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知的障害と他の障害の併存について

投稿日:2022年12月4日 更新日:

知的障害(ID)とは、知的発達の遅れに加え、社会適応上に問題があるといった状態を指します。

 

関連記事:「知的障害と発達障害の違いについて

 

DSM-5以降、医学的な診断分類は、ASDやADHD、SLDと同様に神経発達障害の中に含まれるものとなりました。

最近では、境界知能の人たちいった言葉も社会の中で浸透してきています。

 

関連記事:「神経発達症/神経発達障害とは何か?

関連記事:「境界知能とは何か?療育現場の実体験を通して考える

 

知的障害は単独で発症することもあれば、他の障害と併存することもあります。

 

それでは、知的障害にはどのような他の障害が併存すると言われているのでしょうか?

 

そこで、今回は、知的障害と他の障害の併存について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「下山真衣(編著)(2022)知的障害のある人への心理支援 思春期・青年期におけるメンタルヘルス.学苑社.」です。

 

 

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知的障害と他の障害の併存について

著書の中では、4つの併存症についての記載があります。

以下、それぞれについて見ていきます。

 

1.ASD(自閉症スペクトラム障害)

まずは、ASDがあります。

療育現場には、ID+ASDの子どもたちは比較的多いとった印象があります。

また、ある研究者によると、IQが中度~重度になると、ASDの特徴がほぼすべての人に見られるのではないかと感じている方もいます。

 

関連記事:「自閉症と知的障害の関係について-療育経験を通して考える-

 

著者も療育現場で知的に重度の子どもたちと多く関わってきましたが、確かに、対人・コミュニケーションの困難さや興味関心の限定・こだわり行動など、ASDの特徴が見れていたように思います。

発達の観点から考えると、認知機能に制限があると、言葉の発達、感情や社会性の発達などにも影響してくると言われています。

人間の発達は様々な要素と、その要素間の関係の繋がりが強固になって発達していきます。

そのため、認知機能といった大きな要素に何らかの影響が生じると他の機能にも影響がでることは想像できます。

こうした影響もあり、ID(特に重度)の人たちは、自閉症の特徴が見られるのかもしれません。

 

 

2.ADHD(注意欠如多動症)

あまり聞いたことがないかもれませんが、IDにはADHDも併存すると言われています。

以下、著書を引用します。

厳密には疾患としてのADHDと知的障害は区別する必要がありますが、ADHDの特徴が軽度の知的障害に見られることは少なくありません。

 

著書の内容から、軽度のIDには、ADHDが見られることは少なくないことから、両者の併存も珍しくないということになります。

確かに軽度のIDであれば、不注意やどこか落ち着きのなさ、考えずに衝動的に行動に移す衝動性などが見られるように思います。

著者はこうした軽度のIDの子どもたちとの関わりも多くありますが、どちらかというと全般的な遅れやASD傾向などに目を取られることが多くあります。

しかし、よくよくこれまでの行動を振り返って見ると、ADHDの特徴が少なからずあるということは確かに妥当であるように思います。

 

 

3.DCD(発達性協調運動障害)

DCDとは、神経発達障害の一種であり、協調運動の問題が社会生活に持続的に障害となって現れる疾患のことを言います。

例えば、球技が苦手、走るのが苦手、ダンスが苦手といった全身運動の問題、箸の使用が苦手、文字を書くのが苦手といった細かい手の運動の問題などがあります。

著者が見ているIDの子どもたちの多くは協調運動の問題も併せ持っているという印象があります。

その割合も高くほとんどのID児に何らの協調運動の問題があるようにも見受けられます。

一方で、ある運動が比較的得意、細かい手の動作は得意など、個人差もあるようにも思います。

DCDの研究自体はまだまだこれからの領域ですので、今後さらに新しい知見が出てくるかもしれません。

 

 

4.てんかん

以下、著書を引用して見ていきます。

てんかんとは、突然意識を失ったり全身のけいれんを引き起こしたりする「てんかん発作」を繰り返す病態です。てんかん発作は脳細胞の異常な電気的活動によって引き起こされるもので、通常発作そのものは一過性で数秒~数分でおさまり、発作がないときは通常の生活を送ることができます。

 

IDとてんかんは併存率が高いと言われています。

著者も療育現場の中で、特に、中重度のIDの人たちと関わっていた時期に、てんかんが見られる人たちが多かった印象があります。

中には、初めて発作があった子どもがこれまでと体の緊張加減(力の入れ加減)が変わったと感じる子どももいました。

また、発作にも周囲からはっきりとわかるものから、部分発作などわかりにくいものまで様々な種類があります。

ただ、医療機関から対応策などは伝達されますので、落ち着いて対応することが重要です。

 

 


以上、知的障害と他の障害の併存について見てきました。

こうして振り返って見ると、様々な障害は単独で発症しているというよりも、併存しているケースも非常に多いということを考えさせられます。

そのため、障害の併存からの理解は今後ますます療育現場においても大切な視点になってくるのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な障害についての理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

下山真衣(編著)(2022)知的障害のある人への心理支援 思春期・青年期におけるメンタルヘルス.学苑社.

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