著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちに対して、療育(発達支援)を行っています。
また、著者の周囲には当事者スタッフと言って、発達特性のある方も多くいます。
こうした子どもから大人まで、発達障害のある人たちと関わっていると情報処理にある種の特有さを感じることがあります。
中でも、物事を順序出てて一つ一つこなすことを得意とする人たちが多いという印象があります。
こうした情報処理過程の仕方について、〝認知処理スタイル″というものがあります。
〝認知処理スタイル″とは、外界からの情報を取り入れ、その情報を整理し出力するまでの一連の過程の仕方のことを言います。
それでは、〝認知処理スタイル″には、どのような仕方(スタイル)があるのでしょうか?
そこで、今回は、継次処理と同時処理といった2つの認知処理スタイルを取り上げ、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、認知処理スタイルの特徴の理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤田和弘(2019)「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ.図書文化.」です。
【認知処理スタイル(継次処理・同時処理)の特徴について】
それでは、継次処理と同時処理の2つの〝認知処理スタイル″について、著書を引用しながら見ていきます。
人間のわかり方(認知の仕方)には二つのパターンがあります。一つが左脳のはたらきと関係する「継次処理スタイル」、もう一つが右脳のはたらきと関係する「同時処理スタイル」です。人間の脳は通常、この二つのパターンを組み合わせて情報を処理しています。
著書の内容から、人間の〝認知処理スタイル(認知の仕方)″には、継次処理と同時処理の2つがあることがわかります。
脳との関係から、継次処理が左脳、同時処理が右脳との関係が深いと言えます。
通常、我々は、ある程度の偏りはあると思いますが、左脳と右脳をバランスよく活用しているかと思います。
一方で、発達障害のある方などは、こうした〝認知処理スタイル″に偏りがあるケースが多く見られます(著者の経験からもそう言えます)。
関連記事:「【継次処理と同時処理とは何か?その違いは?】認知処理スタイルについて考える」
著書の中には、継次処理と同時処理を説明するわかりやすい例が記載されています(以下、著書引用)。
(1)時計
A:デジタル派 B:アナログ派
(2)スケジュール
A:時系列で管理 B:カテゴリーで管理
(3)目的地までのナビゲーション
A:音声・文字 B:地図
Aが多った人は「継次処理スタイルが優位な人」
Bが多かった人は「同時処理スタイルが優位な人」
著書には、三つの例があり、AかBのどちらかが多いかで、継次処理と同時処理の〝認知処理スタイル″のどちらが優位であるか傾向としてわかります。
(1)時計は、デジタル時計派か?アナログ時計派か?
(2)スケジュールは、上から下(左から右)に向けて日程を記載していく時系列での管理(一日の予定を時間帯ごとに細かく管理するなど)が使用しやすいか?1週間や1ヶ月単位の日程を記載していくカテゴリーでの管理(より全体的なスケジュール管理)が使用しやすいか?
(3)目的地までのナビゲーションは、音声によるガイドの方がわかりやすいか?地図による視覚的ガイドの方がわかりやすいか?
といった〝どちらがより使いやすい・わかりやすいか″ということで、〝認知処理スタイル″の傾向が見えてきます。
もちろん、この例からはわかることは、あくまでも傾向の話なので〝認知処理スタイル″を正確に測定するには認知検査などが必要になります。
ここでは、あくまで参考にという程度という意味で例として記載しました。
発達に偏りがあると、上記の〝 認知処理スタイル″にも偏りが見られることが多くあります。
それでは、次に著者の経験談から継次処理と同時処理といった〝認知処理スタイル″の特徴について見ていきます。
著者の経験談
著者の療育現場には、発達障害など発達に躓きのある子どもが多くいます。
こうした子どもたちの日頃の〝認知処理スタイル″をよくよく観察してみると、非常に〝継次処理″の人たちが多いといった印象があります。
これは、当事者スタッフといった大人の人たちにも同じような傾向があるように思います。
例えば、その日の予定は、上から下に向けて時系列で記載した方がわかりやすいため、予定の記載は、上から下に時系列で書くようにしています。
予定はホワイトボードに事前に書くようにしていますが、子どもたちは通所してホワイトボードの予定を自ら確認し理解する様子が多いため、時系列という記載は分かりやすいのだと思います。
また、アナログ時計を置いていますが、子どもたちからは、〝あと何分で遊びは終わり?″、〝あとどのくらい遊べるの?″など、アナログ時計から時間の感覚を認識することが難しい場合が多く、正確な数字で〝あと5分で終了″、〝あと30分遊べるよ″などと伝えることが多くあります。
当事者スタッフとの関わりでも、一つの作業を一つひとつ進めていくことが得意な人が多い印象があります。
例えば、掃除にしても、事務作業にしても、二つ以上のことを同時並行すると漏れやミスがでることが多いと感じます。
一方で、一つひとつのことを丁寧に着実に進める力は得意であるという長所もあります。
以上、【認知処理スタイル(継次処理・同時処理)の特徴について】発達障害児支援の現場から考えるについて見てきました。
人間の認知の仕方は人によって偏りがあります。
しかし、その偏りは多くの人たちはうまくバランスを取って日々を過ごしていますが、発達障害など発達に躓きのある人たちの中には、偏りが優位にあることでうまく生活や学習、仕事ができない人たちがいること、また、特別な配慮が必要であるということも事実としてあります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も、こうした認知の仕方への理解を深めていきながら、その人に応じた情報の提示の仕方などを工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
藤田和弘(2019)「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ.図書文化.