
発達障害児の支援をしていると、他者と視線を合わせることがうまくできない子どもが少なからずいます。
例えば、相手の目を見ながら挨拶ができない、相手の目を見ながら会話を進めることができない、相手が重要な話をしていても相手の目を見ない(どこか違う方を見ている)など様々あります。
こうした行為は、時と場合によっては相手との関係性を悪くすることに繋がることもあります。
〝相手の目を見ない″ことへの対応として、〝ソーシャルスキルトレーニング″が一つの方法としてあります。
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
〝ソーシャルスキルトレーニング″は、発達障害児支援において非常によく活用されています。
それでは、ソーシャルスキルで大切な視線の共有の仕方にはどのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキルで大切な視線の共有の仕方について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキルで大切な視線の共有の仕方】相手の目を見ない発達障害児への対応方法
以下の順番でお伝えしていきます。
1.〝相手の目を見ない″ことに関して事前に確認する点
2.〝相手の目を見ない″ことに関して日常でできる原因別対応方法
1.〝相手の目を見ない″ことに関して事前に確認する点
著書には、〝相手の目を見ない″ことに関してまず確認しておくべき3点が記載されています(以下、著書引用)。
視線があうことは少ないですか。
人の輪のなかに入るのは苦手ですか。
人と話をするのは苦手ですか。
以上の3点を確認しておくことで、〝相手の目を見ない″ことに関しての原因とそれに対する対応方法が紐づいてきます。
例えば、著書にあるように、そもそも視線共有が弱い、他者との関わりを自ら求めることに苦手さがある、人とコミュニケーションをとることが苦手などに原因があるのかもしれません。
著者の療育現場では、特に自閉症児において、相手の目を見ないケースがよく見られます。
相手の目を見ないケースも子どもによって特徴があり、例えば、人よりも物に関心があり他者の視線をそもそも追うことが少ない、人の表情のどの部分に目を向ければ良いか分からない、集団に入ると情報量の多さからどこに視線を向ければ良いかわからなくなるなど様々な特徴があるように思います。
一方で、自分の興味関心について話している時など、相手が聞いているかどうか相手の目を食い入るようにのぞき込む子どももいます。
同じ自閉症児でも特徴は異なるのだと現場を通して感じることが多くあります。
2.〝相手の目を見ない″ことに関して日常でできる原因別対応方法
著書には、〝相手の目を見ない″ことに関して、躓いている4つの原因とそれに対する対応方法が記載されています(以下、著書引用)。
1 自分をコントロールする力が弱い
2 自尊心が育っていない
3 感覚面の偏り
4 相手の気持ちを読み取りにくい
それでは、次に以上の4点について、著書の内容を踏まえながら具体的に見ていきます。
1 自分をコントロールする力が弱い
自己コントロール力が弱いと、相手の目や顔に本人が意識を向けることが難しくなる場合があります。
支援方法としては、話をする時・聞くときなど、相手の顔や目を見て話す・聞くということを伝えていく必要があります
にらめっこ遊びなど、表情遊びを活用して、人の顔に意識を向ける活動を取り入れても良いかもしれません。
著者の療育現場では、著者自身が手本となり、子どもに話をする際には、子どもの目を見て話し、しっかりと反応を返すようにしています。
また、あまり過度に視線を合わせることを促さないようにしており、楽しい活動・会話での興味の共有の際に、表情・視線を合わせることを大切にしています。
その理由としては、発達障害児、中でも自閉症児においては、対人不安が強い子どももいるため、過度な視線共有の促しは逆効果になる場合もあると考えているからです。
2 自尊心が育っていない
自尊心が低い子どもの中には、相手の反応を過度に気にすることもあり(〝自分はうまく会話ができているのだろうか?″など)、その結果として、うまく視線を合わせることができない場合もあります。
支援方法としては、子どものコミュニケーションの仕方に強く口出しせずに、少しでも良くできた所を褒めるように心がける必要があります。
著者の療育現場では、自信がない子どもの場合には、相手の顔・目を見れない様子はよく見受けられます。
そのため、まずはリラックスして安心して話ができる信頼関係の構築に加えて、他者との会話が楽しいものであるという経験を作っていくことが重要だと感じています。
子どもの中に少しずつ自信が出てくると、子どもは相手の顔・目を見ながらコミュニケーションする様子が増えていくように思います。
3 感覚面の偏り
集団における騒がしい人の声など、感覚(聴覚)の問題が影響して、苦手な感覚を回避するために視線を合わせないようにする場合があります。
支援方法としては、無理に苦手な感覚のある環境への参加を促すことは避け、まずは安心できる環境を整えていく必要があります。
著者の療育現場では、苦手な感覚の多い環境よりも、安心して過ごせる環境の方がはるかに他者と視線を合わせてコミュニケーションする様子が多いと感じています。
そのため、子どもが苦手とする感覚を減らし、好ましい感覚刺激を増やす環境調整が大切だと感じています。
4 相手の気持ちを読み取りにくい
相手の気持ちの読み取りが弱いことは、相手の表情に目を向けることの苦手さとも関連しています。
支援方法としては、表情認知に関する絵カードの活用、相手の目を見て話す・聞くことの利点(逆の場合のデメリットも含め)などを言葉で伝える方法があります。
著者の療育現場では、日頃から人の心の状態を言葉にして子どもに伝えることを意識しています。
こうした日々の積み重ねが時間をかけて、子どもが他者の表情を通して内面を理解する力を育んでいくのだと思います。
実際に、以前は他者の表情をそれほど見ていなかった子どもが、他者の表情から内面を推測する言葉が徐々に増えていったケースは思いのほか多いと感じています。
以上、【ソーシャルスキルで大切な視線の共有の仕方】相手の目を見ない発達障害児への対応方法について見てきました。
今回見てきた4つの原因別対応方法は、ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因と関連づいています。
関連記事:「【ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因とは】療育経験を通して考える」
発達障害、中でも、自閉症の人には相手の目を見ない、視線が合わないことはよくあります。
大切なことは、視線が合わないことの背景を考えながら、子どもに合った関わり方を考えていくことだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で見られる子どもたちの様々な行動について、背景を探る目と支援の引き出しを増やしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
視線の共有の難しさに関して関連する記事を以下で紹介しています。
関連記事:「【なぜ自閉症の人は人と目が合わないのか?】自閉症児・者の視線の特徴について考える」
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.