人との関わりの楽しさが基礎となっているということを、療育経験を通じても実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの〝社会性″の力を伸ばしていけるように、人と関わることの楽しさを感じてもらえるような環境作りや関わり方を工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
長崎勤・森正樹・高橋千枝(編)(2013)シリーズ:発達支援のユニバーサルデザイン 第1巻 社会性発達支援のユニバーサルデザイン.金子書房.