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発達性協調運動障害への2つの支援方法について【過程指向型アプローチと課題指向型アプローチ】

投稿日:2022年11月3日 更新日:

発達性協調運動障害(DCD)とは、不器用さといった協調運動の問題が社会生活に持続的に支障が出ている状態のことを言います。

例えば、姿勢が悪い、字が汚い、ボール遊びが苦手、縄跳びが苦手、スキップがうまくできない、定規やコンパスなど道具の使用がうまくいかない、箸がうまく使えない、などがあります。

 

関連記事:「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?

 

発達性協調運動障害児へのこれまでの研究を見ても、適切な協調運動への支援が行われれば、改善が見られるなど支援に関する研究も進んできています。

 

それでは、発達性協調運動障害への支援方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達性協調運動障害への2つの支援方法について、過程指向型アプローチと課題指向型アプローチについてお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.」です。

 

 

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発達性協調運動障害への2つの支援方法について

様々な著書を見ると、発達性協調運動障害(DCD)への支援方法には大きく2つがあります。

その2つとは、過程指向型アプローチ(process-oriented approach)課題指向型アプローチ(task-oriented approach)です。

 

 


それでは、以下それぞれについて見ていきます。

 

 

過程指向型アプローチについて

以下、著書を引用します。

過程指向型アプローチは、運動スキルの発達の遅れや阻害の原因となっていると考えられる感覚運動系のプロセスの一部(中略)に焦点化して、その部分の向上をはかることで、DCDを示す対象児の運動のパフォーマンスを向上させようとしているアプローチ

 

著書の内容から、過程指向型アプローチとは、、例えば、特定の課題(書字や縄跳びなど)に焦点を当てた練習ではなく、運動のパフォーマンスそのものを高める方法ということが言えます。

スポーツを例にとって考えてみましょう。

球技が苦手なA君がいたとします。ボールを投げたり、キャッチすることが苦手なA君に対して、過程指向型アプローチでは、球技そのものを練習するのではないことが特徴としてあります。

例えば、筋トレをしたり、ストレッチをするなど、全般的な運動スキルの向上の練習をします。

運動スキルの向上を図ることで、それが何らかの形で球技の苦手さの改善に繋っていくといった視点に特徴があります。

こうした方法は、ボトムアップ的アプローチとも言われています。

また、過程指向型アプローチの具体的なものとして有名なものが、感覚統合療法(sensory integration therapy)運動訓練法(kinesthetic training)などがあります。

 

以上を踏まえて、再び過程指向型アプローチの2つの特徴について著書を引用してみます。

ある特定の感覚や知覚運動など運動困難の背景と考えられる要因に焦点化し、それらをひとつずつ改善させて脳の機能を高め、DCDの改善をはかろうとしている介入の考え方

 

日常生活のなかで困難にしている特定の技能を直接教えようとするものではないという点

 

以上、過程指向型アプローチについて見てきました。

これまでの、先行研究から過程指向型アプローチはこれから説明する課題指向型アプローチよりも介入効果が低いとされています。

しかし、課題指向型アプローチは、特定の課題に焦点を当てているため、効果が出やすい、そして効果検証しやすいことも考えられます。

そのため、今後、過程指向型アプローチにおいて、さらなる効果検証が行われることで、介入効果の有効性などが示唆される可能性があります。

 

 

課題指向型アプローチについて

以下、著書を引用します。

課題指向型アプローチによる介入は、個々の子どもに合わせた教授方法やペースで、適切な運動スキルを直接的に教えようとするものである。

 

課題指向型アプローチによる介入のねらいは、対象児が、求めている運動スキルの水準まで到達させ、運動スキルの獲得と洗練を促し、自動的に運動スキルを遂行できるように般化させることにある。

 

著書の内容から、課題指向型アプローチとは、対象児が求めている特定の運動スキル(例えば、書字や球技など)に対して、対象児に応じた練習法や練習のペースで支援していく方法ということが言えます。

先ほどの過程指向型アプローチのスポーツの例で考えると、A君が苦手としているボールを投げたり、キャッチするという運動スキルに焦点を合わせて練習していくということになります。

こうした特定の運動課題を定め、その運動スキルを練習していく方法は、ゴールを決めることが必要になります。

例えば、5メートル先の相手とスムーズにキャッチボールができる、周囲が見ても判別できる程度の文字が書けるなど、ゴール設定が可能です。

こうしたことから、課題指向型アプローチの方法は、トップダウン的アプローチとも言われています。

また、課題指向型アプローチの具体的なものとして有名なものが、CO-OP(Cognitive Orientation to daily Occupational Performance)NTT(Neuromotor Task Training)などがあります。

 

 


以上、発達性協調運動障害への2つの支援方法について【過程指向型アプローチと課題指向型アプローチ】について見てきました。

発達性協調運動への理解や支援は、他の発達障害と比べてもまだまだ発展途上だとされています。

そのため、今後更に研究が進むことで、不器用さといった協調運動への理解と支援が展開されていくことを期待したいと思います。

著者も療育現場を通して、不器用さなど協調運動への問題がある児童を多く見てきており、そうした経験談から、運動への理解も深めていきたいと思っています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.

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