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発達障害の早期発見・早期支援について考える

投稿日:2020年5月20日 更新日:

発達障害への認識が社会の中に広がり、多くの人たちがその内実について知る機会が多くなっています。

ご家庭での気づきや周囲の人からの指摘もあり、自分の子供が発達障害の疑いがあるのではと心配される人も多いかと思います。

そうした中でよく耳にする言葉として、「早期発見」「早期支援」というものがあります。

今回は、発達障害への早期発見・早期支援についてその大切さを説明していきがら、私の実体験も交えてお伝えしていこうと思います。

 

今回参考にする資料は、本田秀夫編著「発達障害の早期発見・早期療育・親支援」を参照していきます。

 

発達障害の早期発見・早期支援について考える

発達障害の早期発見・早期支援で大切なものは、二次障害の予防と、親支援があります。

以下、それぞれ見ていきます。

 

二次障害の予防について

最初に、早期発見・早期支援において重要な観点として、二次障害の予防があります。

二次障害とは、もともと持っていた一次的な症状(今回は何らかの発達障害)が環境にうまく適合できずに生じる症状のことを言います。

一次的な発達の症状が例え弱いケースでも、深刻な社会不適応が生じることがあります。

ですので、できるだけ早期から、保護者の方や周囲の接する人たちは、その子の発達の特性を理解していく必要があります。

発達特性は成長や環境でその特性が目立ったり軽減することはあってもなくなるものではないという認識が大切になります。

そのため、一般的な定型発達の里程標にとらわれずに、個々に応じた個別的な理解と支援が重要です。

 

親支援について

他にも重要な視点として、親支援があります。

その子を支える最も大きな環境が親になり、安心感の基盤になるからです。

親支援にあたって重要なのは、子供の発達特性を理解してもらうこと(苦手や強みなど)、そして、子供の将来について、親にどのような見通しを与えるかも重要になります。

また、福祉サービスなど支援機関などとの繋がりを作ることも大切になります。

 

 


以上、発達障害の早期発見・早期支援において、大切な視点として、二次障害の予防、親支援など周囲の理解を上げてきました。

 

それでは、次に著者の体験談についてお伝えします。

著者の体験談

次に、私の実体験から早期発見・早期支援の重要性について考えてみたいと思います。

私には、発達障害の弟がいます。

当時は、発達障害への理解や支援が今より整備されていなかったこともあり、実際に診断を受けたのは高校生頃になりました。この間に、実に多くの環境への不適応状態がありました。

例えば、学習面の遅れ、他児が言っていることが理解できないなど集団生活の遅れ、運動面でも体の発達がゆっくりだったため周囲についていけないなどがあり、これにより、いじめや不登校傾向など二次的な問題も併発しました。

頼れる支援機関も当時はありませんでしたので、成長と共に改善するというわずかな希望と不安の中日々を過ごしていました。

こうして診断を受けるまで長い道のりがありましたので、診断を受けた時は本人は安心していたのを今でよく覚えています。

それ以降、福祉サービスの利用もあり、徐々に弟への理解も進みましたが、その理解もまた長い年月を要しています。

診断後も、弟の独特なこだわりなどから、人に頼らず自分の力でやろうとする行動がエスカレートして、その過程で身に付いた能力も当然ありますが、本人の能力以上のことをしようとした結果、うつなど精神疾患になったこともありました。

また、過去の環境への後悔の念もあり、「もっと違う環境だったらこうはなっていなかった」と話すこともありました。こうした過程を経て、自分の特性や能力への理解は非常に進みました。

ここで私がお伝えしたいのは、発達障害は治る・治らないという軸で考えてはいけないということ、本人に合った環境を周囲が整えていくことが二次障害の予防においても重要だということです。

弟も様々な二次的問題が生じましたが、一度生じると回復までの道のりが非常に困難になります。

また、問題なのは、できない自分が積み重なること、打開する方法がないという状況の蓄積が自尊心の低下にも繋がります。そうならないための周囲の理解と支援が大切です。

また、親を見ていると、頼れる人がいないという状況は非常に厳しいものがあります。

そして、どう理解し対応していけばいいのかわからない弟を目の前にして頼れるものは、一般的な発達の里程標に基づいた理解や対応になってしまいます。その繰り返しの結果は相互に負の要素しか生じません。

自分の親を見ていると、福祉サービス機関で知り合った人たちとの繋がりが孤独ではないという感覚を生じさせ、精神的な安定にも繋がったのだと思います。

こうした実体験からも、早期発見・早期支援はとても大切だと感じております。

繰り返しになりますが、重要な点は、二次障害の予防と親支援です。

 


発達障害であってもその人らしい生き方ができるということ、そうできるような理解と支援をしていけるように今後も人への理解を深めていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

本田秀夫(編著)(2016)ハンディシリーズ発達障害支援・特別支援教育ナビ:発達障害の早期発見・早期療育・親支援.金子書房.

-早期支援, 早期発見, 発達障害

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