療育(発達支援)とは、障害など発達に躓きのある子どもたちに対する理解と支援を行うことで、自立や社会参加を目指すこととされています。
また、療育には、治療的な側面と、教育的な側面の両方が含まれます。
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著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わっています。
その中で、自分が行っている療育の中でどのようなことを大切にしていけばいいのか?といったことを考える機会が多くあります。
こうした問いの中で、著者の長年の療育経験から間違いなく実感できる療育で大切なことがあります。
そこで、今回は、療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談から発達障害児支援に必要な取り組みについて考えを深めていきたいと思います。
それでは、療育で大切なことについて著者が重要だと考える3点をお伝えします。
1.子どもたちが安心して過ごせる環境を整えること
療育の意味は、子どもたちが日々を安心して過ごせる環境を整えること、も含まれると考えます。
子どもが安心して過ごすためには、子どものことをよく知る必要があります。
例えば、発達障害という特性の理解、家庭環境や学校環境などの周辺状況、事業所内での過ごしの様子、過去の情報、最近の様子、今日の様子などです。
こうした様々な情報を統合していきながら、子どもが安心して過ごすことのできる環境設定は個々によって非常に異なってきます。
子どもたちが抱く安心感は多様であり、それは人であったり(大人・友達)、遊びの内容であったり、スケジュールなど見通しであったり、感覚刺激(感覚過敏・鈍麻など)に配慮された環境であったりします。
そして、安心感となる材料も、成長・発達とともに変化していきます。
環境を整えるという配慮一つとって見ても、子どもたちを理解する様々な情報が必要だと感じます。
そして、安心して過ごす環境があることで、日々の子どもたちの心の育ちにポジティブな影響を与えることができるのだという実感があります。
2.子どもたちが楽しみにしていることを把握すること
療育の意味は、子どもたちが何を楽しみにしているのかを把握すること、も含まれと考えます。
子どもによっては、楽しみがない、少ない、という子もいますが、こうした状況においても、少しずつ楽しみを一緒に探していく、広げていくという取り組みが大切なのだと思います。
日々を生きていく上で、楽しいことがある、やりたいことがある、という子どもたちの表情や行動は非常に活き活きとしています。
著者が勤める事業所では、学習支援や運動療法など何かのスキルを獲得することを目的として過ごすというより(部分的に行っている面もありますが)、子どものやりたい活動を一緒に見つけていく中で、その活動を中心に活動を組み立てることをしています。
その活動は個々によって多様であり、例えば、感触遊び、製作遊び、読書、ごっこ遊び、集団で体を使った遊びなどがあります。
こうした遊びも成長・発達と共に変化していきます。
著者も含め、子どもに関わるスタッフは、子どもたちが今何を楽しみして事業所に来ているのをわかっているということがとても大切だと感じます。
そして、子どもたちが楽しみにしていることがわかってくると、療育の意味も自然と深みを帯びてくるという実感があります。
3.子どもたちの自己肯定感を高める関わり方ができること
療育の意味は、子どもたちの自己肯定感を高める関わり方ができること、も含まれると考えます。
自尊心や自己肯定感、自己有能感などを育てる重要性は、様々な書籍などにも載っているため、大切だということは明らかですが、こうした感情の育ちを支援することは、日々、人が行う必要があるため、非常にマンパワーが要求されます。
そして、自己有能感を高めるためには、ただ褒めればいいというわけではなく、子どもたちの日々の様子をよく観察し行動の変化を、そこ子にわかりやすい形で伝えるということが必要になります。
そのためには、大人との信頼関係をはじめ、上記の1と2で記載した、安心できる環境を整えることや楽しみにしていることがわかる、ということもまた必要になってきます。
子どもたちの反応は、誰がどのようなタイミングでどのような内容を伝えたのかによってとても変わっていきます。
そして、こうした反応も成長・発達とともに変化していきます。
そのため、関わり手も、子どもたちの成長・発達に応じて関わり方を変えていくことが自己有能感を育てるためには重要だと感じます。
自己有能感の育ちは、自分を肯定する力、自分を励まし成長させる力であるため、今の生き方・その後の生き方に非常に影響していきます。
以上、療育で大切なこと【発達障害児支援に必要な取り組み】について見てきました。
今回お伝えしてきた3つのことは、著者が長年の療育経験を通して、腹落ちするまで療育における大切な点を考え抜いた納得感のあるものです。
3つの内容は非常にシンプルなものかもしれませんが、納得のいく形にまで持っていくにはそう簡単ではないように思います。
それこそ、人の力、子どもたちを支えるチームの力、様々な知識や情報を統合する力、日々の実践の積み上げを通して見えてくるものだと実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育という意味をさらに深く掘り下げていけるように日々の実践からの学びを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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