〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
安定した愛着を形成する上で大切なキーワードとして、〝安心基地″〝安全基地″〝探索基地″の3つの基地機能があると言われています。
それでは、安定した愛着を形成する上で必要な〝安全基地″がうまく育たないとどのような行動が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成に必要な安全基地の欠如による4つの行動特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.」です。
愛着形成に必要な安全基地の欠如による4つの行動特徴
以下、著書を引用しながら4つの行動特徴について見てきます。
人を警戒する
危ない行動をする
痛みに鈍感
自己防衛
それでは、次に、以上の4つについて具体的に見ていきます。
1 人を警戒する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
<安全基地>をもたないこどもは、人が苦手で警戒心が強いのが特徴。
人に近寄られるのも嫌がります。スキンシップなどはもってのほか。
〝人を警戒する″行為は安全基地の欠如による1つ目の行動特徴です。
人への警戒心が強いため、他者との接近やスキンシップなどに強い嫌悪感を抱きます。
著者の療育経験を振り返って見ても、このタイプの子どもは、少し触れようとすると怒りの表情を露わにすることがあります。
酷い時には、暴言や反撃行動に出ようとすることもあります。
こちらとしては、良かれと思ってとった行為が裏目に出ることがあります。
そのため、安全基地欠如の特徴を把握しておくことはとても大切だと言えます。
2 危ない行動をする
以下、著書を引用しながら見ていきます。
高いところに登るなどの危ない行動をする特徴があるのも、安全基地が育っていないこどもの特徴です。
〝危ない行動をする″行為は安全基地の欠如による2つ目の行動特徴です。
例えば、塀の上、机や椅子の上、ジャングルジムの上に登るなど、あえて危険な場所に身を置こうとする行為は、不快な気持ちを消そうとする行為でもあります。
また、高い所からの物投げも場合によっては見られると言われています。
著者の療育経験を振り返って見ても、とにかく高い所に登ったり、そこから飛び降りようとしたり、ひどい時には、二階の窓を開けて物を投げようとしたケースもあります。
こうした行為の背景には、愛着に問題を抱えている可能性があるといった共通の特徴が見られていたように思います。
3 痛みに鈍感
以下、著書を引用しながら見ていきます。
痛いはずの状況で泣けないのは、「泣いても誰も助けてくれない」と、安全基地の機能を期待できないでいるからです。
〝痛みに鈍感″な状態は安全基地の欠如による3つ目の行動特徴です。
著者の療育経験を振り返って見ても、ASD児など感覚の鈍感さが見られるタイプとは異なり、関係性の障害(愛着障害)の影響によっても痛みに鈍感なタイプは確かに存在していたように思います。
こちらから見て、明らかに痛い傷をおっていても、本人は無表情で傷の状態を見せてくることもあったように思います。
4 自己防衛
以下、著書を引用しながら見ていきます。
都合のわるいことが起こると、「私は何もわるくない。ぜんぶ○○のせいだ」と相手を責めます。
大人が追いつめれば追いつめるほど、自己防衛の壁はどんどん分厚くなり、暴言や暴力となってあらわれることがあります。
〝自己防衛″の状態は安全基地の欠如による4つ目の行動特徴です。
自己防衛の状態とは、仮に自分が悪いことを明らかにしていても、その状態を許容することができず、さらに、問い詰めることで、不適応行動が増大すると言われています。
著者の療育経験を振り返って見ても、誰から見ても悪い行為をした状態にあっても、何か理由をつけてごまかしたり、正当化しようとしたり、さらには、誰かのせいにするなどの防衛反応が見られたケースもあります。
以上、【愛着形成に必要な安全基地の欠如による4つの行動特徴】療育経験を通して考えるについて見てきました。
安全基地も他の基地(安心基地、探索基地)と同様に、愛着を理解していく上で非常に大切な視点だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を振り返っていく中で、愛着の問題に関する理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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