社会の中で活躍する人たちの中には、発達に〝偏り″のある(発達特性)人たちも多くいます。
〝モンテッソーリ・マフィア″とは、モンテッソーリ教育を受けたことで、社会の中で〝創造性″を発揮している組織、派閥、集団のことを意味し、この人たちの中にも、一定数、発達に〝偏り″のある人たちはいると考えられています。
むしろ、発達に〝偏り″があるからこそ、高い〝創造性“を発揮して社会の中で成功を収めたとも言えます。
関連記事:「【モンテッソーリ・マフィアとは何か】〝創造性″といった特徴から考える」
それでは、モンテッソーリ・マフィアに見られるような発達に〝偏り″がある人たちの力を伸ばすためにはどのような教育法が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、モンテッソーリ・マフィアから見たモンテッソーリ教育の重要性について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、発達の〝偏り″を伸ばすための教育法について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「佐々木信一郎(2021)発達障害児のためのモンテッソーリ教育.講談社.」です。
発達の〝偏り″を伸ばすための教育法について
それでは、〝モンテッソーリの教育法″を引用しながら見ていきます。
さまざまな能力を開花させるために、モンテッソーリは環境の重要性を見出しました。子どもは自分の内部の声を聞いたなら、環境に集中して関わり、自分で自分を教育するからです。
この自由な環境こそが、偏った彼らを包含し、彼らの強い個性が潰されず、のびのびと育つことができた大きな要因となります。
著書の内容にある〝自由な環境″とは、一斉・一律の教育形態ではなく、個々に応じた教材・教具を環境に置くことで、子どもたちが自発的・主体的にやりたいものを選択し、取り組むというものになっています。
こうした〝自由な環境″を整えることで、子供たちが、自分が今取り組みたいもの、つまり、興味・関心への対象に向けて、能動的に活動していく中で、自分で自分を教育する力(自己教育力)を育むことを大切にしています。
発達に〝偏り″のある人の個性を尊重し、伸ばすということを可能にしているのは、こうした〝自由な環境″があるからだとしています。
著者のコメント
著者はこれまで、そして、現在に渡り、発達に〝偏り″のある子供たちへの療育をしています。
こうした子供たちと関わっていて、非常に成長・発達の阻害要因となるのは、一斉・一律的な教育方法や関わり方だと思います。
つまり、個々に応じた関わり方よりも、皆に対して同じような関わり方をしていこうとするものです。
著者が子供たちへの関わり方でうまくいかない道を辿る非常に大きな要素が個別の理解や関わりを軽視し、周囲や集団に合わせようとしたものだと実感しています。
もちろん、周囲や集団に合わせるものの方が、何となく話が通りすい傾向にあるのもわかります。
〝一人だけ特別扱いにしてはマズイ″、〝甘やかすことになる″、〝みんなに合わせることが社会性の育ちに必要″などの意見もあります。
しかし、短期的にみると、なんだか聞こえのよい言葉ですが、長期的な子供たちの育ちからするとうまくいかないことが多いと思います。
モンテッソーリ教育では、そもそも〝個が満たされてから集団へ″といった道筋を大切にしています。
一人ひとりが〝学びの道筋″の中で、様々な力を獲得していくことが、後の集団参加をスムーズにしていくと考えられています。
そして、将来的に社会の中で自分の持てる力を発揮する原動力にもなります。
こうした〝個″を大切にするという前提があるからこそ、発達に〝偏り″がある人たちの育ちも豊かになるのだと思います。
モンテッソーリ教育は、発達に〝偏り″のある人たちの育ちを妨げないような〝自由な環境″が工夫されています。
モンテッソーリ教育を見て感じることは、人の育ちには、〝学びの道筋″〝発達の法則性″〝自己教育力″など、人の発達を深く理解した上で、〝自由な環境″を整えているという工夫・発想にあるのだと思います。
以上、【モンテッソーリ・マフィアから見たモンテッソーリ教育の重要性】発達の〝偏り″を伸ばすための教育法とは?について見てきました。
発達障害など、発達に〝偏り″のある人たちには特別な支援や配慮が必要です。
モンテッソーリ教育から、こうした個別の視点の理解や重要性など、様々なアイディアを学ぶことができます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場を通して、一人一人の豊かな育ちに貢献していけるように、モンテッソーリ教育からの学びも大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【モンテッソーリから見た集団行動について】個が満たされてから集団へ」
関連記事:「【モンテッソーリから見た〝自己教育力″とは何か】自身の経験を通して考える」
佐々木信一郎(2021)発達障害児のためのモンテッソーリ教育.講談社.