〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
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それでは、定義にもある〝共同行為″は〝社会性″の発達にどのようなに影響するのでしょうか?
そこで、今回は、〝社会性″の発達で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝共同行為″を通して考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。
〝共同行為″から〝社会性″の発達について考える
著書の中では、〝共同行為″には以下の2種類があるとしています。
1.他者が生活スキル獲得の手段(足場)となる〝共同行為″
2.他者が目的となる〝共同行為″
それでは次に、それぞれについて見ていきます。
1.他者が生活スキル獲得の手段(足場)となる〝共同行為″
以下、著書を引用しながら見ていきます。
1つは、共同行為を行いながら、最初は大人の足場かけの全面的な援助によって生活スキルを学んでいき、一人で食事をしたり、入浴できるようになるような共同行為である。
食事、入浴、着脱など生活スキルの獲得は、幼い子どもにとって学習が必要なものです。そして、その学習には、大人の援助が必要不可欠です。
例えば、食事でスプーンの使い方を知るためには、知っている大人から使い方を教えてもらう必要があります。これを、〝足場″を作ると言います
そして、少しずつ一緒に行う箇所を減らしていき、最終的に一人でできるようにしていく、つまり、〝足場″を減らしていきます。
このように、他者が生活スキル獲得の手段(足場)となる〝共同行為″が〝社会性″の発達において大切なものになります。
著者の療育現場でも、〝共同行為″の中で、〝足場″を作ることを大切にしています。
子どもたち一人ひとりに適切な〝足場″を作ることは、子どもたちが一人でどこまでできるのか、そして、大人となら一緒にどこまでできるのかという理解が必要です。
そして、一度できた〝足場″を少しずつ外していくことで、一人でできる部分が増えていきます。
この視点は、何も子どもだけではなく、大人社会においても同様にあると思います。
著者は療育現場で一緒に働く後輩への関わりにおいても〝足場″作りをしています。
つまり、最初は一緒に行い、次第に一人でできる部分を増やしていくという関わり方です。
このように、〝共同行為″は、生活スキルの獲得のためにとても大切なものであるということを、子どもたち、そして、大人同士の関わりから実感しています。
2.他者が目的となる〝共同行為″
以下、著書を引用しながら見ていきます。
もう1つが、「人といっしょに何かをする仕方」を学ぶための共同行為である。いっしょに食事をしたり、ゲームをしたりなどである。
他者が目的となる〝共同行為″とは、著書にあるように、他者と一緒に活動に取り組むものです。
例えば、ゲームをする際に、A君とB君がゲーム内の敵のキャラクターを倒すという目標に向けて、二人で協力して作戦を練ったり、プレイする中でお互いに楽しさを共有する行為などがあります。
このように、他者が目的となる〝共同行為″もまた、〝社会性″の発達において大切なものになります。
著者の療育現場でも、子ども同士がお互いの目的と役割を意識しながら、協力するといった〝共同行為″が見られます。
例えば、カードゲームや戦いごっこなどの〝遊び″では、目標(ゴール)があり、それに向けて、それぞれの役割があり、〝遊び″を進めていく上で、お互いに協力し合いながら、楽しみを共有していくといった〝共同行為″が見られます。
こうした〝共同行為″を通して、人と一緒に活動するために必要な関わり方を身につけるだけでなく、活動の過程の中で生じる様々な感情を共有するといった感情の発達にも貢献する要素が大きいと感じています。
以上、【〝社会性″の発達で大切なこと】〝共同行為″を通して考えるについて見てきました。
人は〝共同行為″を通して、他者に生活スキルを教えてもらったり、共に活動する中で人との関わり方を身につけていきます。
そして、〝共同行為″は様々な感情を共有・共感するといったものでもあります。
こうした点から、〝共同行為″は、〝社会性″の発達においてとても大切なものであると言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちと〝共同行為″を通して、子どもたちの〝社会性″の育ちに貢献していけるような関わり方をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.