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発達障害 関係性

発達障害児との関係性について大切なこと【療育経験を通して考える】

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著者は長年、発達障害といった発達に躓きのある子どもたちと多く関わってきています。

その中で、発達障害特有の関わりの難しさがあり、良い関係性を子どもと作ることが難しいと感じることがあります。

一方で、良いか関係性ができてくると、支援もスムーズに進むことが多いといった実感もあります。

それでは、発達障害のある子どもたちと良い関係を作るためにはどのようなことが大切となるのでしょうか?

また、良い関係ができてきたと実感できる状態とはどのようなものなのでしょうか?

そこで、今回は、発達障害児との関係性について大切なことを、臨床発達心理士である著者の療育での経験談をもとにお伝えしていきます。

 

 

発達障害児と良い関係をつくるには何が大切か?

発達障害児といっても一人の子どもであり、定型児と変わらない部分も多くあります。

最終的には、発達障害という理解ではなく、その子自身のパーソナリティを理解していくことが大切になります。

今回は、発達障害というキーワードを踏まえた上での良い関係の作り方をお伝えします。以下、2つの視点にまとめました。

 

 

1.発達特性を理解した関わり

発達障害というと、ASDやADHD、IDなど様々なものがあります。

発達特性を理解していくとは、子どもたちが持っている先天性の脳の機能障害を理解していくことでもあります。

つまり、生まれもった部分、変わらず残り続ける部分を理解していくという認識が大切です。

例えば、ASD(自閉症)には、対人・コミュニケーションの困難さやこだわり行動が特性としてあります。そのため、人・場所・時間などへの環境調整がとても大切です。

また、ADHD(注意欠如多動症)には、不注意・多動性・衝動性といった発達特性があります。特性ゆえに、ミスやトラブルなどが多くなってしまいがちですが、不注意への対処方法や、多動性・衝動性による失敗があっても責めたり・否定しないといった対応が大切になります。

また、ID(知的障害)は、全般的な発達の遅れと社会適応に問題がある状態を言います。そのため、子どもに応じた理解のしやすい環境調整などが大切です。

 


様々な発達特性の理解の詳細は下記の記事を参照して頂ければと思います。

関連記事:「自閉症への支援-居場所支援について療育経験を踏まえて考える-

関連記事:「療育で大切な視点—ADHD児への基本対応について-

関連記事:「知的障害の特徴について-療育経験を通して考える-

 

 

2.二次障害が生じているかどうかも合わせた関わり

療育を行う上で関係が非常に作りにくいと実感するのが、「二次障害」が見られる子どもたちです。

関係性が作りにくいのも当然で、「二次障害」とは、子どもが環境にうまく適応できない状態が続いた結果生じるものであり、中には、大人への不信感なども含まれるからです。

著者が見てきた二次障害にも、個人差がありますが、愛着障害、反抗挑戦性障害、行動障害などがあります(著者の見立てですが・・)。

こうした子どもたちへの対応には、スタッフ間の連携や保護者支援、他の専門機関との連携も大切になります。

「二次障害」への支援には、長期的な展望を持つこと、一次障害も含めた(「一次障害」+「二次障害」)より高い専門的な知識も合わせて必要になるかと思います。

 


二次障害に関する記事の例を以下にいくつか載せましたので参照して頂ければと思います。

関連記事:「愛着に問題のある子どもの行動特徴について現場から考える

関連記事:「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える

関連記事:「行動障害について太田ステージから考える

 

 

 

発達障害児と良い関係ができた状態とは?

それでは、ここから先は、著者が子どもたちと良い関係ができたと実感した経験談をお伝えしていきます。以下、3つの視点にまとめました。

 

 

1.子どもの不安な状態が手に取るようにわかる

良い関係ができてくると子どもからの不安の発信がはっきりとわかるようになります。

そして、その理由もある程度は予測がつくため、対応方法などのバリエーションも増えていきます。

もちろん、療育現場以外での出来事が原因となっていたり、新しい不安感が生じることもあります。

このような時にも、これまでの経験をもとに理解や対応がスムーズにいくことが増えていくという実感があります。

 

 

2.子どもが好む関わりが理解できる

良い関係ができてくると、子どもたちが欲していること、欲している関わりなどが見えてきます。

こうした状態は言い換えると、子どもに好む関わりを続けてきた結果ということも言えます。

発達特性がある子どもたちにとって、特性ゆえの理解のされにくさや叱責などを周囲から受けてしまうことも多いため、発達特性を理解し、子どもたちを肯定してくれる人の存在はとても大切だと思います。

 

 

3.子どもと自然と関わることができる

子どもたちと良い関係が築けていない場合には、どことなく子どもとの間に緊張関係があったり、関わりかがどこかぎこちないところがあります。

それが、良い関係ができてくると、子どもとの間の緊張感が減り、自然と声をかけることができるようになったという実感があります。

もちろん、自然体といっても預かっている身としては安全に活動を終えるという役割もあるため、ある程度の緊張感を持つことも必要です。

一方で、子どもたち一人ひとりのありのままが可愛らしく、自然と関わることができるようになっていくことが良い関係性をつくるためにとても大切なことだと実感しています。

 

 


以上、発達障害児との関係性について大切なこと【療育経験を通して考える】について見てきました。

上記に記載した他にも、発達に躓きのある子どもたちと関係性を築く上で大切なことは多くあると思います。

今回は、その中でも特に著者が大切だと考えていることについてお伝えしてきました。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちと良い関係性をつくっていけるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

-発達障害, 関係性

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