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合理的配慮 発達障害

発達障害児・者への合理的配慮について考える

投稿日:2020年5月19日 更新日:

発達障害児・者への支援に携わる仕事をしていると、「合理的配慮」という言葉を聞く機会が出てきます。

職場の研修などでも、この内容に関しての研修を最初に受けた記憶がありますし、現場でも頻りに「配慮していきましょう」、「どういった配慮が必要だと思いますか?」など合理的配慮について語られることが多くあります。

今回は、合理的配慮について概説していきながら、私が発達支援に関わる現場を通して意識的・無意識に行ってきた合理的配慮についてお伝えしていこうと思います。

 

合理的配慮について

合理的配慮を説明する上で、頻繁に出てくるのが野球観戦をしている父・姉・弟の3人のイラストです。ちなみに、背の高さは父から順に低くなるイメージです。そして、3人の前に高いフェンスがあったとし、このフェンスの影響で野球が見えにくいといった状況を仮定します。

ここで、3人が野球をより見えやすくするために台を用意します。最初に、3人それぞれに同じ高さの台を用意します。これが、平等(equality)といった考え方です。つまり、1人1人に同じやり方(支援)をしていくというものです。

次に、父には台を無しにして、姉には台1つ分、弟には2つ分とそれぞれの背の高さに応じた対応をしていく、これが、公平(equity)といった考え方です。つまり、1人1人に応じたオーダーメイドの対応(支援)をしていくというものです。合理的配慮とは、このように、それぞれの過ごしやすさを考え、それぞれに応じて対応を変えるというものです。

例えば、発達支援の現場で特性のあるお子さんはその特性に応じて、その子が過ごしやすい環境を整えることが重要になります。

公平な支援を行うためには、みんなが楽しく参加できるにはどうすればいいのか?といった視点が重要です。最初から不参加という視点だと配慮ではなく排除になりますので、その子にあった参加の仕方を考えることが大切になります。

以上が合理的配慮について簡単にではありますが説明になります。

 

著者の体験談

次に、私が発達支援に関わってきた現場を通して意識的・無意識に行ってきた合理的配慮について、3つの事例から簡単にお伝えしていこうと思います。

1つ目として、私が療育現場で未就学児への療育をしていたときの話です。10人前後のクラスで構成されており、その中の数名のお子さんがなかなか朝の集まりへの参加が難しい状況でした。難しさの背景として、集団活動が苦手などの背景がありました。その際に、配慮のポイントとして、短い参加でも参加したと捉えること、その子がわかりやすい集まりの工夫をするなどの対応があるかと思います。実際、そのように対応することで少しずつ参加度が高くなったお子さんもいました。

2つ目として、療育現場で運動会の練習の時の話です。中には練習の最初から、ゴールを目指して走れるお子さんもいますが、そうでないお子さんもいるなど、個々の能力や特性に応じて違いがあります。その際に、配慮のポイントとして、みんなと一緒にやりましょうではなく、1人1人に応じて、対応していくという考え方が重要になります。例えば、みんなが走る様子を近くで見学する(集団参加が難しいお子さん)、コースアウトしても走り切ったことを良しとする(ゴールへの認識が難しいお子さん)など、その子に応じてどこまでを参加と捉えるのかを大人が調整するという視点です。そうした配慮を受けたお子さんたちは、安心して活動に参加できることが多くありました。

3つ目として、放課後等デイサービスの現場で、集団で集まる時間に、ある男の子が集団への参加を嫌がりました。その子には聴覚過敏という特性があります。そのため、集団など賑やかな場面を苦手としていました。配慮のポイントは、聴覚過敏を理解し、それを回避しながら参加の仕方を考えました。結果、隣の部屋で他の支援者と行うという方法をとり、そうすることで声をかけると隣の部屋でなら参加できる様子が増えました。

 

著者のコメント

療育や教育などに携わる仕事をしている方々は、1人1人の能力や特性に応じて対応策を工夫されている方が多いのではないかと思います。

私が学校教育を受けていた時代には、みんなと一緒の教えが多くあり、個々に応じての視点が今より少なかった印象を受けます(今も多いとは思いますが)

ですので、私の中で無意識的に個々に応じた対応が弱くなることがありますが、たいていこのようなときには、うまくいかないことが多いです。

今の時代の教育は、1人1人に応じて配慮されたオーダーメイドの教育が重要なのだと思います。そのためには、そもそも人は前提として違うという認識が大切なのだと思います。

個々の違いを知ることは多様性を理解することです。今後も、1人1人の違いを理解し、それぞれに応じたより良い支援をしていけるように心がけていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

-合理的配慮, 発達障害

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