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発達障害へのアセスメント【支援に繋げるために大切なこと】

投稿日:2023年1月9日 更新日:

発達障害へのアセスメントには様々なものがあります。

アセスメントは、評価・査定のことです。

アセスメントの実施は、対象者をより深く理解し、より良い支援に繋げていくために行うものです。

 

それでは、アセスメントを支援に繋げていくためにはどのようなことが大切となるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害へのアセスメントについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、支援に繋げていくために大切なことについて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「黒田美保(編著)(2015)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ これからの発達障害のアセスメント ー 支援の一歩となるために.金子書房.」です。

 

 

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発達障害へのアセスメント【支援に繋げるために大切なこと】

それでは、著書を引用しながら見ていきます。

実は支援においては強みに目を向けることが重要で、強みをより生活の中で活かしていく方法や環境調整を考えることが支援といえる。また、弱みも見方によれば強みになることもある。見方を変えること、その人の弱みを補う環境を作ることや見つけることが、発達障害の人たちの個性を大切にしながら、無理させることなく、その能力を発揮させることにつながるのである。

 

著書の内容から、アセスメントの結果を支援に繋げていくために大切なことは、対象者の〝強み″を活かし、〝弱み″に対して環境調整をしていくことだとされています。

こうした本人の〝強み″や〝弱み″は、他者や集団との比較だけではなく、その人の個人内差で、どこが強みになりそうか?どこが弱みであるのか?という個人の内部を把握していくことも大切になります。

 

 

ウェクスラー式知能を例に考える

ここでは、知能検査で代表的なウェクスラー式知能検査を例に考えてみましょう。

まずは全IQ(知能指数)ですが、IQが平均よりも低い、あるいはグレーゾーンである場合には、一般集団から学力などが遅れる(遅れている)可能性が考えられます。

一方で、IQの内部の構造を見ていくと(群指数)、例えば、言語理解が知覚統合の得点より有意に高い場合(言語理解>知覚統合)には、言葉での理解力の強みを持っている一方、目で見た情報を統合したり状況を予測する力の弱さを持っている可能性があります。

このように、ウェクスラー式知能検査では、最終的には群指数から個人の〝強み″と〝弱み″を把握していきながら、生活場面に落とし込んで考えていくことが重要です。

 

関連記事:「ウェクスラー式知能検査とは【発達障害の理解と支援で役立つ視点】

 

 

アセスメント結果を生活場面に落とし込むためには

例をとって考えいきましょう。ここでは、仮にA君とします

A君は、先ほどのウェクスラー式知能検査の結果で、言語理解が〝強み″、ワーキングメモリが〝弱み″となっているとしましょう。

こうしたケースは実際に、著者が療育現場で見ている子どもたちの中にもおります。

そのため、著者の日々の療育経験も合わせてお伝えしていきます。

A君は、言語理解が高いため、一見すると、周囲の大人たちが話した内容を理解しているように見えます。

話した直後のA君の返答を見るとわかってると感じられる様子があります。

一方で、時間が経つとA君は大人が伝えた内容を忘れてしまうことがよくあります。

思い出すのにも時間がかかったり、〝そんなこと言ってたっけ?“という言葉を返してきます。

こうした状態が起こるのは、検査結果を踏まえて考えるとA君のワーキングメモリの弱さが影響してることが考えられます。

ワーキングメモリとは、見た情報・聞いた情報を一時的に記憶に保持しそれを操作する働きのことを言います。つまり、〝脳のメモ帳″です。

ワーキングメモリが弱いA君は、言語理解が高く話の内容の理解が強い反面、それらの情報を保持する力を苦手としていることが考えられます。

そのため、支援において大切なことは、言語理解の〝強み″を活かし、ワーキングメモリの〝弱さ″を補う取り組みが必要になってきます。

例えば、記憶の力を補うために、細かく情報を伝えること、伝える情報は最小限に絞ること、メモ帳など視覚情報に残すなどの方法があります。

言語理解が高い分、文書理解が得意であれば、言葉で書いて伝える、聞いて理解することが得意であれば、口頭での伝達を大切にしていくなどの強みを活かした方法が考えられます。

 

 


以上、発達障害へのアセスメント【支援に繋げるために大切なこと】について見てきました。

アセスメントは支援に繋げるために行うものです。

そして、アセスメントの結果から、その人の〝強み″と〝弱み″を把握していくことがとても大切になります。

さらに、生活に落とし込むという工夫もまた必要不可欠だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もアセスメントを通じて療育現場の子どもたちを理解する視点を獲得していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「発達障害への包括的アセスメントについて

 

黒田美保(編著)(2015)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ これからの発達障害のアセスメント ー 支援の一歩となるために.金子書房.

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