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発達支援(遊び編):「鬼ごっこ」

投稿日:2020年7月13日 更新日:

私はこれまで療育施設や放課後等デイサービスなどで、発達につまずきのある子どもたちと関わってきました。

障害像も重度から、軽度、グレーゾーン、知的に遅れはないが自閉症やADHDなどの特性があるなど多様でした。

一人ひとり個性的であり、私は彼らとの関わりを通して、人の発達の多様性を実感することが多くありました。中でも遊びから得られることもたくさんあり、日々、彼らに合った遊びを考える機会が多くありました。

その中で、定番ともいわれる遊びに「鬼ごっこ」があります。多くの方が子どもの頃にやった遊びかと思いますが、発達につまずきのある子どもたちの場合には遊びの工夫や配慮が必要になります。。

そこで、今回は「鬼ごっこ」をテーマに実際どういった子どもたちにどのような取り組みや工夫をしてきたのかについてお伝えしていこうと思います。

「鬼ごっこ」とは、鬼がいて、鬼が他の相手をタッチすることで鬼が変わるという遊びです。つまり、鬼を認識して逃げること、鬼とそうでない人が入れ替わるという役割の交代という理解が必要です。

まずは、療育施設での体験についてお伝えします。

療育施設では、発達につまずきのある未就学児を対象に療育をするという場所でしたが、比較的重度の子どもたちが多かったため、「鬼ごっこ」などルール性のある遊びは理解の面で難しさがありました。

ですが、「追いかけっこ」が好きな子どもたちはたくさんいました。中には、朝登園すると、追いかけっこを決まってやるという日課がある子どももいました。また、一人走り出すと他の子どもたちも走り出すなど、周囲を巻き込んで遊ぶことも多くありました。

私はこうしたクラスの子どもたちの様子を見て、クラスの遊びに積極的に取り入れていこうと考えました。

まずは、鬼の明確化です。漠然と大人が走ることで理解できる子もいますが、そうでない子も多いため、鬼を際立たせる必要があります。私は変装ごっこなどに使用したかぶり物などを使用しました。

そして、鬼は10数えてから捕まえにいくというルールを作りましたが、これも10数えれる子とそうでない子がいるので、数えることが難しい子に対しては、大人が傍で一緒に数えるようにしました。

次に、タッチしたことをしっかりと伝えることが重要です。私がいたクラスでは、タッチした時に「○○くん・ちゃん、捕まえた!」とはっきりいうようにしていました。

一番難しいのは、タッチされた人が鬼役に代わるというところです。子どもたちの多くは、追いかけられることは得意だが、追いかけることは苦手・理解がむずしい子が多くいました。そのため、大人と一緒に手を繋いで一緒に捕まえるなどの取り組みをしました。

こうした複数でやるルール遊びは、クラスの子どもたちによって内容を変えていく必要があるかと思います。

私は追いかけられることが好きな子どもたちが多いクラスの担任になった時には(よく見られます)、「鬼ごっこ」から「全員を捕まえるゲーム!」にしました。内容は、シンプルで私が鬼になり、子どもたちを人ひとり捕まえていき、最後に生き残った子どもが勝ちというゲームです。

誰が生き残っているのかがわかるように、教室の正面にあるホワイトボードに、子どもたち一人ひとりの写真を貼り(A4以上のサイズ)、捕まえた子の写真から取っていくということにしました。

以上が療育施設での「鬼ごっこ」の取り組みや工夫になります。

次に放課後等デイサービスにおいて「鬼ごっこ」の実施について簡単にお伝えします。

私が担当している放課後等デイサービスでは小学生を対象にしているため、先ほどまでお伝えした未就学児とは体つきやルールの理解の面でも異なります。「鬼ごっこ」をしても、鬼役とそうでない役など、役割の反転の認識もできる子が増えます。

こうした中で重要なのは、ルールの提示です。例えば、時間の提示、鬼になったら10秒間数える、一人の人を集中して狙わない(大人を除く)、どこまでのスペースを使ってやるのかなど事前の伝えがとても重要になります。また、役割の反転の理解が難しい子などには個別に伝えるなどの配慮が必要になります。

このように、年齢や発達段階が上がることで遊びのルールの理解やその中での配慮などが変わってくると私自身実感します。

「鬼ごっこ」は非常にシンプルな遊びかと思われますが、相手を意識すること(逃げる相手に注意を向け続ける)、鬼役とそうでない人の役割が変わること、相手を捕まえるための戦略、鬼から逃げ続けるための戦略など、体と認知(理解)の多くの側面を使います。

以上見てきたように、遊びは年齢や発達段階によって同じ遊びでも取り組み方や配慮などが変わってきます。

今後も発達段階など長期的な視座に立った発達的な視点から、遊びについての考察を深めていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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