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障害児との愛着形成について【定型児との違いはあるのか?】

投稿日:2022年9月17日 更新日:

愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。

愛着研究は子どもを中心に研究が進み、後に大人の愛着研究にまで拡張されるようになりました。

 

それでは、障害のある子どもとの愛着形成にはどのような特徴があるのでしょうか?

障害といっても、視覚・聴覚障害、肢体不自由、ダウン症など様々なタイプがあります。

 

今回は、障害児との愛着形成について、視覚・聴覚障害、肢体不自由、ダウン症を中心に定型児との違いはあるか?について、著者の療育経験も交えながらお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

障害児との愛着形成について【定型児との違いはあるのか?】

 

障害児との愛着形成は可能か?

それでは、障害児との愛着形成はそもそも可能か?といった根本的なことについて、著書を引用してみていきます。

障害の種別にかかわらず、アタッチメントの形成は可能であることが明らかにされてきた。

これは言うまでもないかもしれませんが、障害児との愛着形成は可能です。

 

著者もこれまで多くの障害のある子どもたちと関わってきましたが、著者の経験則から言っても様々な障害のタイプの有無を問わずに愛着形成は可能であり、非常に大切なものだと実感しています。

 

視覚・聴覚障害児との愛着形成にはどのような特徴があるのか?

問題は、障害のタイプなどによって愛着形成が異なるのかということです。

例えば、視覚・聴覚障害など、特定の感覚が遮断されたケースについて見ていきます(以下、著書を引用)。

障害によって視覚などのある特定の感覚における社会的刺激を知覚できなくても、他の感覚、そして働きかけが持つ時系列的特徴を含んだまとまりのある刺激によって、社会的刺激を補償し、アタッチメントを形成することは可能であることを示唆している。

著書の内容では、視覚・聴覚などある特定の感覚が遮断されたケースでは、他の感覚によって遮断された感覚を補償することで愛着を形成することは可能となっています。

 

著者もこれまで療育現場で、視覚・聴覚障害のある子どもたちと関わってきました。

その経験から、例えば、視覚障害があっても、信頼する養育者の声を手掛かりに安心感を得たり、また、聴覚障害があっても、視覚によって信頼できる養育者を後追いするなどして愛着行動を示す様子もありました。

また、スキンシップなど身体接触はとても有効であり、様々な障害があっても肌のぬくもりによる安心感は絶大なものだと感じます。

 

引き続き著書を引用します。

つまり、子どもが障害を持つ場合、養育者の子どもに対する働きかけは健常児といくぶん異なったパターンを持ちやすいことは事実であるが、それが、子どものアタッチメント形成を阻害するわけではないことが明らかにされたのである。

著書の内容から、障害児への養育者の関わり方は定型児とは異なる場合があるも、異なる関わり方が愛着形成を阻害するものではないとしています。

 

著者の療育経験からも、養育者(母親を中心とした)の子どもに対する関わり方を見ても、その親ならではの関わり方が見られます。

そのため、養育者が子どもの状態を直感的にわかるということがよくあります。

著者もはじめは保護者(養育者)の方が、子どもの様子や関わり方を感覚的に伝えてくるのに対して、理解が追いつかないこともよくありましたが、著者自身が子どもたちと関わりながら、保護者(養育者)の方と情報共有を繰り返すことで少しずつその感覚が理解できるようになりました。

このように、養育者の関わり方には違いがありますが、その違いが重要だということも実感しています。

 

知的発達の遅れは愛着形成に影響するのか?

以下、著書を引用します。

知的障害を持つ子どもは、アタッチメントを遅れて形成するが、その質が逸脱しているわけでないということを明らかにしていると考えられる。

著書の内容から、知的障害のある子どもの愛着形成は定型児よりも遅れる場合があるが、愛着形成の質は定型児と同じように進むということになります。

このように、愛着形成には、知的発達が影響すると言われています。

それは、知的発達により、イメージする力が育まれること(内的作業モデルの発達にも影響)、自他の行動を予測し、目的を持って行動したり、相手に協調するなど様々な知的な能力が関係してくることが推察できます。

 

関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】

 

 


以上、障害児との愛着形成について【定型児との違いはあるのか?】について見てきました。

障害があってもなくても愛着形成はもちろん可能です。

一方で、障害児においては愛着形成の質や形成の時期などに違いがあります。

大切なことは、子どもの安心感・安全感を作るという意識を持ち行動することです。

そして、愛着形成は人間が生きていくために必要不可欠なものであるといった理解です。

私自身、まだまだ未熟ですが、今後も療育現場で発達に躓きのある子どもたちに対して、愛着の重要性を認識しながら関係性を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.

-愛着, 愛着形成, 障害児

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