著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を、これまで10年以上にわたり行ってきています。
以前は、療育(発達支援)を行うことの意味がよくわからないほど、自身の取り組みに対して迷走していた時期もありました。
また、療育(発達支援)の成果に対して、様々な能力を引き上げることにフォーカスし過ぎてしまうことで、うまく療育が進まない時期もありました。
こうした背景をもとに、様々な改善策を考えていく中で、現時点(2025年4月)において、療育(発達支援)の意味を深く実感できるようになってきました。
それでは、療育にはどのような意味があるのでしょうか?
そこで、今回は、療育の意味について、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに、療育(発達支援)の意味について再考していきたいと思います。
【療育(発達支援)に意味はあるのか?】療育(発達支援)の意味について再考する
それでは、まずは、著者が迷走していたある話(ある時期)について簡単に紹介致します。
以前の著者は、療育の成果について、子どもの能力を引きあげることに主眼を置いていた時期がありました。
例えば、○○の対応をすることで、子どもの○○の能力が向上するといった視点を探しもとめ、様々な文献等(エビデンス)を読み漁る日々を過ごしていました。
つまり、療育の大きな意味として、様々な能力向上を優先事項とした考え方をしていたことになります。
その結果、療育がうまく行かないどころか、自分がやっていることの意味が見えなくなってしまいました。
それもそのはず、子どもが様々な能力を高めていくためには、子どもの能力が成長していくための豊かな土壌が非常に重要だからです。
そして、その土壌には、能力以上に心の持つ働きがとても必要になるからです。
それでは次に、豊かな土壌を整えていくことが、結果として、子どもが様々な能力を向上させることに繋がる2つのポイントについて紹介していきます。
1.成果の前に、安全・安心感のある環境作り
子どもにとって〝安全・安心感″は非常に重要な心の発達の土壌になります。
著者は、子どもたちの困り感に寄り添い、興味関心に対する発信への反応を高め、温かい声がけ、ユーモアを持って接していくなどを大切にしてきました。
こうした内容は、子どもとの関わりをもとに、徐々に改善していったもので、まさに肌感覚が大切だと思います。
つまり、どのような関わり方を子どもが好むのか?安心できる関わり方とはどのようなものであるのか?など、試行錯誤をしていくことが必要だと感じています。
〝安全・安心感″のある環境作りは、結果、安定した愛着形成(愛情のエネルギー)と自尊心・自己肯定感を育むことに繋がっていくのだと実感しています。
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2.また来たくなる事業所にしていくための関わり
子どもにとって〝また来たくなる事業所になっていること″が、子どもの様々な動機(モチベーション)を高めていき、心の発達を促進していくための土壌になります。
著者は、子どもたちが活動の中で、どのようなことに興味関心を示しているのかを大切にしています。
子どもたちは興味関心をきっかけとして、内面世界を豊かにしていきます。
そのためには、学校や家庭以外での体験価値を考えていく必要があります。
そして、それは決して難しいことではないと思います。
例えば、普段関わることのできない子どもや大人との交流があること、余暇の過ごしの幅が広がること、遊びにおいて新しい体験が持てることなどがあります。
新奇な体験、興味関心からのアプローチなどを通して、子どもたちは〝また遊びに来たい!″といった思いが高まることが多くあります。
つまり、こうした思いが膨らむことは、やる気・モチベーションといった意欲のエネルギーを引き上げ、結果として、自己効力感の向上に繋がっていくのだと思います。
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以上の2つのポイントにフォーカスした療育を丁寧に行っていくことで、子どもの心の成長が感じられ、その結果として、著者がかつてこだわっていた様々な能力の向上にも繋がっていくことを強く実感できるようになりました。
子どもの成長には、まずは心の育ちがあり、その後に、能力の成長があるといったことが言えるのだと思います。
以上、【療育(発達支援)に意味はあるのか?】療育(発達支援)の意味について再考するについて見てきました。
かつて自身の療育に迷走していたからこそ、療育の意味・価値の方向性が少しずつ見えてきたことも確かだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もさらなる療育の質の向上に向けて、自身の療育を見つめ直す習慣を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。