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療育の専門性とは?‐専門職としての技術について‐

投稿日:2022年3月27日 更新日:

日々の療育現場で、子どもたちと関わっていると、理解や支援の面で多くの疑問や関わりでの難しさを感じることがあります。

特に、発達に躓きのあるお子さんたちは、一般的な発達経路をたどる定型児とは異なり、凸凹が多く見られます。

もちろん、子ども1人ひとり多様な発達をしますので、一括りにはできないと思いますが、実際に私の療育現場での経験から言えることは、定型児よりも特別な配慮や支援が必要だという実感です。

療育をしていく上で、そこに関わるスタッフが持つ疑問として、「療育の専門性とは一体何か?」ということがあるかと思います。

「何となく子どもの気持ちがわかった」「私の長年の経験から○○のようなことが言えると思う」など、日々の関わりから、そして、長年の関わりから言えることもあるかもしれません。

しかし、それだけでは、不十分なことが多くあるかと思います。それは、それを聞いた周囲の人間が納得できるかだと思います。

そこで、今回は、療育の専門性とは何かについてお伝えしていこうと思います。併せて私の体験談なども交えていきます。

今回参考にする資料として、「育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの」を参照していきたいと思います。

 

療育の専門性とは?

著著の中では次のように専門性について記載されています。

自分の実践を「ことば」に置き換える努力

 

一般的に、子どもたちの「気持ち」を読みとる能力は「保育者や教育者としてのカン・コツ」とも呼ばれるものかもしれません。(略)

でも、もし、子どもの気持ちをどうやって読み取ったかを「言語化」できたとしたら、あるいは、何を読み取ったかを「言葉で伝える」ことができれば、後輩たちは、より適切な関わりを見出し、あるいは、同じ過ちを繰り返すことなく指導にあたれるでしょう。

つまり、実践を「ことば」にしていきながら(その努力をしていく)、それを他者と共有していき、「言語化」の過程を発展させていくことが療育の専門性には必要だということです。

私自身も、療育の専門性といっても様々な要素があるかと思いますが、中でも「ことば」にする力、しようとする力はとても大切だと思います。

発達に凸凹もある子どもたちは、感覚や運動・認知や言語、社会や情動など様々な面に偏りが見られます。こうした能力に凸凹があるため、表出される行動や気持ちも非常に多様です。

つまり、専門性を高めるためには、様々な能力を理解しながら、表出される行動のどの面に着目したのかを「言語化」し、一緒に関わるスタッフもそれについてどのように感じたのかを「共有」し、理解を発展させていくことが大切です。

もちろん豊富な経験のあるスタッフのカンやコツも必要です。ですが、こうしたスタッフが独り歩きしてしまうことは現場の専門性の低下に繋がってしまうように思います。

新人スタッフの素朴な疑問に対してもしっかりと言語化し、共有していく姿勢が療育の専門性には重要です。

 

著者の体験談

次に「言語化」することで得られた利点を私の体験談をもとに紹介していきたいと思います。

現在私がいる放課後等デイサービスには、複数のスタッフが関わっています。それぞれバックボーンや考え方なども違うため、子どもの関わり方、理解の仕方などにもズレが生じます。

多少のズレは軌道修正可能ですので、話し合う時間を取ること、それぞれの考えを尊重し、より良い理解の仕方を見出すというスタンスさえ崩れなければうまく行くことが多くあります。

ですが、困難な事例もあります。

それは、関わるスタッフが出会ったことのない大変なケース、理解の仕方に迷走してしまうような事例です。

私もこのような事例は毎年のように出会います!こうした事例に対して、まずはその子の行動や心理を「言語化」することを大切にしています。

「言語化」していく中で、そこに関わる1人ひとりのスタッフの経験や感覚、そして、知識が生きてきます。

例えば、私は大学院で発達障害学と発達心理学を専門に勉強・研究していた時期があります。

こうした専門的知識から見て、子どもの行動や心理がどのように説明できるのかを、経験や感覚と織り交ぜながら「言語化」することを心掛けています。

困難な事例において、自分なりに知識も交えた考察を他のスタッフに伝えると、子どもの理解が進んだ、支援が進捗したという経験が何度もありました!

もちろん、理解と言っても仮説になりますが、仮説を立てて実行することは漠然と関わるよりも効果的で専門職と名乗る以上は必要不可欠なことかと思います。

事例の具体的な内容などは、他の記事に複数記載しておりますので、もし興味があればお読みいただければ幸いです。

療育の専門性は、様々な要素から構成されているかと思います。

その中でも、自分の実践や経験を「ことば」にすることはとても大切です。

私自身、今後も、日々の療育現場から感じる疑問や発見などを「ことば」にし、他のスタッフと「共有」していく中でさらに専門性を磨いていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.

-専門性, 療育

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