自閉症(自閉スペクトラム障害)は対人関係やコミュニケーションの困難さ、そして、こだわり行動を主な特徴としています。
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自閉症は、対人・コミュニケーションに困難さを抱えているため、周囲の状況を理解し自分の行動を調整したり、人に相談することに苦手さを抱えている人たちが多くいます。
著者は職業柄、子どもから成人まで、自閉症の方たちと関わる機会が多くあります。
その中で、もともと対人・コミュニケーションが苦手な自閉症の人たちが、社会の中でうまく適応するためにはどのような支援が大切かを考える機会が多くあります。
今回は、自閉症の人たちが社会の中でうまく適応していくためには、どのような能力が必要であるのかをお伝えします。
今回、参照する資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
著著の中では、社会参加に必要な能力として、「自律スキル」と「ソーシャルスキル」の2点を大切としています。それでは、それぞれ見ていきたいと思います。
社会参加に必要な能力
「自律スキル」
自律スキルというのは、自分にできることを意欲的にやるけれども、できないことは無理しない。こういう判断ができる力です。
以上が、著書の引用となります。
自律というと、一見すると、自分の力でやっていくというイメージがありますが、そうではなく、できないことも判断できるということが大切なポイントです。
そのためには、多くの経験を重ねながら自己分析をしていくことが重要であり、その中で、うまくできないところは無理をしない、どういったことなら自分はできるのか・頑張れるのかを経験を通して判断できるようになることが大切です。
「ソーシャルスキル」
ソーシャルスキルというのは、自分にできないと思ったことを誰かに相談する力と、人として最低限守るべきルールは守るという力です。
以上が、著書の引用となります。
社会の中には最低限守らないといけないルールがあります。こうしたルールを理解していきながら、人に相談する力が非常に大切になってきます。
前述した、自律スキルでは、できないことは無理しないと判断できる力も大切だと述べました。そのためには、できないことを他者に相談することが重要になってきます。
相談することで相手に自分のことを理解してもらうきっかけになります。また、仕事では相談できる良き上司・仲間がいることがとても大切です。
まとめ
これら2点を整理すると以下になります(著書を引用)。
まとめると、一人でできないことをできないと判断し、他者に相談する力ということになります。これは成人期の社会適応にとって最低限必要なスキルです。
自閉症の方(自閉症でない方にも同様のことが言えます)が社会参加に必要なことは、できること・できないことを自己分析する力と、できないことなどを人に相談する力が必要となります。
著者のコメント
前述しましたが、著者も仕事上で自閉症の子どもや成人の方と関わることが多くあります。
自閉症の子どもたちには、社会(人と人とが関わる)には、一定のルールがあることをわかりやすく示すことが大切です。自閉症児は、一度、ルールを理解するとしっかりと守ろうとする強みもあります。
また、得意・不得意の理解などは、なかなか学童期頃はそこまでの自己理解が深まっていない傾向もありますが、うまくいかないことに対して、大人が関わることでうまくいったという経験を重ねていけるような関わりを大切にしています。
こうした関わりを重ねることで、困った時に、子どもからの発信も増えていきます。つまり、子どもから相談してくるようになります。
成人の方との関わりで難しいと感じるのは、非常にまじめな方が多いので、上司や先輩の指示は自分ができなくても許容しやろうとしてしまい空回りしてしまうケースです。
さらに、自分からの発信が乏しいため、何に困っているのか?など判断が難しいことがあります。
そのため、私自身、できるだけ彼らとコミュニケーションを取りながら、困っている点やうまくいっている点・できる点などを話すようにしています。
日本社会は、何でも自分のことは自分でやるように教育されている面が強い印象があります。
しかし、自分は何ができて・できないのかを判断する力、そして、困った時に人に相談する力が、社会の中で生きていくためにはとても大切です。
特に、こうした理解や発信が難しいのが自閉症の人たちには多くいます。
成人期までを見据えて、「自律スキル」や「ソーシャルスキル」といった点にも力を入れながら、今後も日々の療育を頑張っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.