療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。
そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
療育の成果について-ごっこ遊びを通したイメージの共有-
A君の例→ごっこ遊びを通してイメージを共有することが増えた例
小学校4年生のA君は低学年時からごっこ遊びが好きなお子さんでした。
ごっこ遊びの中には、キャンプごっこ、買い物ごっこ、ラーメン屋ごっこ、ドライブごっこなど様々なものがあり、A君から「やりたい!」と提案してきます。
A君が低学年時の頃は、A君が思い描くイメージと関わる大人(スタッフ)のイメージがなかなかかみ合わずにうまく遊びが進まないことが多くありました。
それも、A君が思い描くイメージのスケールがとても壮大で、大人がそれに応えることが難しかったのだと思います。それに加え、A君はイメージしたものと現実とのギャップのズレが大きくなってしまうことも、A君と大人のズレの要因としてありました。
A君はごっこ遊びに必要なものを大人に作って欲しいと要求することが多く、完成品を見て違うと言ったり、一度、細かい部分を気にすると何度も修正や作り直そうとすることも多くありました。
また、思い通りにいかないと、イライラしたり、かんしゃくを起こすこともよくありました。
私たちスタッフは、A君の頭の中のイメージを理解するために、試行錯誤を重ねながら、A君の言葉1つ1つに耳を傾けながら、遊びを進めました。
つまり、何か特別な対応を取ったのではなく、丁寧に関わり続けたの一言に尽きるかと思います。そして、A君の「○○ごっこをして遊びたい!」といった、思いを大切にしてきました。
こうした対応を重ねることで、低学年時にはうまくかみ合うことが多くはなかったA君とのごっこ遊びも、A君が求めているイメージが少しずつ理解できるようになり、かみ合うことも増えていきました。
これには、A君自身もごっこ遊びを通して、大人とイメージを共有することで、かみ合った経験、ズレ経験などをもとに、試行錯誤を繰り返したことも成長の大きな要因としてあるかと思います。
つまり、A君自身が、他者が持つイメージを理解する力がついてきたともいえます。
現在のA君は、変わらずごっこ遊びを楽しんでいます!もちろんイメージが大人とかみ合わないこともありますが、以前とは違い、大人が提案したことなども「いいね!」など、大人のイメージを理解する場面が増えてきたり、イメージがかみ合わない場合にも、イライラする様子は少なくなりました。
当初は、A君はまだ低学年ということもあり、生活経験の少なさからくる認知発達の未成熟さや、大人との共有体験の少なさなどがあったかと思いますが、徐々に遊びを基点とした生活経験を重ねることで、これらの能力が高まったのだと思います。
一見すると、普段ごっこ遊びの中で、その意味などを考える機会は少ないのですが、こうした事例を通して遊びの意味を掘り下げることも、子どもたちの成長を振り返るためには必要かと思います。
それと同時に、支援者側の関わりの意味もより深く見えてくると感じます。
今後も日々の療育を大切にしていきながら、自分たちの行為の意味や、子どもたちの成長を振り返ることも行っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。