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グレーゾーン 発達障害

発達障害「グレーゾーン」とは何か?

投稿日:2022年7月7日 更新日:

最近よく耳にする言葉に発達障害「グレーゾーン」といったものがあります。

発達障害は主なものに、ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)などがあります。

こうした発達障害の中身として、対人関係やコミュニケーションの困難さ、不注意や落ち着きのなさ、読み書き計算の困難さなどが特徴(特性)としてあります。

 

こうした中で、発達障害「グレーゾーン」とは一体どのような特徴があるのでしょうか?

 

今回は、著者の経験も踏まえ、発達障害「グレーゾーン」について考えていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「林寧哲・OMgray事務局(監修)(2020)大人の発達障害 グレーゾーンの人たち.講談社.」です。

 

 

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発達障害「グレーゾーン」とは?

以下、著書を引用します。

医療機関で「発達障害の傾向がありますね」などと診断された人たちがいます。発達障害の「傾向」とは、発達障害とはいえないが、健常でもない、その中間だという診断です。このゾーンをグレーゾーンといいます。

著者も発達障害傾向といった言葉をよく聞きますが、こうした発達障害と健常の中間に位置する人たちが「グレーゾーン」ということになります。

「グレーゾーン」の主な特徴として、なんとなくうまくいかない、生きづらいといった漠然とした感覚です。

これは、特性が明確でない(行動としてグレーな状態)ために生じるものですので、できる部分も多くあるが故の自他の理解の困難さでもあります。

 

以下、引き続き著書を引用します。

「グレーゾーン」とは、「発達障害の診断が定まらない人」という意味だけではありません。「環境への適応がいいときと悪いときの両方がある人」という意味もあります。

このように著書の内容を見ても、環境への適応が良い時と悪い時の両方を有しているものまた特徴としてあります。

発達障害自体、個人因子と環境因子の相互性で困難さや問題などが規定されるため、特性などといった個人因子、学校や友人関係、家庭環境、職場環境などといった環境因子の違いにより「グレーゾーン」の特性があってもうまく環境に適応できる場合とそうでない場合など個人によって非常に差がでるかと思います。

例えば、「グレーゾーン」の特性があっても、職場に良い相談相手がいれば特性によるマイナスをカバーしてもらったり、時には、特性が強みとして発揮されるなどです。

このように、発達障害「グレーゾーン」とは、もともと発達特性を有しており、それが個人と環境の相互性によって、発達障害や健常といった状態像にまでまたがる考え方になります。

 

 


それでは、次に、著者の体験談を踏まえ、発達障害「グレーゾーン」についてお伝えします。

 

著者の体験談

著者の周囲にもこれまで発達障害があるとまではいかないけれども、「グレーゾーン」なのではないか感じた方がおりました。

こうした方に特徴的なのは、非常に分かりにくいといった印象がありながらも、困り感・生きづらさを抱えているというものです。

また、できる部分とそうでない所のギャップが激しいといった印象もあります。

できる部分が多いと、そこにつられてできない所もできるようになると思ってしまうことがあります。

もう少し具体的に見ていきましょう。

成人男性のAさんのケースです。

Aさんは、専門職として高い技能を有するといった強みがありながらも、人との会話や距離感などが難しい面があります。

ですが、対人面に困難を抱えながらも、何となく関われている、何となくやり取りできているといった印象もあります。

また、専門職として、社会の中で自分の力を発揮できている所があるため、周囲からは苦手な面が見えることは少ないのですが、問題は本人が周囲が思っている以上に、対人面で困難さを抱えているといった事実です。

幸い、Aさんの周囲にはAさんが苦手とする対人面を調整してくれる方がいるため、目立った障害とはなっていません。

このように、Aさんのケースを取ってみても分かるように、発達障害の「グレーゾーン」は、周囲の環境も大きく影響して、その特性が障壁となるかそこまで目立たないかには個々によって幅があります。

 

以上、著者の経験談も踏まえ、発達障害「グレーゾーン」について、お伝えしてきました。

発達障害「グレーゾーン」は、最近、発達障害への社会的理解が進んだこともまた影響して認識が進んでいる面もあるかと思います。

こうした「グレーゾーン」にいる方は、周囲が思っている以上に苦労されている方が多いのではないかと思います。

それは、自他ともにわかりにくさが多くあるからだと思います。

私自身、今後も発達障害まではいかないにしても(特性からくる困難さが明確でなくとも)、グレーな部分がある人への理解も深めていきながら、発達の多様性への視点をさらに磨いていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

林寧哲・OMgray事務局(監修)(2020)大人の発達障害 グレーゾーンの人たち.講談社.

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