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【境界知能と発達障害の違いについて】知的障害との違い・発達障害との併存も含めて考える

投稿日:2025年7月8日 更新日:

 

境界知能″とは、〝知的機能が平均以下であり、かつ「知的障害」に該当しない状態″の人たちのことを指します。

IQ(知能指数)で言うと、70~84のゾーンに当たります(71~85と記載されている文献もあります)。

〝境界知能″に近い用語として、〝知的障害″や〝発達障害″があります。

医学的定義によれば(DSM‐5など)、知的能力症も神経発達症に該当しています。

 

関連記事:「【知的障害と発達障害の違いについて】法制度・医学的な視点を踏まえて考える

 

それでは、境界知能と発達障害には、どのような違いがあると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、境界知能と発達障害の違いについて、知的障害との違い・発達障害との併存も含めて理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.」です。

 

 

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【境界知能と発達障害の違いについて】知的障害との違い・発達障害との併存も含めて考える

〝境界知能″と〝発達障害″の違いについてまず抑えておきたい点は、①境界知能と知的障害の違い②境界知能と発達障害の違い③境界知能と発達障害の併存の3つだと言えます。

 

①境界知能と知的障害の違い

境界知能とはIQ70~84の人たち、知的障害とはIQ70未満の人たちといったように、知的機能(IQ)といった軸に共通性があります。

つまり、境界知能と知的障害の違いは、知的機能の差と言えます。

一方で、知的障害は〝知的機能″〝適応機能″によって評価されるため、IQだけで診断はされずに、あくまでも、どれだけ環境への不適応状態があるかどうかが大切な指標になります。

この点に関して、以下、著書を引用しながら見ていきます。

IQが70~84の間にあり、IQだけで見れば境界知能と考えられる状態でも、適応機能が低ければ知的障害と判断されることもあります。

 

このように、〝適応機能″が低い状態にあれば、境界知能のゾーンに該当している人でも知的障害と判断されることもあり、そうなると、様々な支援を受けられる可能性が出てきます。

一方で、境界知能だけの人は、診断を受けることはできず、支援の対象とはなりづらいとされています。

 

関連記事:「【知的障害児の〝適応機能″とは何か?】療育経験を通して考える

 

 

②境界知能と発達障害の違い

発達障害と言えば、自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如多動症(ADHD)限局性学習症(SLD)などがあります。

発達障害が様々な特性による生活上の困り感によって診断を受けた人たちであるため、この人たちも、様々な教育や福祉の支援の対象になります。

つまり、境界知能が知的機能を軸としているのに対して、発達障害は特性が軸になっているといった違いがあると言えます。

また、発達障害に近い用語として〝グレーゾーン″といった人たちがいます。

グレーゾーン″とは、、発達障害傾向に加えて、適応障害が見られる人たちのことを指します。

つまり、発達障害とは言えないが、その特性が見られることに加えて、適応障害も併せて持っている人たちだと言えます。

境界知能と同様に、比較的最近になって認知されるようになってきた人たちだと言えます。

 

関連記事:「【発達障害「グレーゾーン」とは何か?】著者の経験を踏まえて考える

 

 

③境界知能と発達障害の併存

以下、著書を引用しながら見ていきます。

境界知能の人に、発達障害が併存することもあります。IQが境界知能に該当し、ASDやADHD、SLDなどの特性があるという人もいるのです。

 

著書にあるように、境界知能には、発達障害が併存することもあると記載されています。

このように、境界知能+発達障害の特性がある人たちもおり、発達障害の診断が出ていれば支援の対象に該当することになります。

 

関連記事:「【知的障害と発達障害の違いについて】発達の「速度」と「質」を通して考える

 

 


以上、【境界知能と発達障害の違いについて】知的障害との違い・発達障害との併存も含めて考えるについて見てきました。

境界知能の人たちは、支援の対象とはなりにくいと言われています。

一方で、今回見てきたように、知的障害や発達障害の診断を仮に受けることができれば、支援の対象になってくると言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も境界知能への理解を深めていきながら、他の障害との違いや併存などについてさらに学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


境界知能に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「境界知能に関するおすすめ本【初級編~中級編】

 

 

梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.

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-境界知能, 発達障害

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