発達障害のアセスメントには様々なものがあります。
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アセスメント(評価・査定)の意義は、対象者の理解を深め、より良い支援に繋げていくために行うものです。
アセスメントの中でも、非常に有名な検査に、〝ウェクスラー式知能検査″があります。
ウェクスラー式知能検査では、全IQの測定と下位構成(言語理解・知覚統合・ワーキングメモリ・処理速度)の測定が可能となっています。
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ウェクスラー式知能検査の結果と発達障害との関連性を指摘している文献なども多数あります。
一方で、検査には測定できるものとそうでないものがあります。つまり、検査には限界があるということです。
それでは、ウェクスラー式知能検査には測れない代表的な能力にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害のアセスメントで大切なこととして、心理検査(ウェクスラー式知能検査)では測れないものについて考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「萩原拓(2021)発達障害支援につなげる包括的アセスメント.金子書房.」です。
ウェクスラー式知能検査で測れないものとは?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害においては、社会性、学習、実行機能など知能検査では測定できない、または十分にできない領域が複雑に影響しており、包括的に検討するためには、ウェクスラー式知能検査以外のツールをバッテリーに加える必要がある。
著書の内容から、ウェクスラー式知能検査では、社会性、学習、実行機能などの能力は十分には測定できないとされています。
発達障害の中で、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴には、社会性の困難さがあります。
それを裏づける代表的なものとして、心の理論があります。
心の理論とは、他者の意図や信念など他者の行動の背後にある心理を推測する力を説明したものとなっています。
つまり、ウェクスラー式知能検査では、こうした心の理論などを含めた社会性の能力を測定することは十分にはできないとされています。
また、発達障害の中で、ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如多動性障害)の特徴には、実行機能の困難さがあります。
実行機能とは、〝やり遂げる力″とも言われており、目標に向けて計画を立てて注意・行動を持続する力のことを言います。
つまり、ウェクスラー式知能検査では、こうした実行機能といった情報処理過程を測定することは十分にはできないとされています。
以上から、ウェクスラー式知能検査では、社会性や学習、実行機能を測ることは難しいとされているため(相関はあるもしれませんが)、こうした力を正確に測定したい場合には、他の検査も合わせて行う必要があるとされています。
著者も様々な書籍や論文などからウェクスラー式知能検査の結果と、発達障害との関連性を指摘したものを見かけることがあります。
この点について、さらに著書を引用しながら見ていきます。
ASDなど、発達障害のプロファイル・パターンがウェクスラー式知能検査上で定型化され、それが判断材料になっている事例も見られるが、それについての学術的コンセンサスは未だにない。つまり、合成得点のアンバランス(ディスクレパンシー)だけで発達障害特性の存在はわからない。
著書の内容から、ウェクスラー式知能検査の結果らか発達障害の特性を理解できる学術的な根拠は現時点では存在していないとされています。
つまり、ウェクスラー式知能検査の4つの群指数(言語理解・知覚統合・ワーキングメモリ・処理速度)間の乖離といったアンバランスさがあっても、それが発達障害の特性に直結するという根拠はないということになります。
そのため、現時点で言えることは、ウェクスラー式知能検査から発達障害の特性について関連性があるという指摘はできるかもしれませんが、アンバランスさがあるイコール○○の発達障害の特性があるということにはならないということです。
あくまで、関連性の強さ(相関性)であり、因果ではないと言えます。
そのため、発達障害の特性理解には、特性のための検査など他の検査の実施が必要になります。
以上、発達障害のアセスメントで大切なこと【ウェクスラー式知能検査で測れないものとは?】について見てきました。
著者は心理士でもあるため、これまで大学院や研修などを通して検査の勉強をしてきました。
その中で、感じたことは検査結果を拡大解釈しないということです。
そして、その検査は何を測っているのかという理論も踏まえた検査の限界を知ることです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な検査についての学びを深めていきながら、自分が関わっている療育現場にその知見を応用していけるような取り組みをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
萩原拓(2021)発達障害支援につなげる包括的アセスメント.金子書房.