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ADHD 二次障害

ADHDの二次障害について【不安障害から考える】

投稿日:2022年11月24日 更新日:

発達障害への支援で大切なことは二次障害の予防です。

著者は療育現場で長年にわたり多くの子どもたちと関わってきた経験から、二次障害が生じている子ども、あるいは、その傾向が出ていると思われる子どもたちの対応が非常に難しいと感じています。

一方で、もともと持っている発達特性に加え、二次障害への理解を深めていくことで目の前の子どもたちと関わりやすくなり、かつ、理解も進んでいったと感じるケースは多くあったように思います。

 

それでは、様々なある発達障害の中で、ADHDにはどのような二次障害がよく発症すると言われているのでしょうか?

 

そこで、今回は、ADHDの二次障害について、不安障害を取り上げながら、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「榊原洋一(2019)最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本.ナツメ社.」です。

 

 

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ADHDの二次障害について【不安障害から考える】

ADHD児の二次障害が生じるプロセスとして有名なものに、「ADHDのマーチ」があります。

詳細は以下の記事に記載しています。

関連記事:「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える

 

「ADHDのマーチ」から言えることは、二次障害のプロセスは、外在化か内在化があるということです。

外在化は、もともとあるADHDの特性が影響して環境との間で不適応状態となることで、怒りや不満などを外に表出する行動のことを言います。例えば、行為障害などがあります。

内在化は、もともとあるADHDの特性が環境との間で不適応状態となることで、不安感を自分の心の内部に留めることで、不安感を抱えながら一人で思い悩む状態のことを言います。例えば、不安障害があり、不安障害の状態が悪化するとうつ病となります。

 

 

不安障害とは何か?

それでは、ADHDの二次障害の中でも内在化の過程の中で進み症状が悪化することで見られる「不安障害」とはどのようなものなのでしょうか?

 

以下、著書を引用して見ていきます。

ADHDの行動特徴によって、劣等化をもったり、対人関係がうまくいかなくなったりしているうちに、過度なストレスから精神的に不安定になり、不眠や食欲不振、体調不良などを起こし、日常生活がうまく送れなくなる障害です。

 

突然強い恐怖感に襲われ、動悸や息苦しさが生じるパニック発作や、特定の状況で強い恐怖感を覚える恐怖症、漠然とした不安を抱える全般性不安障害などがあります。

 

ADHDの子どもの20~30%に見られます。

 

著書の内容から、不安障害は、子どもにも見られるものであり、ADHDにも比較的高い割合で見られるということがわかります。

そして、その要因として、例えば、学校などでの対人関係のうまくいかなさなどから生じる劣等感や不安感などがあると考えられています。

状態がひどくなることで、発作が生じたり、症状が悪化することでうつ病へと繋がる場合もあると考えられています。

 

 


それでは次に、著者の経験談からADHDの不安障害について見ていきます。

 

著者の経験談

ADHDの診断を受けた小学校5年生のA君のケースを取り上げたいと思います。

著者はA君が3年生の頃から放課後等デイサービスで関わり始めました。

当時の、A君は、他児と関わりを求めるも、少しうまくいかないことがあると、一人別室で落ち込む様子、ふさぎ込む様子が多くありました。

また、時折、「自分なんていなくなればいいんだ」、「何をやってもうまくいかない」、「どうせうまくいかないんだ」など、否定的な言動もありました。

著者を含め、大人が嫌なことを聞いても「話したくない」と自分の気持ちをうまく伝えることも難しい状態でした。

こうした言動・行動から不安障害の傾向が強くあったように思います。

しかし、当時の著者は二次障害の視点よりも、ADHD特性への配慮を心がけるようにしていました。

二次障害への理解や知識がそれほどなかったのも要因でした。

ADHD特性の理解と配慮を進めて行くことで、A君は、放課後等デイサービスに安心感を持つようになり、他児との関わりもうまくなっていきました。

また、支援の過程には、我々スタッフが、A君が極度に他児から否定的に見られていると感じていること、他児との関わりを欲するもうまくいかないもどかしさがあること、自分の不安感を言葉にして伝えることなどの苦手さがあることから、心理面への配慮も行っていきました。

つまり、もともと持っている発達特性に加え、二次障害(その傾向がある)への理解も行っていったことが、少しずつ支援が良い方向に向かっていった要因だと今では感じています。

学年が上がるにつれてA君は、自分の気持ちを話すことに苦手さはありますが、自分を肯定的に見れる様子が増え、自信も増し、他児との関わり方もうまくなっていきました。

まだまだ、不安障害の傾向は時折見られますが、それでも、当時と比べると格段に良い方向に成長したと思います。

 

 


以上、ADHDの二次障害について【不安障害から考える】について見てきました。

二次障害が発症している子どもへの対応は療育現場でとても難しいと感じます。

大切なことは、もともと持っている子どもの発達特性の理解に加え、二次障害への理解や心理的な配慮も必要になるという視点だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で二次障害への理解と対応、そして、二次障害への予防的な支援を心がけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

榊原洋一(2019)最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本.ナツメ社.

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