発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

成果 療育

療育の成果について-他害行動について-

投稿日:2022年2月9日 更新日:

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。

さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。

そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。

 

今回、参考となる資料として「行動障害について太田ステージから考える」になります。

 

 

スポンサーリンク

療育の成果について-他害行動について-

Aちゃんの事例→他害行動が減った例

小学校5年生のAちゃんは、私が所属している放課後等デイサービスに来ており、一年生の頃から関わりのあるお子さんで、とても可愛らしく元気で、一度気を許すと人懐っこいところがあります。

こうした性格の一方、一年生の頃は、他児を叩く行動などが頻繁にあり、他児とトラブルになることがよくありました。

他児を叩く状況としては、Aちゃんがイライラしている、他児が急に近づいてくる、他児との関わりでうまくいかない時などによく起こっていました。言葉で「いやだ!」などと伝える前に手が出てしまうという感じです。

この時のAちゃんは、状況の理解が難しく、他児の行動の意味の理解も困難で、自分の気持ちをコントロールすることが非常に難しい状況でした。

我々スタッフは、Aちゃんに対して、信頼できる大人を担当につけ、他児との関わり方をコーディネートしたり、トラブルになりやすい他児と環境を分けるなどの対応を取ってきました。

さらに、Aちゃんがイライラした時など、一度クールダウンをした後で、気持ちを聞き取ったり、言葉での伝え方をモデリングするなどの対応もとってきました。また、Aちゃんの好む遊びの中で、他者とうまく関わることができたという体験も可能な限り多くつくってきました。

こうした対応を継続した結果、少しずつではありますが、他害行動は減っていきました。

低学年時に手を出す行動から、泣いて大人に伝える、我慢して別の行動をする、気分転換をする、自分の気持ちを紙に書いて伝えるなどの様々な変化が出てきました。

現在、5年生のAちゃんには、他害行動はほとんどなくなりました。信頼して遊べる大人の数も増え、遊びのレパートリーも増え、そして何より仲の良い友達ができました。

こうして見違える進歩を遂げたAちゃんですが、こうした変化は過去をじっくりと遡らないと見えてこないことかと思います。

 


他害行動はそれに向き合うスタッフから見て非常に対応が難しいものです。精神的なエネルギーも非常に多く使います。

おそらく日々関わっているスタッフや、特に一番身近で関わるご両親などは日々の関わりで精一杯かと思います。

しかし、長いスパンをかけて支援を行うことで良き方向へと変化を遂げることが可能かと思います。

こうした、変化の中で、認知の発達、社会性の発達、情動の発達など様々な変化が相互に連動しながら成長しているのを感じます。

Aちゃん自身も、状況の理解が進み、他者との関わりもうまくなり、自分の気持ちのコントロールも上手になりました。

子どもたちの成長は個々によって非常に違います。一人ひとりの成長とじっくり向き合いながら今後も日々の現場での実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

スポンサーリンク

-成果, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

療育の成果について-スケジュール管理の視点から-

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。 さらに、成果(変化 …

療育(発達支援)経験から学んだこと:発達を理解することの大切さ

療育(発達支援)とは、障害のあるお子さんやその可能性のあるお子さんの発達のつまずきや特性などを理解し、自立や社会参加に向けて支援を行うことをいいます。 私が以前勤めていた療育施設の園長先生は、療育のこ …

発達支援で大切なこと-生活療法的視点について考える-

発達支援(療育)では、日々の子どもたちの困り感・生きづらさを支えることがとても大切です。 関連記事:「発達障害の「生きづらさ」について-療育経験を通して考える-」 それは、発達障害を生活障害と捉えなお …

【発達障害児への療育で大切なこと】全般的な行動の遅さへの対応

発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。 著者は …

【療育で大切な5つの専門性について】療育で成果を出すために必要なこと

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。 関わりの長い子どもであると小学校1~6年生までの小学校時代を継続して見てきています。   それでは、療育で成果を出す …