発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。
著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。
それでは、発達障害児に見られる危険行動に対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児に見られる危険行動への対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。
危険行動はなぜ生じるのか?
〝危険行動″に至る背景要因には様々なものがあります。
ここでは、5つの視点について見ていきます。
1つ目として、〝衝動性″の高さです。
ADHD児などによく見られる〝衝動性″とは、考える前に行動することです。
つまり、危険に対する先読みをする前に行動が先行してしまうことで、結果として危険行動に繋がるといった特徴があります。
2つ目として、〝不注意″の高さです。
これもADHD児などによく見られる特徴であり、周囲に危険があっても、その危険に気づけない、他の事に気を取られていて見落としてしまう特徴があります。
3つ目として、〝状況理解の困難さ″です。
場面や状況理解の困難さはASD児によく見られる特徴です。
例えば、大人が危険であると伝えていても、そもそも大人の声に注意を向けることが難しい、それ以上に、自分の興味関心に気を取られて、その場の状況がうまく理解できないことから危険を察知することが困難となる場合があります。
4つ目として、〝感覚の問題″です。
発達障害児は様々な〝感覚の問題″があります。
例えば、〝感覚探求″の強い子どもであると、より多くの刺激を求めることがあります。そのため、スリリングな危険行動に繋がる遊びを自然と取ろうとすることがあります。
また、〝感覚過敏″の強い子どもであると、少しの刺激に敏感に反応し、不快な刺激を遠ざけるために、他児を叩いたり(苦手な声など)、その場から急に逃げるなどの特徴があります。
5つとして、〝力加減の調整の不器用さ″です。
不器用さがよく見られる発達障害児は、力のコントロールの不得意さから、他児を強く叩いてしまう(本人にはそのつもりはないにしても)など、危険行動に繋がることもあります。
危険行動への対応について
著書には、危険行動への対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。
それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。
① SST(ソーシャルスキルトレーニング)
以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。
・出かける前には交通ルールを確認する
・遊びなどの活動で危険回避の行動を練習する
まずは、〝危険個所に対して事前に確認してルールを決めておく″ことです。
例えば、横断歩道でのリスク、通学路のリスク、公園で遊ぶ際の危険な場所など、大事故・大ケガに繋がる可能性へのある場所について、事前にどこに危険があるのかの確認と危険を回避する・身の安全を守るためのルール決めがとても大切です。
次に、〝遊びを通して危険に対するスキルを養う″ことです。
例えば、サッカーやドッチボールなど体を使った遊び、ボードゲーム・カードなどの遊びを通して、うまくいかずイライラしたり、他児に当たってしまうことに対して、嫌な気持ちを言葉にする練習、感情をコントロールする方法などを身につけていくことも大切です。
② ペアレントトレーニング
以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。
・危険行動の結果を伝える
まずは、〝危険行動が及ぼす影響・結果を伝える″ことです。
その際に、○○してはダメ!を叱り続けるのではなく、なぜ危険行為をしたのか?その結果どうなるのか?の振り返り、また、危険行動の結果、怪我をすると親としてはとても悲しいといった親自身の気持ちを伝えていくことも大切です。
そして、SSTでも見たように、事前に危険な状況を把握しておき、未然に防ぐための予防策を考えておくことも必要です。
③ 感覚統合療法
以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。
・周りをじっくり見て行動する遊び
・感覚欲求を満たしたあとに力加減する遊びを行う
まずは、〝周辺視野に目を向ける遊びを取り入れる″ことです。
様々な遊びがありますが、大切なことは、周囲(他者)の動きを見ながら自分自身の体も使うという視点です。
自分以外のことに目を向けながら、楽しく自己の動きをコントロールする要素のある遊びの導入が大切です。
次に、〝感覚欲求の充足後、力加減のある遊びを行う″ことです。
危険行動に繋がる背景要因には、〝感覚の問題″〝力加減の調整の不器用さ″がありました。
そのため、例えば、感覚欲求を満たす遊び(腕相撲、相撲などの発散系の遊び)を行って不足した感覚刺激を満たした後に、力加減を調整する遊び(例:だるまさんがころんだ)などを取り入れることも重要な視点です。
以上、【発達障害児に見られる危険行動への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。
危険行動には様々な背景があります。
そのため、背景となる要因を抑えていきながら、子どもに合った対応策を考えていくことがとても大切です。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの危険行動を防ぎ、安全かつ安心して過ごせる環境を継続して整えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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