著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を、これまで10年以上にわたり行ってきています。
子どもたちの様々な成長に励まされる一方で、これまで多くの〝うまくいかない″といった経験もありました。
一方で、〝うまくいかない″経験を見直し、改善を図ることで、その後の療育(発達支援)の質を高めることに繋がっていくことも確かだと言えます。
そこで、今回は、なぜ療育(発達支援)がうまくいかないのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに、3つの視点から理解を深めていきたいと思います。
【なぜ療育(発達支援)がうまくいかないのか?】3つの視点を通して考える
1.子どもに合った環境になっていない
子どもたちにとって〝安全・安心″できる環境はとても重要です。
環境には、大きく、〝物的環境″と〝人的環境″とがあります。
〝物的環境″とは、子どもたちにとって分かりやすい活動空間(手順も含めて)になっているかどうです。
〝物的環境″がうまく整っていないと、何がどこにあるのかが分かりにくい、どこで何をして過ごせばいいのかが分かりにくいことに繋がってしまいます。
その結果、子どもがやりたい遊びが安心してできない状態になってしまいます。また、他児との衝突が生じることにも繋がってしまいます。
〝人的環境″とは、子どものことを理解していくれる〝人″の存在のことを指します。
〝人的環境″がうまく整っていないと、子どもが困った際に助けてくれる人がいない、子どもが発する様々な感情が共有・共感されないことに繋がってしまいます。
その結果、子どもの〝愛情のエネルギー″が満たされ、〝意欲のエネルギー″が引き出されることが難しくなってしまいます。
関連記事:「【発達障害児への環境調整で大切なこと】3つの環境の特徴を通して考える」
2.子どもの発達段階・発達特性が理解できていない
子どもたちの〝発達の状態″を理解する視点はとても重要です。
この点に関しては、経験に基づく理解に加えて、研究や書籍などを通した知識の獲得もまた必要になってきます。
〝発達段階″とは、発達段階理論に基づき、行動の質的な違いを年齢によって特徴づけた理論のことを指します。
〝発達特性″とは、例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の特性、ADHD(注意欠如多動症)の特性など様々なものがあります。
これらは、発達の〝質″に関するものですが、一方で、知的障害などに見られる発達の〝速度″に関する理解も必要です。
以上の様々な特徴は重複することもよくあります。
〝発達段階″及び〝発達特性″への理解が不足してしまうと、現状の子どもの状態像とは異なる理解に繋がってしまう可能性が出てきます。
そのため、本来必要とされる子どもへの支援とは程遠い対応をしてしまう恐れがあります。
関連記事:「【子どもの発達段階:年齢別】1歳から青年期頃の発達の特徴について考える」
関連記事:「【知的障害と発達障害の違いについて】発達の「速度」と「質」を通して考える」
3.長期の視野を見据えた支援を行っていない
子どもの今の姿は過去からの様々な経験(遺伝も含めて)によってできています。
そして、過去↔現在↔未来を繋ぐ視点を〝発達的視点″と呼んでいます。
つまり、子どもの〝今″を知るためには〝過去″が重要であり、子どものこれからを支援していくためには、〝未来″を見据えて(こうありたい、なって欲しいなど)、〝現在″と〝過去″とを繋ぐ視点(〝発達的視点″)がとても重要になってきます。
〝発達的視点″を考慮した対応が行われていないと、〝今″起こっている子どのもの行動(現象)に視点がフォーカスされ、それが結果として、子どもの〝これから″に繋がるポジティブな理解や対応を遮ることに繋がってしまいます。
関連記事:「発達的視点の大切さ-発達の視点は成人期以降にも必要なのか?」
以上、【なぜ療育(発達支援)がうまくいかないのか?】3つの視点を通して考えるについて見てきました。
療育(発達支援)がうまくいかないことは非常に多くあると思います。
一方で、過去の失敗体験や成功体験を振り返ることで、なぜ、自分の療育(発達支援)がうまくいかないのかのヒントを得ることができます。
今回、取り上げた3つの視点以外にも、療育(発達支援)がうまくいかないものは多くあると思います。
大切なことは、自身の療育を見直し、少しでも日々前進し成長していく姿勢と実行力だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を振り返りながら、少しずつ自分自身をアップデートさせていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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