〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
安定した愛着を形成する上で大切なキーワードとして、〝安心基地″〝安全基地″〝探索基地″の3つの基地機能があると言われています。
それでは、安定した愛着を形成する上で必要な〝安心基地″がうまく育たないとどのような行動が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成に必要な安心基地の欠如による5つの行動特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.」です。
愛着形成に必要な安心基地の欠如による5つの行動特徴
以下、著書を引用しながら5つの行動特徴について見てきます。
モノをさわる
いろんなモノを口へもっていく
床に触れる
愛情欲求行動
過剰にスキンシップをする
それでは、次に、以上の5つについて具体的に見ていきます。
1 モノをさわる
以下、著書を引用しながら見ていきます。
安心感がいつも欠如しているため、代わりに「さわる」という行為による接触感を求めるのです。
〝モノをさわる″行為は安心基地の欠如による1つ目の行動特徴です。
例えば、自分の身体(顔・髪・手・服など)や身近な文房具、他児などを触ることがあります。
移動の際にもモノを持ち歩いたり、多くのモノに囲まれる状況を作りたがります。
著者の療育経験を振り返って見ても、常に何かアイテムを持ちながら移動している子どももいました。
もちろん、好きなモノ、好きな感覚を得たいからといった場合もありますが、これから見る他の安心基地の欠如による行動特徴との関連性を踏まえると、より深く子どもの行動の意味が見えてくると思います。
2 いろんなモノを口へもっていく
以下、著書を引用しながら見ていきます。
さわっていたモノを口に入れると接触感が増えるので、さらに安心感が増します。
〝いろんなモノを口へもっていく″行為は安心基地の欠如による2つ目の行動特徴です。
例えば、文房具やハンカチ、自分の指を舐める行為がありますが、さらにエスカレートすると噛む行為に至ると考えられています。
著者の療育経験を振り返って見ても、愛着の問題を大きく抱えている子どもの中には、噛む行為が見られるケースも時折見られていました。
また、活動中に鉛筆や消しゴムなどをよく噛んでいることもよく見られていました。
3 床に触れる
以下、著書を引用しながら見ていきます。
靴を履くべき場所で素足になりがちです。なぜなら、足が床に接触していると安心できるからです。
大きな愛着の問題を抱えているこどもが、より広い面積を求めて、壁にもたれながら床に座ったり、床に寝転んだりします。
〝床に触れる″行為は安心基地の欠如による3つ目の行動特徴です。
この行為は、ASDなどに見られる感覚過敏の問題とは異なると考えられています。
著者の療育経験を振り返って見ても、愛着の問題を強く抱えている子どもほど、床に大の字になって寝転がったり、椅子を使おうとはせずに壁にもたれかかっている状態を好む傾向があるように思います。
4 愛情欲求行動
以下、著書を引用しながら見ていきます。
愛着欲求行動には、2種類あります。
ひとつめは「こっちを向いて」「かまって!」という気持ちが行動としてあらわれる「アピール行動」。
ふたつめの愛情欲求行動は、「愛情試し行動」と呼ばれるもの。
〝愛情欲求行動″は安心基地の欠如による4つ目の行動特徴です。
内容にも2種類あり、〝アピール行動″と〝愛情試し行動″があります。
〝アピール行動″は、他者から注目を得ようする行為であり、わざとふざけたり、静寂を壊そうとしたり、被害者アピールをするなど様々なものがあります。
〝愛情試し行動″とは、関わり手が変わると、どこまで自分の行為が許されるのかを確認する行動を大人の表情を伺いながら試す行動のことです。
安心基地を持たないことで、子どもの試し行動は際限なくエスカレートしてくることもあります。
著者の療育経験を振り返って見ても、愛情欲求行動は非常に多く見られていたように思います。
厳しい人の前ではしない傾向がありますが、その分、優しい人に過剰にその分の思いをぶつけることがあります。
そのため、厳しい・優しいといった視点・対応以上に、どのようにしていけば子どもの愛情欲求を満たしていくことができるのかを考えていくことがとても大切だと言えます。
5 過剰にスキンシップをする
以下、著書を引用しながら見ていきます。
大人を見るなり、無警戒に誰彼かまわずかかわりを求める特徴があります。
〝過剰にスキンシップをする″行為は安心基地の欠如による5つ目の行動特徴です。
特に、脱抑制タイプの愛着障害に見られる特徴であり、抱っこやおんぶ、膝乗りなど人を問わずに求めてくる傾向があります。
著者の療育経験を振り返って見ても、愛着に問題を抱えている子どもの多くが、過剰なスキンシップ行為を求めようとするケースが多いと感じています。
一方で、抑制タイプの愛着障害など、人に対する警戒心がとても強くスキンシップを過剰に避けようする子どもも少数ではありますが見られていたように思います。
以上、【愛着形成に必要な安心基地の欠如による5つの行動特徴】療育経験を通して考えるについて見てきました。
安定した愛着形成において非常に重要となる安心基地の欠如による行動特徴を理解していくことは、子どもにおける深い愛着の問題の理解へと繋がっていきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践をベースとして、愛着の問題の理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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