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【発達障害児に見られる片付けが苦手なことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

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発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。

著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。

 

それでは、発達障害児に見られる片付けが苦手なことに対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られる片付けが苦手なことへの対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。

 

 

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片付けの苦手さはなぜ生じるのか?

片付けの苦手さ″には、様々な背景要因があると考えられています。

ここでは、7の視点から見ていきます。

 

1つ目として、〝片付けのメリットを感じられないこと″です。

子どもの中には、部屋が散らかっていようが、自分が出した物が乱雑になっていても、気にしていない・気にならないケースがあります。

つまり、そもそも片付けることのメリットを感じていないこともあります。

2つ目として、〝物事の見え方の違い″です。

子どもは特に視野が狭い、中でも、発達障害児は非常に狭い領域で物事を見ている子どもも多くいます。

そのため、こうした〝物事の見え方の違い″が影響して、必要な物を見つけたり、必要な場所にしまうことが難しくなっていることがあります。

3つ目として、〝動作の不器用さ″です。

発達障害児の中には、動作がゆっくりであったり、不器用さがあるため、スムーズ身体を動かすことに苦手さがある場合があります。

その結果、片付けが遅くなることがあります。

4つ目として、〝グループ分けの苦手さ″です。

グループ分けの苦手さ″とは、筆記用具は鉛筆・消しゴム・定規・・・、といったように、○○のカテゴリーには○○が含まれるという概念理解です。

グループ分けが苦手であると、何をどこにしまってよいか迷うことが起こります。

5つ目として、〝注意の転導性の高さ″です。

つまり、やりっぱなしとも言えますが、一度、片付け始めるも、他の事が気になり、片付けが中断されてしまうことです。

6つ目として、〝ワーキングメモリの弱さ″です。

ワーキングメモリとは、記憶の保持・操作に関する能力であり、実行機能などとも関連が強くあります。

ワーキングメモリが弱いと、片付ける必要のある複数の物を記憶に留めておくことが難しくなります。

7つ目として、〝作った物を取っておきたい心境″です。

子どもは自分が作った作品、例えば、レゴブロックなどを大事に取っておきたいことがあります。

つまり、作った作品を片付けられずに、次々と増えていく状況です。

 

 

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片付けの苦手さへの対応について

著書には、片付けの苦手さへの対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。

 

 


それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。

 

① SST(ソーシャルスキルトレーニング)

以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。

・片付けのメリット・デメリットを伝える

 

片付けのメリット・デメリットを伝える″ことです。

先に見たように、子どもの中には、片付けることの意味をよく感じられない場合もあります。

そのため、例えば、〝綺麗に片付くと気持ち良い!″〝どこに何があるかが分かりやすい!″などのメリットや、〝おもちゃを踏んで壊してしまうかもしれない″〝大好きなおもちゃがなくなってしまうかれもしれない″などのデメリットも併せて伝えていくことが大切です。

 

 

② ペアレントトレーニング

以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。

・一気に全部ではなく、少しずつから始める

 

・作品を褒めて写真に残してから片付ける

 

・分かりやすいルールを決める

 

まずは、〝完璧に片付けることを求めず、一部だけ、少しずつでも良いといった対応をする″ことです。

例えば、○○のスペースの片付けをお願いする、○○のカテゴリーの片付けをお願いする、また、最初は大人も一緒に手伝ったり、残りの少し片付けをお願いするなどの対応を行っていきながら、、できたところをしっかりと褒めていくことが大切です。

 

次に、〝好きな作品は写真に残し、その後片付ける″ことです。

先に見たように、子どもの中には、自分が頑張って作った作品や、作った物全てを取っておこうとする子どももいます。

そのため、完成した作品を褒め、写真に撮ってから片付ける対応も大切です。

 

次に、〝家庭内でのルールを決める″ことです。

例えば、○○の場所には物を置かない、片付けてから次の活動をする、などのルール決めや、ルールが定着しやすいように、片付けの場所をできるだけ分かりやすく・シンプルにしていく工夫もまた大切です。

 

 

③ 感覚統合療法

以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。

・遊びの終わりを意識させる

 

・空間を広く見る遊び

 

・自分の身体を器用に使う遊び

 

・片付ける手順を具体的に伝える

 

まずは、〝遊びの終わりを意識させる″ことです。

子どもの中には、遊びの途中で他の遊びに興味が湧くと、直ぐに他の遊びに向けて動き出すこともよくあります。

そんな時は、今やっていた遊びをしっかりと終わらせること、そして、その時にこれまで使っていた物を片付けてから次の遊びへと移っていけるように子どもをサポートすることが大切です。

 

次に、〝空間を広く見る遊びを導入すること″です。

著書には、例として、〝宝探しゲーム″が載っています。

普段から宝探しゲームのように物を見つける練習をしておくことで、この取り組みが、片付けの場面においても応用化できる可能性があります。

例えば、〝○○のおもちゃはどこかな?″〝見つけたらどこにしまうのだったかな?″とった具合に、片付けに遊びの要素を取り入れることも大切です。

 

次に、〝身体を使う遊びを導入する″ことです。

先に見たように、片付けの苦手さは、身体の不器用さが影響している場合もあります。

そのため、例えば、様々な感触遊び(粘土・スライムなど)や手を使った遊び(切る・貼る・入れる・抜く・引っ張る・押すなど)、公園でのジャングルジムなども協調運動の発達においてとても大切です。

 

次に、〝片付けの手順を具体的に伝える″ことです。

子どもによっては片付けをお願いしても、指示内容が抽象的で理解が難しいことがあります。

そのため、○○のおもちゃの片付けをお願いする、○○のスペースの片づけをお願いする、そして、○○を片付けてから次に○○を片付けるようにお願いするなど、片付けの内容・手順を具体的に示すことが必要です。

 

 


以上、【発達障害児に見られる片付けが苦手なことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。

子どもの片付けの苦手さには様々な背景要因があります。

そのため、個々に応じた対応策を考えていくことが大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で質の高い支援へと展開していけるように、個別の支援のレパートリーについて学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児に見られる片付けができない・苦手なことへの対応】5つのポイントを通して考える

関連記事:「【発達障害児はなぜ片付けが苦手なのか?】片付けが苦手な理由と対応について考える

 

 

岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.

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