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待つことができない 発達障害

【待つことができない発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考える

投稿日:2024年11月4日 更新日:

 

発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。

正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をしていけば正しい行動を身に付けていけるのかを考えていくことが必要です。

 

発達障害児の中には、待つことができない・待つことを苦手としているケースが多く見られます。

 

それでは、待つことができない・苦手な発達障害児に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、待つことができない発達障害児への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、応用行動分析学の視点を通して理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.」です。

 

 

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待つことができない子どもへの支援のポイント

著書には、待つことができない子どもへの支援のポイントが3つ記載されています(以下、著書引用)。

1.待つ場面は必要最小限にしよう

 

2.具体的な「待ち方」を含めて伝えよう

 

3.待てたらいいことがあるという見通しを立てよう

 

著者のこれまでの療育経験を通しても以上の3点は大切だと感じています。

1に関しては、発達障害児に限らず子どもは待つことが苦手です。

さらに、発達障害児においては、様々な発達特性が影響して(多動性・衝動性、実行機能の弱さなど)、待つことがとても難しいケースも見られます。

そのため、まずは著書にあるように、未然に待つことを最小限にする環境調整が大切だと感じています。

 

2に関しては、時間での提示(あと〇分待とう、〇時まで待とうなど)、順番・作業・活動による切り替え(○○が終わるまで待とうなど)、カウントダウン(10数え終えるまで待とうなど)を著者は具体的な「待ち方」として活用しています。

 

3に関しては、待てたら報酬(やりたいことが一つできる、少し長く遊べるなど)があることを具体的に伝えることも有効だと思います。

 

 

待つことができない子どもへの対応

著書には、待つことができない子どもへの対応として4つのステップが記載されています(以下、著書引用)。

STEP1 「待ったらいいことがあった!」を積み重ねよう

 

STEP2 楽しい活動を一瞬待つ機会を設定し、待てたことを褒める!

 

STEP3 短い時間待つ工夫をして待ち時間をのばそう!

 

STEP4 待てる時間をのばす順番言葉やスケジュール表を活用

 

 


それでは、4つのステップについて具体的に見ていきます。

 

STEP1 「待ったらいいことがあった!」を積み重ねよう

著書には、「待って!」という言葉にまずは慣れてもらうことが大切だとしています。

そのため、数秒間待ち、その後、待てたことで良いことがあったという経験が必要になります。

著者も遊びに中で、、無自覚的な部分もありますが、少し待ったらやりたい遊びができた、大人が望んだ関わりをしてくれた、という対応をすることがあります。

こうした対応も少なからず〝待ち″の練習になっているのだと思います。

 

 

STEP2 楽しい活動を一瞬待つ機会を設定し、待てたことを褒める!

著書には、一瞬待つための方法が記載されています(以下、著書引用)。

絵本を使う

 

おやつを使う

 

身体を使ったあそびを使う

 

著者の療育経験を踏まえると、例えば、好きな絵本を子どもたちが読んで欲しいと要望してくることがあります。

そんな時に、ページをめくるスピードを少し遅くしてゆっくり読む方法も有効だと思います(絵本を使う)。

また、食べたいおやつを目の前にして、おやつの袋をすかさず開けようとした際に「ちょっと、まっててね!」など、全部準備が整うまで〝待つ″ことを促すことも有効だと思います(おやつを使う)。

著者も最もよく使うものとして、身体を使ったあそびを使うことで、少しの〝待ち″を練習するというものです。

例えば、毛布ブランコを楽しく行い、「もう一回!」と子どもが言ってきたら、「ちょっと、まってね!」と声をかけ、数秒後にスタートするなどです。

このように、報酬となる活動(遊び)を通して、一瞬の〝待つ″を練習する方法は、日常に溢れているのだと思います。

 

 

STEP3 短い時間待つ工夫をして待ち時間をのばそう!

著書には、次のステップとして、短い待ちの工夫が記載されています(以下、著書引用)。

カウントダウンを使う

 

ポイント制やタイマーを使う

 

簡単な手伝いを頼む

 

著者の療育経験を踏まえると、「あと10秒待ってね!」など、カウントダウンはとても多く使う方法です。

その他、タイマーで残りの待ち時間を表示することをよく行っているスタッフもいます(ポイント制やタイマーを使う)。

中でも、自閉症児は視覚的な理解を得意としているケースも多いため、残りの待ち時間が目に見えることで、少しずつではありますが、長く待てるようになった子どももいます。

また、待つ際に、簡単な手伝いを頼むことも、子どもによっては有効な場合もあります。

例えば、おやつを直ぐに食べたい子どもに準備を手伝ってもらうなど、「○○してくれたらすぐに食べられるよ!」といった声掛けをするなどです。

もちろん、こうした場合には、声掛けの仕方にもテクニックが必要(子どもを動機づける)だと思います。

 

 

STEP4 待てる時間をのばす順番言葉やスケジュール表を活用

著書には、さらに待ちの時間を伸ばすための方法が記載されています(以下、著書引用)。

順番言葉で待つ

 

ミッションカードや宝箱を使う

 

時計やタイマーを使う

 

著者の療育経験を踏まえると、「1、○○をします」、「2、○○をします」・・・など、やるべきタスクを順番言葉に置き換える方法も行っています(順番言葉で待つ)。

継次処理と音声理解が得意な子どもには効果的だと感じています。

次の、ミッションカードや宝箱を使う方法は、著者は行ったことはありませんが、例えば、欲しい物を宝箱に入れておき、その宝箱を空けるためには、いつかのミッションをクリアすることで開けることができるといったとてもユニークな方法です。

最後に、やはり時間の管理は時計やタイマーを使うといった方法です。

ある程度、待てる力が育つことで、後は、視覚的な道具(時計)、音による伝達(タイマー)などはとても有効になっていきます。

 

 


以上、【待つことができない発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考えるについて見てきました。

大切なこととして、まずは支援のポイントを基盤として、それぞれの子どもの発達段階・発達特性を踏まえて、今回見てきた対応方法を取り入れながら、新しい行動の学習に結び付けていくことが大切な視点(応用行動分析学の視点)だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も多くの療育実践を通して、より支援の質を高めていけるような学びを継続していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児支援で大切な伝え方の工夫】数字での説明を例に考える

 

 

熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.

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