愛着とは、特定の養育者との情緒的な絆のことを言います。
一昔前は、愛着と言えば子どもを対象に研究されていました。
しかし、ここ最近(といっても十数年前から)になって、日本で大人の愛着が注目されるようになってきました。
大人の愛着研究で重要な概念にタイトルにもある〝内的作業モデル″といったものがあります。
それでは、内的作業モデルとは一体どのような概念なのでしょうか?
そこで、今回は、臨床発達心理士である著者が、愛着で重要な内的作業モデルについて、その概要についてお伝えしていきます。
今回、参照する資料は「数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2005)アタッチメント:生涯にわたる絆.ミネルヴァ書房.」です。
愛着で重要な内的作業モデルについて
それでは、以下に著書を引用しながら内的作業モデル(Internal Working Model:IWM)について見ていきます。
内的作業モデルは、アタッチメント対象との間で交わされた過去の相互作用経験、ならびにその時その場で起こっている相互作用に基づいて作られる。
著書の内容から、内的作業モデルは、アタッチメント対象(愛着対象)との情緒的な交流(相互作用経験)が内部に(イメージとして)取り込まれたものになります。
この内部とは、表象(イメージ)のことを言います。
幼少期の子どもは愛着対象に物理的に接近して不安を軽減したり、安心感を求めようとします。これを、愛着行動と言います。
それが、イメージする力がついてくると(認知の発達により)、愛着対象を表象(イメージ)することで緊張を和らげたり、探索空間を広げることができます。
例えば、何か不安なことがあると大切な人のことを思い浮かべることで緊張がほぐれたり、何かに挑戦した後には大切な人に報告しようと思うなどがあります。
こうした働きの根底に、内的作業モデルが影響しているというわけです。
こうした内的作業モデルは、幼少期の養育者との情緒的交流の質の違いによって、様々なスタイルが形成(愛着スタイル)されると言われています。
関連記事:「愛着スタイルとは?4つの愛着スタイルの特徴について考える」
内的作業モデルは人生早期に形成されその後の人生に影響する
以下、著書を引用します。
Bowlbyは特に生後6ヶ月頃から5歳くらいまでの早期のアタッチメント経験を基礎とする内的作業モデルの構築が、その後の人生にきわめて重要な意味を持つと考えた。
愛着研究が進むにつれて、一度形成された愛着(内的作業モデル)は、生涯にわたり影響するものだと考えられるようになりました。
そのため、大切なのが生後から5歳頃まで(特に3歳頃まで)の養育者との関係です。
こうした人生早期の関係がその人の対人スタイル(自他へのイメージ)の基盤となり、無意識的に人の行動を左右するものになります。
最近の大人に関する愛着の書籍を見ても、これまで精神疾患と言われていたものの根底に愛着障害が見られたり、ASDやADHDの行動特徴と似た愛着スタイルもあると言われています。
関連記事:「回避型愛着スタイルとは何か【近年増加している?ASDと似ている?】」
関連記事:「疑似ADHDとは何か【ADHDの背景には愛着障害が潜んでいる】」
内的作業モデルといった概念が導入されたことで、愛着研究は青年期・成人期といった大人にまで拡張されるようになりました。
現在は、子どもから大人、そして、文化差や様々な障害に至るまで愛着研究は発展してきています。
以上、愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】について見てきました。
人は心の中に大切な人の存在がいることで、希望を持って生きることができます。
そして、例え不安定な愛着スタイルであったとしても、愛着スタイルは安定した状態へと時間をかけてつくりかえることができます(この点についてはまた別の記事に書きたいと思います)。
私自身、療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わっています。
人生早期における特定の大人との関係が後の発達において重要だという認識を持ちながら、今後も発達支援の現場に愛着の視点も取り入れながらより良い支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介
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数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2005)アタッチメント:生涯にわたる絆.ミネルヴァ書房.