〝実行機能”とは、簡単に言えば物事を〝やり遂げる力”のことを言います。
一方で、〝ワーキングメモリ”とは、〝脳のメモ帳”と言われています。
両者の機能は様々な面で重なる所があると考えられています。
それでは、実行機能とワーキングメモリには関連性が深いと言われていますが、両者にはどのような関係があるのでしょうか?
そこで、今回は、実行機能とワーキングメモリの関係について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「湯澤正通・湯澤美紀(編著)(2014)ワーキングメモリと教育.北大路書房.」です。
実行機能とは
実行機能(executive function)とは、課題目標(task goal)に即して我々の思考と行動を管理統制する汎用的制御のメカニズムであり、しばしば、脳の前頭葉機能との関連が指摘されています。
多くの研究において、実行機能が重視される理由として、それが、人間の知的活動を根本から支えるだけでなく、自己制御(self-control)や自己調整(self-regulation)と関連を持ち、そのため、その働きが私たちの日常生活の様々な場面で大きな影響を持つからだと考えられています。
実行機能に関わる機能としては、更新(updating)、シフティング(shifting)、抑制(inhibition)などがあるとされており、研究者によって意味するところも異なります。
実行機能は非常に抽象的な言葉ですが、私たちが目標を定め、それに向けて計画を立てて実行するなど、多くの場面で使用する機能です。
実行機能について、発達障害との関連で「ADHDの実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での実践を通して考える」や「自閉症の実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での困難事例を通して考える」に記載しています。
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリ(working memory)とは、様々な課題遂行中に一時的に必要となる記憶、特に、そうした記憶の働き(機能)や仕組み(メカニズム)、そして、それらを支えている構造(システム)を指します。
ワーキングメモリの機能として、〝言語性ワーキングメモリ(言語的短期記憶)″と〝視空間性ワーキングメモリ(視空間的短期記憶)″とがあり、両者を統合する司令塔的役割が〝中央実行系″と言われています。
ワーキングメモリについて詳しくは、「ワーキングメモリの概要:活用されているモデル・学習や発達障害との関連性について」に記載しています。
実行機能とワーキングメモリの関係
実行機能とワーキングメモリは、同じ文脈で用いされることの多い概念ですが、両者の関係については、研究者によって捉え方が異なります。
以下に、よく知られている2つの視点について記載します(以下、著書を参考に構成)。
1つ目が、実行機能をワーキングメモリの一部とする見方です。
これは、簡単にいってしまうと、実行機能をワーキングメモリの下位要素の中央実行系の機能として捉える立場になります。
認知心理学や社会心理学の領域でこの枠組みを使用する研究者が多いとされています。
2つ目として、ワーキングメモリを実行機能の一部とする見方です(1つ目と逆になります)。
これは、実行機能の複数の構成要素の一つにワーキングメモリを位置付けるというものになります。
そして、発達の分野でこの枠組みを使用する研究者が多いとされています。
上記の2つの観点は、一見矛盾しており、相容れないもののように思われますが、この矛盾は、2つの観点における理論的背景と、用語の使い方の差に起因すると考えることで解消すると言われています。
研究や現場などで理論を使用する際に、どの立場から使用しているのかという視点をはっきりと持つことで、他の考え方を学ぶ時などに、これまで自分が持っていた視点と組み合わせることで、視野を広げることにも繋がります。
これは、長年現場でやってきたからこそ言えることでもあり、自分の考えの根拠を明確にすることで(理論などの活用により)、相手の考えが理解しやすくなったり、自分の意見の説明のしやすさにも繋がります。
今後も、自分の思考を広げていけるように、様々な発達に関連する理論を学んでいきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ワーキングメモリに関するお勧め書籍紹介
関連記事:「ワーキングメモリに関するおすすめ本【中級編】」
湯澤正通・湯澤美紀(編著)(2014)ワーキングメモリと教育.北大路書房.