人は生涯にわたって〝発達″していきます。
〝発達″には、○○ができるようになるとったポジティブな側面に併せて、○○ができなくなってきたというネガティブな側面も併せ持っています。
人の〝発達″とは、時間変化の中で、個人×環境の相互性が心や行動に変化として現れる状態のことだとも表現できます。
時間軸による変化が発達を考える上で大切な視点となりますが、その際のキーワードに〝発達段階″があります。
それでは、発達段階を通して子どもの発達を考えた場合に、どのような特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、子どもの発達段階について、年齢別(1歳~青年期頃)の発達の特徴について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤村宜之(2009)いちばんはじめに読む心理学の本③ 発達心理学-周りの世界とかかわりながら人はいかに育つのか-.ミネルヴァ書房.」です。
発達段階とは何か?
〝発達段階″とは、発達段階理論に基づき、行動の質的な違いを年齢によって特徴づけた理論のことを指します。
〝発達段階″を考えた場合には、もちろん、〝個人差″があります。
また、〝障害の有無″などによっても〝発達段階″には、差異が見られます。
一方で、子どもが成長していく過程において、発達にはある程度の〝順序性・方向性″あると考えられています。
一般的な発達を理解することで、人の発達には○○の基盤が育つことで、次の段階が見えてくるといった発達の道筋が見えてきます。
また、特定の年齢による課題(〝発達課題″)についても、〝発達段階″を通して理解を深めることができます。
子どもの発達段階:年齢別
それでは、次に著書を引用しながら、年齢別による発達段階の特徴について見ていきます。
著書では、成人期や老年期までの発達が記載されていますが、今回は成人期以降の発達については割愛させて頂きます。
また、今回見る〝発達段階″はあくまでも、個人差など発達の差異を除いての記載がメインになります。
1.乳児期(誕生~1歳半頃)
以下、著書を引用しながら見ていきます。
世界を知りはじめる 人との関係のはじまり
様々な感覚・知覚が発達する段階です。
ピアジェ理論でいう〝感覚・運動期″にあたり、自身の感覚と運動を通して、知覚を発達させる、つまり、外界の世界を知りはじめる段階になります。
知覚の発達でいえば、視覚や聴覚による弁別(色や形の弁別、人の声の弁別など)の理解が進んでいきます。
発語に関しては、喃語(マママ、バババなど)が見られ、コミュニケーション手段までには至らないまでも、様々な音声が識別できるようになっていきます。
さらに、〝共同注意″が見られるようになると、他者と特定の対象を共有できるようになり、一気にコミュニケーションが進むといった特徴もあります(9カ月革命とも呼ばれます)。
また、特定の養育者との情緒的な絆が形成されるといった愛着においても非常に大切な時期となり、まさに、人との関係のはじまりの段階だと言えます。
関連記事:「【子どもの発達段階:1~1歳半頃】療育経験を通して考える」
2.幼児期(1歳半頃~6歳頃)
以下、著書を引用しながら見ていきます。
今・ここの世界からイメージとことばの世界へ 自己の育ちと他者との関係
表象機能(イメージする力)が高まる段階です。
表象機能が発達することで、言葉の力も飛躍的に伸びていきます。
まさに、目の前の事象から離れて物事を考える世界に突入する時期(今・ここの世界からイメージとことばの世界へ)だと言えます。
ピアジェ理論でいう、〝前操作期″にあたります。
〝前操作期″の特徴として、今・ここという文脈の影響にまだ依存して思考する状態だと言えます。
また、〝第一次反抗期″といったいわゆる〝イヤイヤ期″〝なんでもじぶんでする″など、自己主張が強くなる時期でもあります。
さらに、〝心の理論″といった他者には自分との異なる心の働き(意図や気持ちなど)についての気づきや理解が深まる段階でもあります。
このように、自己の顕在化、そして、他者の心の理解、そして、自他の関係性の中で対人関係をさらに磨いていく時期だと言えます(自己の育ちと他者の関係)。
関連記事:「【子どもの発達段階:2~3歳頃】療育経験を通して考える」
関連記事:「【子どもの発達段階:4~6歳頃】療育経験を通して考える」
3.児童期(6歳頃~12歳頃)
以下、著書を引用しながら見ていきます。
思考の深まり 友人とのかかわりと社会性の発達
ピアジェ理論でいう、〝具体的操作期″といった論理的思考がはじまる時期になります。
さらに、11~12歳にかけては〝形式的操作期″といった現実の存在の事象の制限からはずれて(あくまでも目の前の現実の事象は可能性の一つであり、他の潜在的な可能性も検討できるようになる)思考ができる段階になります。
つまり、思考が深まる時期になるため、〝勤勉性″といった学業に集中して取り組むことができる段階になります。
また、友人関係も深まり、集団の中での自己をより強く認識するようになっていきます。
例えば、〝社会的比較″といった自分と他者を比較して見る傾向が強くなったり、その中で〝劣等感″や〝自尊心(仲間から認められているという感覚)″など、社会性の発達がより進む時期だと言えます(友人とのかかわりと社会性の発達)。
関連記事:「【子どもの発達段階:7~9歳頃】療育経験を通して考える」
4.青年期(12歳頃~25歳前後)
以下、著書を引用しながら見ていきます。
自分らしさへの気づき 他者を通して自分を見る
青年期の前半(18歳頃まで)は、まさに〝第二次反抗期″といった心身共に変化の激しい時期になります。
この時期には、様々な内容(スポーツ、勉強、外見など)に関して他者と比較を行うなど自己評価を行うことで、自分らしさへの気づきがさらに進んでいきます。
また、青年期の課題として〝アイデンティティ(自我同一性)″の確立があります(エリクソンが提唱したものです)。
様々な他者との関わりを通じて自分を見る(他者を通して自分を見る)ことによって、自己理解が進む時期でもあります。
こうした自他への理解や自分自身で物事を意思決定する力が発達していく中で、自分とは他の誰とも違う存在だという〝アイデンティティ″の確立が進んでいくと言えます。
関連記事:「【子どもの発達段階:思春期頃】療育経験を通して考える」
以上、【子どもの発達段階:年齢別】1歳から青年期頃の発達の特徴について考えるについて見てきました。
今の発達心理学は生涯発達といった枠組みで理論が展開されています。
今回は、生涯発達の中でも、青年期の前半あたりまでの発達段階にフォーカスして話を進めてきました。
さらに、興味を深めたい方は、発達心理学に関する書籍をお勧めします。
関連記事:「発達心理学に関するおすすめ本【中級編】」
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達とは何か?といった壮大なテーマに対して、発達段階も含めて、様々知識を吸収していきながら理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
藤村宜之(2009)いちばんはじめに読む心理学の本③ 発達心理学-周りの世界とかかわりながら人はいかに育つのか-.ミネルヴァ書房.