ADHD(注意欠如/多動性)とは、多動性・衝動性・不注意を主な特徴としています。
ADHDにも多動性・衝動性が強くでるタイプ、不注意が強くでるタイプ、両者の特徴が混ざっている混合型など様々なタイプがあります。
また、ADHDや自閉症など様々な発達障害は連続体(スペクトラム)であり、他の発達障害との併存も多くあるため、状態像も多様です。
こうした多様な状態がある中で、ADHD児への対応で基本とする考え方があります。
著者は長年、療育現場で発達に躓きのあるお子さんたちと関わってきていますが、その中に、ADHDのお子さんたちもおります。
そこで今回は、著者の療育体験も踏まえ、ADHD児への基本対応について大切な視点をお伝えします。
今回参照する資料は、「最新版 真っ先に読むADHDの本:落ち着きがない、忘れ物が多い、待つのが苦手な子のために」です。
ADHD児への基本対応について
著者の中では以下の5つの基本対応が記載されています。
作戦① 注意する回数を減らす
作戦② 目標を決める
作戦③ スケジュールを決める
作戦④ ごほうび制でやる気を引き出す
作戦⑤ 成功体験で自己肯定感を育てる
それでは5つそれぞれについて引用していきながら、著者の体験談や意見などをお伝えします。
作戦① 注意する回数を減らす
ADHD児はその発達特性から、集団から逸脱する行動、ルールを逸脱する行動が目立つことがあります。
もちろん、こうした特性は裏を返すと強みにもなりますが、一方で叱責される可能性も高めてしまいます。
ADHD児への対応でやってはいけない対応の代表として、叱責を繰り返すことがあります。
著者もこれまでのADHD児との関わりで、非常に自分に自信のないお子さんたちが多くおりました。
まずは、注意や叱責を減らし、子どもの良いところに目を向けていく必要があります。
関連記事:「ADHD児への療育の大切さ-不適切な関わりをやめるだけで子どもは変わる-」
作戦② 目標を決める
単純な目標から始めると良いです。ADHD児は注意を持続することが難しく、他のことに興味や関心が移ってしまうことが多くあります。
しかし、興味あることやわかりやすい明確な目標があると、高い集中力と行動力を発揮することがあります。
著者も、例えば片付けなどすぐにできるところ、短い時間でできるところから、スタートするとうまくいくことがあります。
例えば、よくやる片付けに遊びを取り入れることがあります。大人とどちらが多く物を片付けることができたか勝負です!
これはやる気を引き起こすには最適な短時間での勝負ですので、ADHD児にはぴったりはまることがあります。
もちろん、楽しく遊べたという前提があっての話です。
これを何度が繰り返したことで、子どもの方から片付けを始める場面が多くなりました。
作戦③ スケジュールを決める
ADHD児は実行機能の困難さなどからスケジュール管理が苦手だとされています。
つまり、目標を決め、そこに注意を維持し、最後までやり通す力に困難さがあります。
著者は、療育現場でADHD児のお子さんも含め、すべて子どもに早めにその日のスケジュールを伝えるようにしています。そして、ホワイトボードなどにその日の予定を書いておきます。
大切なことは、無理のないスケジュールを組むことと、日々の繰り返しによる習慣化です。
著者がみてきた子どもの中には、初めはスケジュールも頭に入らず、様々なことに注意がいってしまい、結局、やりたいことが何一つできなかった子が、スタッフと事前にその日の予定を立て実行するということを繰り返した結果、自分でスケジュールを立てることができるようになった子もおります。
作戦④ ごほうび制でやる気を引き出す
行動療法では正の行動に報酬を与え、望ましい行動を強化するという考え方があります。
ADHD児は、特性ゆえに、目標に対する結果が見えないとやる気を引き起こすことが難しいことがあります。
特にやりたくないことなどは大人が指摘しても動こうとする様子が少なく、ずるずる後手に回ってしまうことが多いです。
このような時に活用できるのが、報酬(トークン)です。報酬は、言葉によるものやポイント制のシールなどがあります。
著者は、シールなどは特に活用していませんが、良き行動がでた直後にすかさず褒めるようにしています。
こうした対応の継続が子どもたちのやる気を引き出すことを、現場を通して実感しています。
作戦⑤ 成功体験で自己肯定感を育てる
冒頭にも述べましたが、ADHD児は責されることが多く、そのため、自己肯定感が低いというケースがよくあります。
これまでお伝えしてきた作戦①~作戦④までを継続して実行し、成功体験を積み重ねていけば自己肯定感は必然的に高まってくるかと思います。
以上が、著書を参照しながら、ADHD児への基本対応5つを見てきました。
著者も学生時代からADHDへの対応として上記の内容は何となく理解していたつもりでも、実践はまた別物だと感じます。
それは、特性を理解して対応するということは自らの行動や思考を編集していくことや、関わる上での気持ちのエネルギーが必要で、また、結果も長期の関わりを通してしか見えてこないことが多いからです。
今後も、日々の実践を大切に、子どもたちの関わりから多くのことを学んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
司馬理英子(2020)最新版 真っ先に読むADHDの本:落ち着きがない、忘れ物が多い、待つのが苦手な子のために.主婦の友社.