療育現場で様々な子どもたちと関わっていると、子どもたちの様々な思いや、悩み、困り感などを強く感じる場面があります。
それでは、こうした子どもとの関係を通して、様々な思いや状態を理解するにはどのような視点が重要なのでしょうか?
今回は、著者の療育経験も交えながら、関係を通した理解には「感性」が重要だということについて考えていきたいと思います。
今回参照する資料は「臨床家の感性を磨く:関係をみるということ」です。
「感性」の重要性について
以下、著書を引用します。
「関係」をアクチュアルに捉えるためには、私たち自身が自らの感性を通して体感しつかみ取るしか術はありません。つまり「関係を見る」ことは「感じ取る」ことなのです。
著書の内容では、関係性の理解、関係を通した理解には、自らの感覚といった「感性」が大切だと述べています。
著者も様々な子どもたちとの関わりの中で、その子の思いや気持ちを理解するためには、著者自身が現場に赴き、自ら子どもたちと関わり、その中で漠然と感じた感覚が経験と思考を通して徐々に整理されていくことがよくあります。
その際に、他のスタッフの意見も入ってきますが、大切なことは「自分がどのように感じたのか」や、「なんとなく気になるという違和感」だと思います。
もちろん先輩スタッフからのアドバイスなども重要ですが、自らの「感性」を通して子どもたちの状態を感じる取ることが臨床家としてはともて重要だと思います。
「感性」を通して、子どもたちの状態を感じとり、それをさらに深堀していく中で、状態像がよりクリアになり、問題の背景となる症状などが見えてくることもあります。
それでは、次に、臨床家が症状を理解していくプロセスについて「感性」が持つ役割についてお伝えします。
症状理解のプロセスとして「感性」の役割
著書では、症状を理解していく過程として、いくつかの段階があるとしています。
この視点は療育現場にも活用できるかと思いますので、以下、引用しながら見ていきたいと思います。
(1)患者に対して抱く違和感を感じ取る
(2)違和感がどのような性質のものかを感じ分ける
(3)従来の症状との相違点の輪郭を明確にする
(4)従来の症状学のなかに位置づけ言葉で表現する
以上、4つのプロセスが症状理解には大切だと著書では書かれています。
さらに、4つのプロセスを簡略化すると以下です(引用)。
(違和感)感じ取る⇒感じ分ける⇒輪郭を明確にする⇒言葉で表現する
著書の内容から、症状理解のプロセスとして、「感性」の役割は、相手に対して違和感を感じ取り、その性質を感じ分けるなど、最終的な言語に置き換える初期の段階として重要な役割を果たすものになります。
この最も初期の段階に「感性」がありますので、ここで他者の視点が強固に入り込んでしまうと自らの「感性」を鍛える可能性の阻害になってしまいます。
まずは、どのような形であれ、現場で生じた感覚(関係を通した感じたこと)から違和感を抱く豊富な経験とそれを少しずつ言葉にしていく努力がとても重要だと思います。
著者もこうしたプロセスを通して子どもたちのことを理解してると実感することがあります。
例えば、乱暴な言動や行動を示すお子さんがいたとします。
その子の言動や行動にしっかりと向き合っていくと、その子はけっして相手を傷つけたくて取っている行動ではなく、そうとしか自分の負の感情を表現する手段がないということがわかってきます。
さらに、深堀していくと、そうしたお子さんには、もともと発達特性(多動性・衝動性)などがあり、こうした行動の二次障害(周囲との大人の関係性)として乱暴な言動や行動がエスカレートしていったという状態像が見えてきます。
このプロセスは、最初は漠然とした違和感(関係性から生じる違和感)があり、その要因を考えていく中で少しずつ言葉になっていったという実感があり、最初に大切なのは関わり手の「感性」だと思います。
こうした事例、つまり、療育現場を通して子どもたちとの関係から様々な子どもの思いや症状となる背景要因の理解まで少しずつ言葉になっていったというケースは多く存在します。
著者自身、現場のベテランの方の考え方も大切にしながらも、新人の方の感覚も大切にしていきたいと思っています。
そして何より、自らの「感性」を大切に常に違和感を持つような体験、そしてその体験を深掘りし、言葉にしていくことを大切にしていきたいと思います。
今後も、療育現場での実践を通して、子どもの気持ちやその背景となる要因を理解していくために臨床経験を重ねていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
小林隆児(2017)臨床家の感性を磨く:関係をみるということ.誠信書房.