発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
感覚の問題の中でも、〝触覚過敏″は多く見られると言われています。
また、著者の療育経験を踏まえても割合高いと感じています。
それでは、触覚過敏への支援にはどのような方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、触覚過敏への支援方法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、3つの視点を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
触覚過敏への支援方法について
著書には、〝触覚過敏″への支援方法として次の3つのアプローチがあるとしています(以下、著書引用)。
①自己選択させる
②自分で自分を触る
③好きなものを活用する
それでは、3つのアプローチについて具体的に見ていきます。
①自己選択させる
〝触覚過敏″がある子どもは、防衛反応が発動(原始感覚が優位になる)することで様々な触覚経験を回避する様子が見られます。
例えば、歯磨き、耳掃除、爪切り、着替え、髪の毛を洗う、などです。
著者が以前勤めていた療育現場では、歯磨き指導という行事が年に数回必ず実施されていましたが、正直な所、地獄でした!
というのも、触覚防衛反応が発動している子どもたちに対して、なんとかして歯磨きを実施しないといけないからです。
また、散髪することで体に髪の毛が付着することを極度に嫌がる子ども、体育着に着替えることを極端に嫌がる子どもなど、これまで対応に苦慮したケースは多くありました。
当時の、著者は〝触覚過敏″の理解に乏しかったため、今から見ると〝触覚過敏″への配慮に欠けていた対応をしてしまっていたと反省も含めて感じています。
そのため、ここで大切な支援の視点は〝自己選択″です。
以下、著者を引用しながら見ていきます。
選択肢を設けて自己決定の場面を作ることで、防衛反応(=過敏性)を抑えることが可能です。
例えば、好きな歯磨き粉を用意する、綿棒グッズを用意する、爪を切る順番を選んでもらう、好きな衣服を用意する、好きなシャンプーを用意するなど、著書には自己決定の対応例が記載されています。
自ら選ぶことで、防衛反応を抑え、識別感覚を優位にしていくという支援方法がまずは大切な観点だと言えます。
②自分で自分を触る
以下、著書を引用しながら見ていきます。
防衛反応の特徴を応用した支援方法として、「自分で自分を触る」という方法があります。
例えば、他人からくすぐられるとくすぐったくても、自分で触るとそれほどくすぐったくないと感じる方が多いのではないでしょうか?
この視点を活用して、〝触覚過敏″が見られる子どもには、〝自分で自分を触る″という方法が効果的だと記載されています。
例えば、歯磨きにしても、耳掃除にしても、全部一人で子どもができないにしても、大人が腕を持つなどしてサポートすることで、〝自分で自分を触る″状態をできるだけ多く持つようにしていくという方法が大切です。
自分で自分を触ることで、危険のバロメーターが下がり、防衛反応を抑えるという支援方法もまた大切な観点だと言えます。
③好きなものを活用する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
好きなものに興味関心をもっている間は視覚や聴覚が強く反応するため、識別感覚優位の状態になります。
例えば、好きな大人と遊ぶ、好きな音楽を聴く、好きな映像を見る、など、こうした本人が好きな刺激を取り入れることが大切です。
例えば、散髪が苦手な子どもに好きな映像を見せてなんとか散髪を進めようとしている光景は想像できるかと思います。
子ども本人に好きな刺激を与えることで〝識別感覚″が優位になり〝触覚過敏″など〝原始感覚″を抑えることに繋げていくことができます。
著者の印象としても、子どもが好きな遊びをしている、好きな感覚を得ている場面だと、より〝触覚過敏″による〝防衛反応″が弱まっていると感じることがあります。
そのため、好きなものを活用することもまた、防衛反応を抑えるという意味で大切な観点だと言えます。
以上、【触覚過敏への支援方法について】3つの視点を通して考えるについて見てきました。
触覚過敏への支援方法で大切な点は、過度に拒否をしている感覚刺激に対して無理に慣れさせようとしないこと、そして、適切な支援方法を考え実施していくことにあると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、様々な感覚の問題に対して、理解と支援方法を追求していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.