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固有感覚

【固有感覚の過敏性と低反応の特徴について】療育経験を通して考える

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発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。

そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。

感覚の問題を考えるにあたってとても大切な感覚に〝固有感覚″があります。

固有感覚″とは、〝筋肉の緊張具合や関節の動きを通して感じる感覚″のことを指します。

そして、〝固有感覚″にも過敏性と低反応(感覚鈍麻)が見られると言われています。

 

それでは、固有感覚の過敏性と低反応にはどのような特徴があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、固有感覚の過敏性と低反応の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

 

固有感覚の過敏性の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

防衛反応が発動していると、筋肉や関節が闘争・逃走反応に入るため緊張状態に入ります。

 

一般的に私たちは、緊張すると体が硬くなったり、震えるなど身体変化を感じることがあります。

〝固有感覚″がうまく働くことで、関節や筋肉の動きをスムーズすることができますが、緊張状態によって〝固有感覚″に変化が生じます。

そして、〝固有感覚″に〝過敏性″があると、防衛反応が発動することが多くなり、その結果として、生活の様々な場面において、身体の操作がうまくいかないことが出てきます。

つまり、緊張場面といった状況でなくても(本人にとってはそのような状況なのかもしれませんが)、変に体に力が入っている、緊張が伺えるなどの様子が見られます。

著書には、〝固有感覚″の〝過敏性″に対して、できるだけリラックスできる環境を整えていく必要があるとしています。

例えば、好きな映像や音楽、マッサージなどを行うなどがあります。

 

 

固有感覚の低反応の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

固有感覚が低反応、あるいは未発達の子は、全身の筋肉・関節のやり取りが脳内でスムーズに統合されないため、「体全体を使う運動(粗大運動)」と「指先を主に使う運動(微細運動)」で困難が見られます。

 

著書には、〝固有感覚″が〝低反応″な子どもは、粗大運動や微細運動に問題が見られると記載されています。

最近では、粗大運動や微細運動の困難さが生活上支障をきたす症状として、〝発達性協調運動症(DCD)″が注目されるようになってきています。

〝固有感覚″の〝低反応″の例として、粗大運動の問題として、縄跳びやうまく跳べない、自転車にうまく乗れない、スキップができない、ボールを投げたり捕ったりがうまくできないなどがあります。

微細運動の問題として、文字がうまくかけない、ハサミ・定規・コンパスなどの道具がうまく使えない、靴紐がうまく結べないなどがあります。

〝固有感覚″といった原始感覚の育ちが未発達であると、その後の運動発達に影響をきたし、運動の問題が日常化していくことで、発達性協調運動症と呼ばれる症状になっていくケースも多いと考えられます。

そのため、運動の問題を軽視せずに、早期からの介入を行う必要があると言えます。

 

 

著者の経験談

著者がこれまで見てきた子どもの中には、常に体に力が入っている状態の子ども〝過敏性″のタイプと、常に体の力が抜けている状態の子ども〝低反応″のタイプがいました。

前者のタイプには、体の力みを抜くための取り組みが必要であり、後者のタイプには、必要な刺激を入れるという視点が大切だと言えます。

そのため、マッサージや好きな音楽を流すなどで体の力みを抜くようにしたり、好きな感覚刺激(トランポリン、乗り物遊び、スキンシップ遊びなど)を入れることが必要な取り組みだと感じています。

発達性協調運動症への対応としては、大きくは、トップダウン型のアプローチボトムアップ型のアプローチがあると言われています。

例えば、解決したい課題(きれいな文字を書けるようになりたい!)は特定の課題へのアプローチ(トップダウン型)であり、固有感覚そのものの発達を促す方法はボトムアップ型のアプローチになります。

著者は両方のアプローチが大切だと感じていますが、運動発達に関する専門家が少ないと言われている中で、現場のスタッフは自ら学びながら自ら実践していくといった大変さがあると感じています。

そのため、今後さらに、運動発達に関する理解と実践力のあるスタッフが増えていくこと(その領域に特化したスタッフなど)が必要だと感じています。

 

 


以上、【固有感覚の過敏性と低反応の特徴について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

固有感覚は目には見えにくい感覚でもあるため、固有感覚に問題があっても、その要因を理解することは難しいと言えます。

そのため、今回見てきたような知識を通して、感覚から生じる問題へのヒントを得ていくことが大切だと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、感覚の問題への理解と対応力を磨いていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【固有感覚について】発達障害児支援を通して考える

関連記事:「【固有感覚にはどのような種類があるのか?】4つの種類を通して考える

 

 

前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.



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