現場で療育をしていると、キレやすい、かんしゃくをよく起こす、すぐにイライラする、人とよく口論になる、ルールや規範に反抗するといった子どもと関わることがあります。
こうした行動の背景には、生育環境の違い、発達障害など発達特性があるなど様々な要因があるとされています。
また、こうしたキレやすい子どもたちの中には、反抗挑戦症/反抗挑戦性障害の人たちがいると考えられています。
今回は、そもそも反抗挑戦症/反抗挑戦性障害とは何か?ということに対して、医学的な定義についてお伝えしていきながら、私自身の療育現場での学びついてお伝えしていこうと思います。
今回参考にする資料として、「原田謙(2019)「キレる」はこころのSOS:発達障害の二次障害の理解から.星和書店.」を参照していきたいと思います。
反抗挑戦症/反抗挑戦性障害について
それでは最初に反抗挑戦症/反抗挑戦性障害について簡単にご説明致します(DSM-5より)。
反応挑戦症の本質的特徴は、「頻回で持続する怒りやイライラした気分、好戦的/挑発的行動、あるいは執念深さといった行動様式」であり、「典型的には重篤な特性が少なく、人や動物への攻撃性、所有物の破壊、強盗や詐欺などを含まない。さらに、素行症には含まれない、感情の調整不全(怒りやイライラした気分)の問題を含む」とされています。
診断基準:
1.怒りやイライラした気分:かんしゃくを起こす、イライラする、怒る
2.好戦的/挑発的行動:権威ある人や大人と口論する、要求や規則に反抗したり拒否する、わざと人をいらだたせる、自分の失敗や不作法を他人のせいにする
3.意地悪で執念深い
以上の3つのカテゴリーの8つの行動が挙げられています。
これらの行動が、きょうだい以外の人間との関係の中で、5歳以上なら週に1回以上、少なくとも6ヶ月間にわたって、4つ以上認められるときに、診断される規定になっています。
以上が、反抗挑戦症/反抗挑戦性障害の定義になります。
こうした反抗挑戦症/反抗挑戦性障害がより深刻化してくると、素行症に繋がるされています。
素行症について
以下に素行症についても簡単に説明致します(DSM-5より)。
素行症の定義は、「他人の基本的人権または、社会的規範を侵略することが反復し持続する行動様式」です。
診断基準
1.人や動物に対する攻撃性:いじめ・脅迫、身体的な喧嘩、武器の使用、リンチ、動物虐待、強盗、強姦
2.所有物の破壊:放火、器物破損
3.嘘や窃盗:不法侵入、人を騙す嘘をつく、強盗
4.重大な規則違反:夜間の外出、無断外泊・家出、怠学
以上の4つのカテゴリーの15の行動が挙げられています。
これらの行動が1年間に3項目以上認められると素行症と診断される規定になっています。
以上が、素行症の定義になります。
著者の体験談
それでは、次にキレやすいなどを特徴とした子どもたちとの関わりから、私自身の療育現場で学んだことについてお伝えしていこうと思います。
私は現在、放課後等デイサービスで療育をしています。小学生を対象とした事業であり、放課後子どもたちを預かっています。
そこで、支援していく上で非常に関わりの難しい子どもたちの中に、感情の起伏が激しくすぐにキレる、大人や他児とすぐに口論になる、ルールを破ろうとするなどを特徴としたお子さんたちがいました(います)。
これまで説明してきた反抗挑戦症/反抗挑戦性障害といった診断を受けているわけではありませんが、特徴として非常に類似している点が多くあるように思います。
私自身、最初にこうした子どもたちと関わる際には、暴言をすぐにとめようとしたり、キレた行動を直ぐに抑えようとしたりなど、良くない行動の背景を考えることなくすぐに対応し制止しようとしていました。
しかし、こうした対応を継続しても子どもたちの行動は改善されることなく、関わる頻度の多いスタッフが精神的にダメージを受ける状態が長く続いていたように思います。
反抗挑戦症/反抗挑戦性障害というものの用語自体は昔から知ってはいたものの、詳しく調べたのはわりと最近のことでした。調べれば調べるほど、キレやすい現場の子どもたちの行動とリンクする箇所が多く見つかってきました。
これを機に、やはり自分の感覚や経験だけに依存するのには限界があり、他の視点(専門的な視点)を学びながら行動の背景をじっくり考えることがとても大切だという思いが強くなりました。
今では、こうしたキレやすい子どもたちには少し余裕をもって関わることができるようになったと思います。それは、問題行動には様々な背景があり、彼らが、感情のコントロールや感情理解が苦手であり、必ずしも意図してやりたいと思った行動ではないということが実感としてわかってきたからです。
以上が現場での体験を通して学んだことになります。
反抗挑戦症/反抗挑戦性障害は、非常に対応が難しい障害だと感じます。
また、障害がエスカレートすることで素行症へと発展することもあるため、早期の理解と支援が必要不可欠です。
私自身、まだまだ勉強中ですが、こうした子どもへの支援もできるように現場での経験をもとに学びを深めていきたいと思います。
関連記事として、「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える」を載せます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
アメリカ精神医学会 高橋三郎・大野裕(監訳)(2014)DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院.
原田謙(2019)「キレる」はこころのSOS:発達障害の二次障害の理解から.星和書店.