ここ最近、〝非認知能力″が注目されるようになってきています。
〝非認知能力″とは、創造性・興味・関心・意欲・主体性・自制心・自信など、一般的な知能以外の能力を指します。
非認知能力の育ちは、人間の幸福度に影響するなど、とても重要な力だと考えられています。
そして、非認知能力は認知能力以上に、育てることが可能だと考えられています。
関連記事:「【非認知能力はなぜ注目されているのか?】療育経験を通して考える」
それでは、子どもの非認知能力の育ちを理解する上で、どのような所に着目すればよいでのしょうか?
そこで、今回は、非認知能力の育て方の理解で必要な視点について、心の育ちをチェックする7つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「関西発達臨床研究所(編)高橋浩・山田史・天岸愛子・若江ひなた(著)(2024)非認知能力を育てる発達支援の進め方 「きんぎょモデル」を用いた実践の組み立て.学苑社.」です。
非認知能力(心の育ち)をチェックする7つのポイント
〝非認知能力″は、認知能力とは異なり、数値化できるものではないため、評価が難しいと考えられています。
こうした中で、著書には、〝非認知能力″をチェックする7つのポイントが記載されています(以下、著書引用)。
① 興味、関心、好奇心があるか?
② 楽しむことができるかどうか?
③ 意欲があるか、努力ができるか?
④ 達成感や自信が見られるか?
⑤ ちょっとした我慢、気持ちの調整は?
⑥ 相手への思いやりや共感、気遣いは?
⑦ やり遂げる力や頑張り抜く力は?
それでは、次に、以上の7つのポイントについて、著者の経験談も交えながら具体的に見ていきます。
① 興味、関心、好奇心があるか?
興味関心、好奇心は、子どもたちの中で〝○○は何だろう?″〝○○についてもっと知りたい!″といった気持ちの現れです。
著者が見ている子どもたちの中には、好奇心旺盛で興味関心が強い対象について、本や事典、タブレットなどを活用してどんどん調べていく子どももいます。
こうした姿勢がいずれ○○博士のような姿を作っていくのだと思います。
また、自閉症児などは興味関心の幅が狭く、ハマるととても深い領域にまでたどり着くことがあります。
そのため、大人から見て少しマニアックなことでも良いので、どのような対象に興味関心・好奇心があるのか、ある場合にはその内容や強度などを探っていくことがとても大切だと感じています。
② 楽しむことができるかどうか?
様々な活動に対して楽しんで取り組む姿勢は、子どもの表情や声のトーンなど身体全体から感じ取られるものです。
著者は楽しんでいる子どもを見ると、活動そのものに意味や目的を見出している場合もありますが、目的があまりよく分からない活動であっても、取り組むこと自体を楽しんでいる様子もまた多く見られます。
即興で考えた様々な遊びであったり、似たような遊びを何度も繰り返して遊ぶなど、子どもによって楽しみ方は違うのだと思います。
そのため、子どもが、どのような活動に対して、どのような楽しみ方をしているのか、その時の楽しみ方の強度も含めて探っていくことが大切だと感じています。
③ 意欲があるか、努力ができるか?
何かに挑戦してみよう!頑張ってやってみよう!といった姿勢は、新奇性のある活動の中であったり、好き・得意な活動を通してよく観察されます。
新しい活動であっても臆せずトライしてみる姿勢、好きなこと、得意なことに対してどん欲に取り組む姿勢は、著者が見ている療育現場の子どもにもよく見られます。
そのため、子どもに合った課題を調整したり、活動のバリエーションの豊富さを整えていくなどの工夫を通して、子どもの意欲や努力の様子を見ていくことが大切だと感じています。
④ 達成感や自信が見られるか?
活動の中で何かができた時に喜ぶ様子(達成感)や、〝自分にはできる!″といった自信は活動を通してよく観察されるものです。
療育現場で子どもたちを見ていると、達成感と自信はお互いに関連づいている印象があります。
例えば、何かをやり遂げた達成感の積み重ねが、その子の自信に繋がっていったと感じるケースは多く見られます。
そのため、少しの頑張りで、〝やった!″〝できた!″といった気持ちが得られる課題設定(興味関心などに基づいた)や、頑張っている過程に対するフィードバックなどを通して、子どもの様子を見ていくことが重要だと感じています。
⑤ ちょっとした我慢、気持ちの調整は?
少しのイライラを我慢できる、イライラしたマイナス感情をうまく調整するなど、感情調整(感情のコントロール)の力も、様々な活動を通してよく見られるものです。
自身のネガティブ感情をうまく切り替えられる、あるいは、以前は苦手であったが、うまく切り替えられるようになったケースは、著者の療育現場でもよく見られます。
感情調整(感情のコントロール)の力は、自身の感情への気づきに加えて、ネガティブな感情への対処方略を学習していくことで、少しずつ身に付いていくのだと言えます。
そのため、普段の活動の中で、どのような状況・場面においてイライラを感じやすいのか、そして、その強度はどの程度なのか、そのイライラを抑えることができるのか(緩和するまでの時間)、などをアセスメントしていくことが大切だと感じています。
⑥ 相手への思いやりや共感、気遣いは?
他者に対して思いやりや共感性を持って接する様子、つまり、社会性の力もまた、様々な他者との関わりの中でよく観察されるものです。
著者の療育現場には、小学校1~6年生までの子どもたちがおりますが、縦横の関係を通して、様々な関わり方が見られます。
例えば、異年齢であれば、年下の子どもが年上を頼りにする様子、逆に、年上の子どもが年下の子どもの世話(気遣い)をする様子などがよく見られます。
また、同じ居場所(コミュニティ)に所属していることから、仲間意識も高まっていき、共感や思いやりを持って他児に対して接する様子が増えていくこともよく観察されます。
そのため、普段、相手に対して、利他的行動がどの程度取れるのか(種類や頻度など)、どのような状況や内容に対して共感性が見られるのか、などを把握していくことが大切だと感じています。
⑦ やり遂げる力や頑張り抜く力は?
やり遂げる力とは、実行機能の育ちやグリットなどと関連づく、物事を計画立てて、その対象に意識を向け続ける力のことを指します。
著者が見ている子どもたちの中には、興味のある対象に対しては、非常に高い集中力を発揮して最後まで取り組むことができる子どももいれば(過集中傾向も含めて)、逆に、注意の持続が難しい、直ぐに他の事が気になってしまう子どももいます。
そのため、物事への計画性や、計画を遂行する力、注意の維持の力などをよく見ておくことが大切だと感じています。
以上、【非認知能力の育て方の理解で必要な視点】心の育ちをチェックする7つのポイントについて見てきました。
繰り返しになりますが、非認知能力は育てていくことができると考えられています。
つまり、先に見た7つのチェックポイントが少ない(ほとんど該当しない)場合においても、環境や教育次第で少しずつ伸ばしていくことができると言えます。
大切なことは、他者との比較ではなく、その子なりの良さや頑張り、そして、好きなこと探し認めていくことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの非認知能力を少しでも伸ばしていけるように、より良い療育(発達支援)を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関西発達臨床研究所(編)高橋浩・山田史・天岸愛子・若江ひなた(著)(2024)非認知能力を育てる発達支援の進め方 「きんぎょモデル」を用いた実践の組み立て.学苑社.