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【〝認知能力″と〝非認知能力″との関係】〝非認知能力″を鍛えることの重要性について

投稿日:2023年2月14日 更新日:

認知能力“とは、言語能力や思考力、記憶力といった一般的な知能のことを言います。

一方で、創造性や好奇心、興味・関心、意欲、自主性、主体性、自制心、自信などは〝非認知能力″と言われています。

以前は、〝認知能力″が重要視される傾向がありましたが、ここ最近では、〝非認知能力″がより着目されるようになってきています。

 

それでは、〝認知能力″と〝非認知能力″にはどのような関係があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、〝認知能力″と〝非認知能力″との関係について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、〝非認知能力″を鍛えることの重要性について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「佐々木信一郎(2021)発達障害児のためのモンテッソーリ教育.講談社.」です。

 

 

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〝認知能力″と〝非認知能力″との関係について

非認知能力″の研究で有名なものに、ヘックマン博士の〝ペリー就学前プロジェクト″があります。

この研究では、就学前の子供を対象に、〝非認知能力″を鍛える教育を行い、その効果を縦断的に見たものになります。

研究結果から、〝非認知能力″の教育を受けたグループは、基礎学力が身に付いていたこと、学校を卒業できている人が多かったこと、収入が多かったなどポジティブな点が多く見られています。

この結果は、一見すると〝認知能力″が高まったことの成果とも考えられます。

しかし、こうしたポジティブな点は〝非認知能力″の成果だと言及されています。

 

以下、著書を引用しながら見ていきます。

非認知教育の支援を受けた子どもは、最初のうち認知能力である知能が高くなったそうです。しかし、その効果は徐々に薄まり、支援が終了して八歳になるころには、ほとんどなくなってしまったのだということです。つまり、認知能力である知能に差がなくなってしまったのです。

 

著書の内容を踏まえて言えることは、〝非認知能力″への教育は、初期には〝認知能力″といった知能の高まりが見られますが、後にこの差(〝非認知能力″の教育を受けたグループ・受けなかったグループとでの〝認知能力″の差)はなくなりました(8歳の時点で)。

結論としては、先のポジティブな点への影響は〝非認知能力″が強く関与しているといったことが考えられています。

つまり、様々な事に、自分なりの課題や興味・関心を抱き、それに向けて主体的に取り組み続けた人たちの方が、将来成功する可能性が高いことが考えられます。

〝認知能力″といった基礎的な知能ももちろん大切ではありますが、それ以上に、私たちは、〝非認知能力″といった力が重要だということです。

 

 

著者のコメント

私たちは、学校の勉強や大学受験などを通して、〝認知能力″を高める学びをしているのだと思います(もちろん全てではありせんが)。

〝認知能力″を鍛えることは、読み書き計算、思考力や記憶力など生活や仕事上で必要不可欠なものも多くあります。

しかし、上記の〝認知能力″の一部は、機械が代わりに行ってくれる部分も増えてきています。

必ずしも、人がすべてをこなす必要はなくなってきています。

一方で、〝非認知能力″は、その人が持つ個性が非常に活きてきます。

一人ひとりが興味・関心を持つ対象に向けて、〝学び″続ける過程を通して、その人にしかない〝創造性″が発揮されるのだと思います。

 

こうした〝非認知能力″が重要視されるようになったことの背景には、社会環境や労働環境の変化が影響していることもあるかと思います。

これまで社会が求めてきた〝認知能力″とは異なる能力が必要になってきているということです。

そのため今後は、一人ひとりがやりたいことをより〝創造的″に発揮していくことが必要になってくるのだと考えます。

人間といった生命の本質を考えてみても、好奇心や意欲といった内部のエネルギーを充足していくことが人生をより良く生きることでもあります。

〝非認知能力″を鍛えることは、人がより良く生きるために大切なことであり、〝非認知能力″の高まりがあるからこそ、〝認知能力″といった一般的な知能を鍛えること、あるいは、足りない点・苦手な点を代替する方法・アイディアなどの意味も深みを帯びてくるのだと思います。

 

 


以上、【〝認知能力″と〝非認知能力″との関係】〝非認知能力″を鍛えることの重要性について見てきました。

著者自身、興味・関心を中心とした〝学び″を継続することで、〝非認知能力″が高まったことを実感しています。

そして、これまで苦手だった〝認知能力″への考え方にも変化が出てきました。

苦手なものを克服する以上に、自分の興味・関心を大切に〝創造的″に生きようと思うようになりました。

やりたいことがある、考えたい興味・関心があるからこそ人は〝知能″を最大限活用しようとする動機が働くのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も常に目標を持ち、興味のある対象に向けて、日々の少しの成長を積み上げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【モンテッソーリ教育と〝非認知能力″の関係について】モンテッソーリ・マフィアを例に考える

 

佐々木信一郎(2021)発達障害児のためのモンテッソーリ教育.講談社.

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