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【太田ステージから見た感覚運動期について】無シンボル期の発達について考える

投稿日:2020年8月2日 更新日:

障害児の発達について療育現場からその状態像を読み解くことはとても大切であり、かつ、難しい行為でもあります。

著者が初めて療育施設で重度の障害のある子どもたちと関わった際に、彼らの発達をどのように捉えれば良いのか非常に悩みました。

太田ステージ”は、そうした重度の子どもたちの発達を捉える上でとても大切な視点だと言えます。

 

それでは、太田ステージにおいて、子どもの初期の発達段階には一体どのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、太田ステージから見た感覚運動期について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、無シンボル期の発達について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「立松英子(2009) 発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.」です。

 

 

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太田ステージから見た感覚運動期:無シンボル期を通して考える

太田ステージは、シンボル機能(目の前に存在しない物を思い浮かべたり、相手の気持ちを理解するような働き)の発達に着目し、その発達過程をStageⅠ~StageⅣまでに区分しています。

その中で、初期の段階が、StageⅠの無シンボル期です。「感覚運動期」とも言われています。

感覚運動期」とは、発達心理学者のピアジェという人が名付けたもので、「からだで学ぶ」段階のことを意味します。

 

 


それでは、次に、著書を参考に、StageⅠの発達段階について見ていきます。

太田ステージでは、「感覚運動期」に相当する段階をStageⅠとして、要求表現の手段で以下の3段階に分けています。

下記に出てくる‟クレーン現象”とは、‟何か欲しいものがあるときなど大人の手をクレーンのように持って欲しいものに向けて差し出す行為”のことをいいます。

 

StageⅠ‐1:手段と目的の分化ができていない段階➢クレーン現象が出現するまでの段階

 

StageⅠ‐2:手段と目的の分化の芽生えの段階➢要求表現の手段がクレーン現象のみの段階

 

StageⅠ‐3:手段と目的の分化がはっきりと認められる段階➢クレーン現象以外にも、指差しやサイン、発声などの複数の要求手段を獲得した段階

 

 

著者のコメント

以上の発達段階(無シンボル期)は、発語のない子どもたちの要求手段をくみ取る際に非常に役に立つ視点です。

長期的に子どもたちと関わっていると、要求の手段やレパートリーが増えたと実感することがあります。

例えば、最初は自分の思いが叶わない、うまく伝えられずにただその場で泣いていた子どもが、著者の手を取ってほしいものや、やりたいものの方に差し出したり、指差しが出てくることで、要求がより明確になり、子どもの意図が汲み取りやすくなったという実感も多くあります。

そうして、コミュニケーションが円滑に進むことで、子どもの情緒が安定していったケースもあります。

また、指差しと発生が非常に豊富に見られると、そいうした行為は理論上言葉の前の段階であるため、発語まで近づいているという実感が持てるため、(もちろんこれだけで発語が出るわけではありませんが)、より言葉を意識した関わりが可能になります。

特に、著者が見てきたケースでは、無シンボル期の後半の段階(StageⅠ‐3)において、物の名称などの理解がさらに進むといった実感があるため、積極的に物の名称を伝えたり、そうした内容を盛り込んだ遊びもしてきました。

また、子どもたちが物には名前があるという気づきを行動で見せてくれることがあります。

例えば、絵本の中のキャラクターなどを、よく指さすようになったなどの変化が見られました。

これは、太田ステージでいうStageⅡのシンボル機能の芽生えの段階でもあります。

このように発達段階をある指標から理解することで、関わる子どもたちの発達過程を推測することが少しずつできるようになると思います。

そして、子どもたちの成長を実感することもよりできると思います。

子どもたちの発達は多様です。療育現場では、子どもたちの状態を理解するために、様々な視点を獲得していく必要があると思います。

今後も現場と理論や知識を掛け合わせながら、より深く人の発達を理解していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.

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