愛着欲求は人間誰しもがもっている根源的な欲求です。
特に子どもは大人から多くの愛情を受けることで、目には見えない多くのエネルギーを蓄え、次の活動への意欲が出てくることもよくあります。
著者は療育現場での経験を通して、愛着欲求を満たすことの重要性実感することがよくあります。
そこで、今回は、著者の療育経験を通して、愛着欲求を満たすことの重要性についてお伝えしていきます。
今回、参照する資料は「小林隆児(2001)自閉症と行動障害:関係障害臨床からの接近.岩崎学術出版社.」です。
愛着欲求を満たすことの重要性について
以下、著書を引用します。
ここで重要なことは、食欲、性欲、睡眠欲、愛着欲求などの本能欲求はけっしてそれぞれが独立して常に強いものではなく、他の欲求が満たされることによって代償されるという側面があることを忘れてはならない。すなわち、過食によって満たされていた本能欲求が、次第に愛着欲求による満足に取って代わり、まもなく異常な食欲亢進が消退していくことにつながっていく。情動調整と同様のメカニズムがここでも発揮されていくのである。
著書の中では、過食の事例を取り上げ、愛着欲求が満たされることで過食が消失していく事例が記載されています。
これは、過食以外のケースでも当てはまることが考えられます。
引用に記載されている本能欲求はそれぞれ独立しているのではなく、根底の本能欲求として繋がっており、愛着欲求も他の欲求と繋がっています。
そのため、愛着欲求が満たされることが、様々な行動上の問題や異常に対しても効果があると著書の中では様々な事例を通して記載されています。
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それでは、次に、著者の療育経験を通して、愛着欲求を満たすことの重要性についてお伝えします。
著者の経験談
著者はこれまでの療育経験を通して、愛着欲求(愛情のエネルギー)を満たすことの大切さを痛感することが多くあります。
例えば、何かうまくいかないことがあり、イライラしている子も、関わるスタッフがその子の気持ちに寄り添いながら、その大変さに共感していき、多くの愛情を注ぐことで、徐々に不安定な気持ちが安定していき、次の行動への意欲が湧いてくることがあります。
もちろん、愛情を注ぐためには、ある程度の関係ができていることが重要です。
こうした関係は子どもが関わるスタッフに対して甘え行動を取り、それをスタッフがしっかりと受け止める関係ができていることが大切です。
多くの子どもたちと接してきて感じることは、愛着欲求対象となるスタッフ(大人)は、子どもが甘えることができること、その人といると情緒が安定すること、自分の気持ちを不器用ながらも伝えることができること、大事なことを伝えたい相手であることなどが特徴としてあるかと思います。
逆に、子どもが緊張する相手や、お利口だが甘えることができないなどは愛着欲求対象にはなっていない印象があります。
これは逆に、関わるスタッフも似たような心情かと思います。
緊張せずに関わることができる、甘えてきてうれしい、子どもの情緒が感覚としてわかる、大事なことはいつも自分に伝えに来てくれるなどが関わるスタッフ(大人)の心情としてあるように思います(少なくとも著者にはそう感じます)。
このように子どもの愛着欲求を満たすことは何もわがままな状態を許容するのではなく、愛情のエネルギーを注ぐことで、気持ちの安定化や次への活力や意欲を育むものでもあります。
甘えを許容するのは、わがままな子になってしまうと考える方もいるかもしれませんが、逆にしっかと甘えることができた子の方が自立心は高まると思います。
それは、関わる大人が子どもの不安定な情緒を調整し、その経験が子どもの中に内在化されるからです。
つまり、自分の力である程度情緒をコントロールするためには、関わる大人との間で様々な気持ちの調整を行ってきたという経験を取り込む必要があるからです。
愛着欲求は、我々が想像する以上に人間の情緒の充足やコントロールなどを左右しています。それは、人間の根源的な欲求の一つでもあるからです。
私自身、現在も様々な子どもたちに療育をしていますが、愛着欲求を満たすこともまた重要な関わりだと思っています。
今後も子どもたちのより良い育ちに繋がるように愛着欲求を満たすことの重要性を意識しながら、日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。