著者はこれまでの療育経験を通して、様々な発達障害のある子どもや大人と関わってきました。
その中には、自閉症の方や知的障害の方も多くいました。両者は、精神医学界(DSM-5)では、神経発達症/神経発達障害の中に包含されています。
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しかし、日本では、法制度や教育の進捗などから、狭義の発達障害として、自閉症やADHD、学習障害などを指し、広義には知的障害を含むことが多いとされています。
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DSM-5によると自閉症も知的障害も発達障害ということになりますが、両者には似ている特徴も見れます。
例えば、知的な遅れがあれば、認知や言語・社会性などの全般的な発達がゆっくりであるため、こうした能力は社会的認知などに影響します。つまり、自閉症の特徴である、心の理論などにも影響するということが推測できます。
実際に、著者が勤めた療育現場で、両者(自閉症・知的障害)が対人面やコミュニケーションの困難さを持っているという似た特徴が見られました。
そこで、今回は、著者の療育経験なども踏まえ、自閉症と知的障害の関係についてお伝えします。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.」です。
自閉症と知的障害の関係について
以下に著書を引用します。
発達障害の早期療育の現場に長くいて、詳細に観察していると、少なくとも中度(IQで概ね50未満)の知的障害がある人では、ほぼ全例で、多少なりとも自閉症スペクトラムの特徴があると見てよいと思われます。軽度(IQで概ね50~70程度)の知的障害がある人では、IQが上がるにつれて自閉症スペクトラムの特徴を持つ人の割合は減少すると思われますが、それでも過半数は、自閉症スペクトラムの特徴がゼロとは言えない状態です。
著書の内容から、知能指数(IQ)が中度未満の方には、自閉症スペクトラムの特徴が多く見られるということ、そして、知能指数(IQ)が軽度の方では自閉的な特徴は減少するも、その特徴はゼロにはならないということです。
つまり、知能指数(IQ)と自閉症の特徴は少なからず関連するということになります。
長年療育現場に勤める著者も、知的障害の方と自閉的の方には似たような特徴があると感じますし、知能指数とも関連性があると思います。
それでは、次に、著者がこうした関連性を感じた経験談についてお伝えします。
著者の体験談
著者は療育現場で、発達に躓きのある子どもたちに療育をする仕事をしています。
その中には、自閉症のお子さん、知的障害のお子さんも多くいます。
こうした子どもたちと関わって見て実感したのは、思いのほか両者には似た特徴が見られるということです。
例えば、ある知的障害のあるお子さんですと、お気に入りのおもちゃをいつも同じような遊び方をずっと続ける子がおり、こうした特徴は自閉症の固執行動と見て取れるようにも感じました。
他にも、遊びの途中でうまく切り替えることが難しい特徴や、その場の状況や相手の意図をうまくくみ取ることができない、何かにこだわる様子などは、知的障害と自閉症のお子さん両方に見られることもあります。
このような事例を通して、両者には似た特徴があるように思います。
特に、以前の職場では比較的重度のお子さんと関わることが多くありましたが、こうしたお子さんは自閉的な特徴(対人コミュニケーションやこだわり、感覚過敏など)が多いといった印象があります。
こうした経験を通して大切だと感じるのは、それぞれの特徴が関連するということを踏まえながら、それぞれの特徴を分けて考えるといった両方の視点を持つことだと思います。
つまり、類似する特徴を抑えながらも、背景は異なる可能性がある、そして、発達経過に伴いある特徴がより顕著になるなど時間経過に伴う理解も重要かと思います。
こうした理解の幅を広げることが背景要因も含めた支援の幅を広げることにも繋がります。
様々な発達障害はすべてが連続体で強弱があります。そして、重複も含めると様々な状態像になります。
私自身、こうした多様な人間の発達を理解できるように今後も現場での気づきとアカデミックの双方向的な理解を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2013)自閉症スペクトラム:10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.SB新書.