療育現場で働いていると、様々な発達につまずきのある子どもたちや、大人の当事者の人たちとの関わりが多くあります。
ここ最近、発達障害という言葉は世間一般に非常に広がり、特別支援教育や障害者の就労など多岐にわたって取り組みが行われています。
発達障害とは、自閉症、ADHD、学習障害などが主となっています。
そうした中で、最近では障害の併存という観点も徐々に診断や現場の困り感の中で注目されるケースが増えています。
今回は、発達障害の併存について、私の療育現場での経験から、その複雑さや大切な観点などをお伝えしていこうと思います。
私自身、大学などで発達障害について勉強を重ね、また、ボランティア活動や実習などで、当事者の方と関わる機会がありました。もう10年以上も前の話になります。
当時は、自閉症の特徴など、比較的典型的なケースであれば、その行動特徴などは理解できることも増えてきていましたが、一方で、大学などで学んだケースでは説明困難である方も多くいるのではという印象がありました。
つまり、現場での当事者の行動特徴とテキストなどで学んだ行動特性がどうもかみ合わない、理解できないというケースです。
こうしたケースは、完全にかみ合わないというよりは、部分的にかみ合うも、そうでないところもあるという感じでした。例えば、自閉的な特徴があるも、それだけでは理解しきれない所があるという感じです。また、自閉的な特徴が少しあるようだが、それ以外の要因の方が強いのではと感じる場合もありました。
当時から10年以上が経ち、療育経験を重ねる中で、この疑問に応えてくれる一つの答えが、障害の併存という観点です。
療育現場には、多動性がありながらも、こだわり行動も見られる子どもや、多動性がありながらも、人への信頼関係がうまくできていないケースなど様々な子どもたちがいます。
前者は、ADHDとASDの両方の特性(疑い)がある子ども、後者は、ADHDと愛着障害の両方の特性(疑い)がある子どもの可能性があります。
また、こうした障害特性に加えて、個人の知的能力や社会経験の多さなど、他の要因も、子どもたちや、大人の当事者の方の状態像の違いに影響してきます。
発達障害が重視されるようになってから、知的障害(知的能力症)というワードを聞く頻度は少なくなった印象がありますが、同じASD児でも、知的能力の違いで状態像がだいぶ違う印象があるなど、知的能力という観点も忘れてはいけないと思います。
今は発達障害はスペクトラムという考え方が主流になっています。つまり、同じASDやADHDでも、特性の強度が多様であるということです。
さらに、こうした障害が重なり併存するケースは、思いのほか多いという印象があるため、今後は、障害の併存という観点がとても重要になってくることは間違いないと思います。
障害の併存を理解するためには、現場での臨床経験と医学的な診断などの理解も必要であり、そうした経験と知識をもとに、現場の一人ひとり対して、様々な仮説を立てていくことが大切なのだと思います。
今後も、現場の多様な人たちを理解していけるように、それぞれの障害特性についての理解に加え、そうした障害が重なるという併存という観点についても、より深い学びをしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。