発達障害とは、自閉症やADHD、学習障害などが含まれており、脳の機能障害により、発達期から様々な行動上の問題が見られる人たちのことを言います。
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発達障害といった言葉が社会で浸透する一方で、「発達凸凹」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
両者は一見すると似ているようですが、定義上異なるものです。
それでは、発達凸凹とは一体何でしょうか?
そこで、今回は、発達凸凹とは何かについてお伝えしていきながら、発達凸凹の子どもたちに対して療育上必要なことをお伝えしていきます。
今回、参照する資料は「杉山登志郎(2011)発達障害のいま.講談社現代新書.」です。
発達凸凹とは何か
以下、著書を引用します。
発達凸凹では、認知に高い峰と低い谷の両者をもつ子どもと大人である。そして、狭義の発達障害とは、発達凸凹に適応障害が加算されたグループである。式で表せば次のようになる。
発達凸凹+適応障害=発達障害
著書の内容を見てわかるように、発達障害とは、発達凸凹に適応障害が加わったものになります。
そして、発達凸凹とは、認知に偏りが大きく見られる人たちのことを言います。
例えば、心理検査(知能検査)で有名な、WISCを例に考えてみましょう。
WISCには、大きく、言語理解、知覚統合、ワーキングメモリー、処理速度といった4つの測定項目があります。
発達凸凹の人には、これらの項目内にバラつきが大きく見られるケースがあります。
例えば、言語理解(言葉で情報を処理する能力)が非常に得意だが、一方で、知覚統合(視覚で情報を処理する能力)は低いなど得意・不得意に差が見られるというパターンもあります。
定型発達の人では、こうした能力間の差が少ないケースが多いのですが、発達凸凹の人たちは、個人内差(その人の中の能力間の差)が定型発達の人と比べて大きいことが特徴としてあります。
そして、こうした特徴を持つ発達凸凹の人たちに適応障害が加わると発達障害と診断されるということになります。
適応障害については下記の記事を参照して頂ければと思います。
関連記事:「発達障害「グレーゾーン」と適応障害について考える」
それでは次に、発達凸凹の子どもに対して、療育上必要なことについて見ていきます。
療育で必要なこと
以下、著書を引用します。
療育の要点をくり返すと、もともとの問題を軽減させることと、同時に二次障害を作らないということである。すると自閉症スペクトラムをはじめとする発達障害、発達凸凹の場合、二つのキーワードに集約される。愛着の促進形成とトラウマの軽減である。
著書の内容では、発達凸凹の子どもへの療育で必要なことは、問題行動の軽減、愛着障害やトラウマなどの二次障害を予防することだとしています。
そのため、何か特別な支援が必要というわけではなく、発達凸凹の状態像を理解していくこと、そして、大人との信頼関係の構築(愛着形成)がとても大切になるということです。
発達凸凹を理解するということは、関わり手がその子の認知傾向などの特徴・特性を理解することであり、特徴・特性を踏まえた配慮を行っていくことに繋がります。
例えば、視覚理解に強い子に対しては、口頭の説明以上に、目で見てわかる提示を考えること、ワーキングメモリーといった記憶が苦手な子に対しては、メモの取り方など情報を整理する方法を伝えたり、できるだけ必要最小限の情報を提示するなどの配慮が大切になります。
こうした配慮を受け続けることで、自分の特徴・特性の理解が進み自分で特徴・特性に折り合いをつけながら生活できるようになり、また、必要な配慮をしてくれる関わり手に対して(大人や社会に対して)肯定的な感情を抱くなど、二次障害の予防にも繋がっていきます。
以上、発達凸凹とは何か【療育で必要なこと】について見てきました。
最近では、自閉スペクトラム症、学習症など、「症」ということばと、「障害」とを分けて使う人たちも増えてきています。
発達障害と言うとどうしてもネガティブな印象を持ってしまう方もいるかと思いますが、障害になるかどうかは、個人と環境の相互性で決まるため、決して発達凸凹や発達特性があっても人生においてネガティブに働くわけではありません。
むしろ、発達凸凹や発達特性があることで、好きな事や得意な事が見つかった・伸びたというケースも多く存在します。
私自身、こうした特性のある人たちと関わる機会が多いため、今後も様々な凸凹や特性について学びを深めていきながら、ネガティブな要素に配慮し、ポジティブな面を見つけ伸ばしていけるような関わりをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
杉山登志郎(2011)発達障害のいま.講談社現代新書.