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【境界知能の人に見られやすい3つの課題について】療育経験を通して考える

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境界知能″とは、〝知的機能が平均以下であり、かつ「知的障害」に該当しない状態″の人たちのことを指します。

IQ(知能指数)で言うと、70~84のゾーンに当たります(71~85と記載されている文献もあります)。

境界知能の人たちは、概ね小学校2~3年生頃から困難さが生じやすいと考えられています。

そして、その後、様々な課題が出てくると言われています。

 

それでは、境界知能の人に見られやすい課題とは、一体どのようなものなのでしょうか?

 

そこで、今回は、境界知能の人に見られやすい3つの課題について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.」です。

 

 

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境界知能の人に見られやすい3つの課題について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

境界知能の人には大きく3つの課題が生じやすいことを理解しました。それは①学校生活での困難、②メンタルヘルスの問題、そして③就労での困難です。ほかにも友だち付き合いや金銭管理などさまざまな課題がありますが、主要な課題はこの3つです。

 

著書の内容から、〝境界知能の人に見られやすい3つの課題″とは、①学校生活での困難、②メンタルヘルスの問題、③就労での困難だと記載されています。

そして、①~③の課題は連動しているとも記載されています。

例えば、①学校生活がうまくいかないと→②メンタルヘルスの問題が生じる可能性が高まりますし、①学校生活での困難さが持続すれば→③就労での困難さに繋がる可能性も高まると言えます。

境界知能の人には、様々な課題が生じやすい中でも、以上の3つが主要な課題のため、この3つについての躓きをおさえておく必要があります。

 

 

著者の経験談

ここから先は、著者が関わることのあった境界知能の人(軽度知的障害の可能性もあり)の例を取り上げて見ていきます。

 

事例:Aさんのケース(境界知能の知的水準)

Aさんには、幼少期から運動・認知・言語・社会性など様々な面において、定型発達児よりも遅れが見られていました。

一方で、思春期以降になるまで、際立った躓きは見られていませんでした。

もちろん、今から過去を回想すると、様々な躓きの前兆が見られていたことは確かだった思います。

しかし、当時のAさんと関わりのあった周囲の人たちから見て、顕著な躓きを実感することは少なかったと言えます。

最初の躓きは、やはり、学習面の遅れです。

これまで、Aさんの独力でなんとかやりくりしていた勉強がとうとう限界に達したのだと思います。

逆に、それまでAさんが独力でやれていた勉強は、本質的な理解ではなく、パターン学習だったと言えます。

そのため、応用力やより抽象的な思考が必要になる中学生以降になると、完全に勉強についていくことが難しくなりました。

そして、こうした学習面の遅れに引き続き、メンタルヘルスの問題も出てきました。

Aさんは、漠然とした不安を抱きやすくなり、自己肯定感も徐々に低下していきました。

その後も学習面の遅れが続く中で、体験ベースの学習においてならうまく行くところも出てきました。

Aさんは再度、自信を少しずつ取り戻していくことになりますが、その後、就労での問題が浮上してきました。

Aさんは、様々な仕事をやっていく中で、なかなか自分にフィットする職種を見つけることができずに思い悩む状態に再び陥っていきました。

一見すると、周囲から見て、様々なことがある程度できように思えるAさんですが、いざ、仕事となると、正確さや処理の早さ、理解力、対人コミュニケーション力などの能力が求められるため、必要な水準よりもAさんの力が下回ることで、Aさんは仕事での躓きが再び出てきました。

その後、Aさんは、福祉サービスなどを利用して、自分に合った環境を見つけていくことが徐々にできるようになっていきました。

このケースを振り返って見ても、境界知能の人には、周囲から見ても状態像の理解が分かりにくく、そのため、本人に合った配慮や支援を受けることの難しさから、学校生活での困難(学習を中心とした問題)、メンタルヘルスの問題、就労での困難を中心とした様々な課題が生じてしまうのだと感じます。

 

 


以上、【境界知能の人に見られやすい3つの課題について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

境界知能の人たちへの理解や対応は、他の障害と比べても、配慮や支援の点において非常に不足しているのが現状だと言えます。

そのため、今後ますます境界知能の人たちへの理解や支援の拡充が必須だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も境界知能についての理解を深めていきながら、どのようなサポートができるのかを学んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【境界知能の人に見られる学校・社会での問題】発達障害との違いを通して考える

 

 


境界知能に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「境界知能に関するおすすめ本【初級編~中級編】

 

 

梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.

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